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Hospitalization&Surgery

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対する手術療法

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎とは


上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(osteochondritis dissecans; OCD)は、関節面の一部が分離して小さな骨軟骨片となり、遊離体に至る進行性の疾患です。
成長期の野球少年(特に投手)における肘関節障害は野球肘として呼ばれていますが、そのなかでも上腕骨小頭離断性骨軟骨炎は最も重症度が高い疾患のひとつです。
野球以外にもラケットスポーツや器械体操などで上腕骨小頭と橈骨頭との間(図1)に繰り返しストレスが加わることが発症に関係すると考えられ、いずれも10~15歳の成長期に発症しやすいとされています。
 

    図1 OCD発症部位

症状としては投球動作時などに肘関節痛が生じ、徐々に痛みが増えていくことが多くあります。
また、遊離体が関節内で挟まってしまうとロッキング症状を呈し、肘の曲げ伸ばしができなくなる可動域制限を生じることもあります。
 
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎とは


 

手術適応

 
医師の問診により、日常生活やスポーツのどんな時に痛みが生じるかを確認し、肘関節や前腕の可動域、圧痛の有無を確認します。
治療方針を決定するには単純レントゲン像や超音波エコー像、CT、MRI画像検査によるOCDの病期(図2)、部位、大きさ、遊離体の有無、病巣の不安定性の評価が必要です。
 

       図2 OCDの病期分類

一般的には透亮期や分離期(初期)では、骨に生じた変化が元の状態に戻る可能性があるため、投球動作や腕立て伏せ、跳び箱、逆立ち、腕相撲などといった肘に負担のかかる運動を禁止する保存療法が選択されます。 
しかし、保存療法を行っても治癒しない場合や病期が進行して病巣が周囲から分離した場合、また病巣が脱落して遊離体となった場合には手術療法が行われます。

※保存療法についてはこちらをご参照ください。
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎のリハビリテーション(保存療法)

 

手術までの流れ

 
①術前検査
 血液検査、心電図など手術が実施できる健康状態であるか検査を行います。
 
②手術説明
 担当医から手術に関する説明を行います。手術に伴うリスクや手術内容について説明します。
 
③術前リハビリテーション
 手術前に肘関節の可動域制限がないことは良好な術後成績につながるため、当院では術前にリハビリテーションを行い、出来る限り可動域制限を改善させます。また、投球動作では肩や股関節の可動域制限が肘へのストレスを増加させることにつながるため、肘以外の関節の可動域訓練も行います。
 
 

入院期間・費用について

 
●鏡視下関節遊離体摘出術
 3日間 12-15万円(健康保険3割負担の場合)
 
●関節遊離体摘出術+骨軟骨移植
 4日間 22-23万円(健康保険3割負担の場合)
 
※費用は概算であり、手術の内容により異なりますのでご了承ください。
 入院費用に関する詳細はこちらをご参照ください。
 →入院について
※高額医療免除についても詳細をご確認ください。
 
 

鏡視下手術について

鏡視下関節遊離体摘出術
肘に手術操作に必要な器具を挿入する小さな傷を数か所作成し、病巣から脱落し遊離体化したものを摘出します。また、遊離はしていないものの分離が進み不安定な状態の病巣では、大きさが10mm未満と小さい場合には病巣を切除し、摘出します。
摘出後には母床(摘出した病巣があった部分)である骨に小さな穴を開け出血させることで治癒を促すドリリング(骨穿孔術)を行います。
必要により肘関節内で炎症を起こしている滑膜の切除や、変形した骨の切除も行います。
  
関節遊離体摘出術+骨軟骨移植
病巣径が10mm以上と大きい場合には前述した遊離体摘出と併せて骨軟骨移植を行います。
移植する軟骨は大腿骨(太ももの骨)の体重のかからない部分から採取し、母床(摘出した病巣があった部分)へと移植します。

 

術後リハビリテーション

 
術後3週間は肘関節を固定し、動きを制限します。
また、肘には手や指を動かすための筋肉が多く付いているため、重たいものを持つことも禁止です。
基本的なリハビリメニューに沿って関節可動域訓練(図3)や筋力トレーニング等を実施し、徐々にスポーツ復帰を目指していきます。

 図3 理学療法士による可動域訓練

前述の術前リハビリテーションでも触れましたが、投球動作では肩や股関節の動きも非常に重要です。術後は肘に負担のかからない投球フォームを獲得していくことが重要となります。

※投球障害に対するリハビリテーションについてはこちらをご参照ください。
投球障害肘のリハビリテーション

 

よくある質問

 
Q1.いつからお風呂に入れるの?
A.術後約1~2週間の抜糸前は術創部を防水シールで保護しながら入浴することは可能です。
 患部の腫れが強い場合は、長時間の入浴で悪化する可能性があるため注意してください。
 
Q2.走ったりしていいの?
A.走るときに腕を振ることで肘への負担がかかるため、医師の許可が出るまで控えてください。
 
Q3.リハビリはどれくらいの頻度で通うの?
A.術後すぐは痛みや腫れの状況や、術創部の感染の有無の確認のため、週2~3回は通っていただきます。
 その後は患部の状態に合わせて徐々に頻度を減らしていきます。
 
Q.スポーツにはいつから復帰できるの?
A.負荷のない状態での投球フォームのチェックは術後約3ヶ月から開始し、競技復帰は6ヶ月を目安としています。


 

当院の担当医

平田 正純 医師(肩・肘関節 関節鏡視下手術、スポーツ障害)



Ver.1 2018.12.17