膝前十字靭帯再建術を施行しラクロスに復帰した患者様

患者様紹介


ラクロスプレー中に左足を滑らせ膝を内側にひねり、左膝前十字靭帯損傷された選手です。
当院を受診し、理学所見から膝前十字靭帯の緩さと膝関節不安定性があり手術も検討されましたが、膝不安定性に対するリハビリを行うことでラクロスに復帰できました。しかし、ラクロスのプレーは出来たものの疼痛が再発し、思うようにプレーが出来ないことから本人が手術による完全復帰を希望され、半腱様筋・薄筋腱を使用して膝前十字靭帯再建術を行いました。
術後は1.5ヶ月で松葉杖を外して正常歩行獲得、1〜4ヶ月で基礎筋力強化と各種スクワット動作、4ヶ月でジョギングと各種ジャンプ動作、5ヶ月以降でアジリティトレーニング等を行いました。6か月以降から対人プレーを除いた練習に徐々に復帰し、8ヶ月で制限なく練習復帰可能になりました。
競技復帰に際しては関節可動域や筋力だけでなく、ラクロス動作時の身体の使い方なども考慮したトレーニングが必要になります。 ポジションがディフェンスということも考慮しフェイントなどの相手の動きに対応できるようなアジリティートレーニングも行いました。段階的にリハビリを行うことで、ラクロスへの完全復帰を実現しました。  


 データ

性別   女性
年齢   21歳
診断名  左膝関節前十字靭帯損傷・前十字靭帯再建術術後
術式   鏡視下前十字靭帯再建術(半腱様筋・薄筋腱 2ルート Outside-In)
現病歴  2015年2月、ラクロスの練習中に左足を滑らせ、膝内反位になり受傷し、当院受診。
    理学所見から膝前十字靭帯の緩さ・膝関節不安定性を認めた。
    手術も検討されたが膝不安定性に対するリハビリを行い、ラクロスに復帰。
    2015年9月にラクロスはプレー可能であったが疼痛再発し、当院を再受診。
    MRIより膝前十字靭帯の連続性は認めたが靭帯径の減少があり理学所見より回旋不安定性認め、膝前十字靭帯部分損傷と診断。     本人がスポーツ完全復帰を希望し、主治医の判断でラクロスへの完全復帰を目的として半腱様筋・薄筋腱を使用して膝前十字靭帯再建術が決定。
スポーツ歴  種目:ラクロス(関東大学女子ラクロスリーグ1部)
       競技歴:4年目 
                   練習頻度:週5日、3~4時間

手術前の状態と手術後

理学所見

術前  術後8か月
可動域 屈曲 150° 150°
伸展
整形外科的テスト Pivot shift test
Lachman test
Mcmurray ER
Mcmurray IR

画像所見

術前 術後
レントゲン
骨挫傷や骨変化等なし。 異常所見なし。
MRI
膝前十字靭帯部分損傷を認める。 再建靭帯の成熟を認める。

その他

術前 術後6か月
筋力検査(BIODEX) Quad患健比 95.3% 85.1%
Ham患健比 88.7% 98.2%
関節不安定性検査(KT-2000) manual MAX 3mm 1mm

 術前 術後1年2か月
膝スコア IKDC 42.3/100 75.3/100


手術方法


膝前十字靭帯の連続性は認めるが、
靭帯の緊張は低下していた。
内側半月板異常なし。 外側半月板異常なし。
脛骨側にグラフトが通る骨孔の作成。 大腿骨側にグラフトが通る骨孔の作成。 大腿骨と脛骨の骨孔からグラフトを挿入し、靭帯の再建を行った。


執刀医師より

膝前十字靭帯の連続性は認めましたが、靭帯の緊張がなく靭帯自体が薄くなり
伸びている状態でありました。膝の回旋動作を制動するなど靭帯の役割を
十分行えていないと判断し再建術を行うことにしました。
ラクロスの競技特性から膝の前後・回旋の両運動方向を十分制動できる
ように再建靭帯を半腱様筋・薄筋腱の2本を使用した手術です。
内側・外側半月板ともに損傷がなかったので処置は行いませんでした。


リハビリテーション


膝関節可動域を広げ、左右差をなくすことを目的です。
可動域の左右差をなくすことで再受傷のリスクを減らします。


腰部~殿部をリラクゼーションすることで大腿外側にある
筋の緊張を和らげ、腸脛靭帯の滑走性を良くします。


担当理学療法士より


この患者様は関節弛緩性が強く、柔軟性も高いです。そのため、膝関節の可動域は
スムーズに獲得できました。関節が柔らかいことから可動域を獲得していく中で
再建した靭帯に負担がかからないように工夫しました。
筋力については術前から筋力低下が認められたため筋力の回復に時間を要しました。
筋力トレーニングは筋肉の1つ1つに分けて低負荷でのトレーニングから開始し、
徐々に状態に応じて体重をかけたトレーニングに移行していきました。
その後ラクロスの動きに近づけるべく動作トレーニングに移行していきました。
スポーツ復帰の際には手術前からある関節弛緩性に対してサポートすべく当初は
テーピング着用下での復帰としました。


アスレティックリハビリテーション~スポーツ復帰


スクワットジャンプ~片脚着地
着地時に股関節の動きを重視し、着地における衝撃緩和動作を身につけるように反復練習しました。

アジリティー・トレーニング
細かいステップ動作の中で膝が内側に入らないような動作を身に付ける反復練習します。


担当トレーナーより


ラクロスは細かいステップワークを必要とします。
競技復帰に向けた時期ではラダートレーニングでステップワークを行い、
急な切り替えしやストップ動作にも対応できるよう反復しました。
再受傷を予防するために、片脚でのスクワット動作で膝が内側へ
入らぬよう徹底指導しました。


患者様のコメント

手術してから復帰するまでは正直辛いことの方が多かったです。
最初の1ヶ月間は膝の曲げ伸ばしもできず、松葉杖での生活で逆脚の疲労もあり、歩くことも辛かったです。
術後3ヶ月からは軽く走れる(ジョグ程度)様になり少しできることが増えると嬉しい反面、走り方を忘れてしまっていて基本動作の確認や地味なトレーニングばかりで思うように復帰に近づけず、焦りや不安を抱えていました。
術後6ヶ月から走りながらの運動ができるようになり、徐々にではありましたが練習にも参加できるようになり、プレーする楽しさを感じていました。
そして、術後8ヶ月で全練習に参加できるようになりました。もちろん復帰しても悩みはありました。体力や筋力面が周りにおいついておらず怪我する前のようにプレーすることは難しかったですが、今はやるしかないという気持ちで日々練習に取り組んでいました。
手術から1年以上経ち、筋力強化を続けていることもあって装具をつけた状態での運動も支障なくできるようになりました。周りからも怪我していたとは思えないくらい動けるようになったという評価もいただき、トップチームに入ることができました。現在では試合にも普通に出ることができており、毎試合楽しいです!
まだアジリティー強化と体力面の完全回復ができていないのでそこを強化しながら、リーグ戦に絡んでいける選手になりたいと思います!
ここまで乗り越えられたのはスタッフのおかげです。具体的に復帰の道のりを考えてくださり、弱音も全て受け止めてくれました。引退まで頑張ります!


日髙 宏一郎
理学療法士
関節: 足関節
スポーツ: 体操競技

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