シンスプリント

シンスプリントとは



「シンスプリント」とは、下腿内側に位置する脛骨(スネ)の下方1/3に痛みが発生することを特徴とする病態です。
ランニングやジャンプなど過度に繰り返し行った場合に発症しやすく、脛の骨に沿ってうずくような痛みが生じることが多いです。
スポーツでは、新しい環境で競技を始めたり、運動する環境が変化することで生じやすく、シンスプリントと呼ばれるもののほとんどが、脛骨過労性骨膜炎や脛骨内側ストレス症候群(Medial tibial stress syndrome:MTSS)といわれるものです。

陸上競技の中・長距離選手(ジョギングやマラソン)や、サッカー、バスケットボール、テニス、ラグビーなど走ることの多い競技で多発し、運動時や運動後に脛の内に痛みが出現します。他にも、ダンス、スキー、体操、バレエなど足を駆使するスポーツなども挙げられます。その中でも特に、陸上競技の中・長距離選手(ジョギングやマラソン)の発生頻度が高く、20~50%に発生するといわれています。好発年齢は、12~16歳に多く、16歳をピークとし高校生や大学生に多いです。また、女性が男性と比較しやや早期に発生する傾向があります。一度痛みが出てしまうと練習や競技を休む必要があり、数ヶ月から数年痛みが続いてしまう難治性の症例も見受けられます。



シンスプリントは、疲労骨折に多い、ある一点に集中する痛みではなく、筋肉が骨に付着しているラインに沿って起こります。
腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋などの足首を前にトス役割を持つ筋肉が脛骨に付着しています。脛骨の表面には、骨膜(骨を覆う膜)があり、脛骨に付着する筋肉が骨膜を引っ張るようなストレスが生じることで、骨膜炎(骨膜の微細損傷)を起こし、下腿内側部痛を発生させると言われています。

また、シンスプリントによく似ている症状として、疲労骨折が挙げられます。シンスプリントと疲労骨折の初期段階は、非常によく似ているため、シンスプリントから疲労骨折に診断結果が変更されるケースもあります。
疲労骨折の判断を行うには、MRIを撮影することで判断が可能になってきます。医師の診断で疲労骨折と診断された場合、完全に安静状態を取らないと治らないため、疲労骨折の判断を行うことが非常に重要となってきます。

シンスプリントの原因

シンスプリントの原因はオーバーユース(使い過ぎによるもの)と言われており、発生因子は一般型重症型で異なります。
【一般型】
 ➡︎過度のトレーニングや土踏まずの低下によりふくらはぎの筋肉の付着部にストレスが生じることや筋肉同士が擦れることで、
  筋肉や筋肉の付着部で炎症が生じます。
【重症型】
➡︎足関節・股関節の柔軟性低下により脛の骨に圧縮や捻りの力が繰り返し加わることで、
 骨に炎症が生じます。

身体的特徴   

・下肢の形態異常(O脚、回内側、扁平足)
・足関節底屈筋の柔軟性低下や筋力低下



上記の表のような足の土踏まずが扁平化し足のウラ全体が床につくもの、内股気味の足の向きの場合生じやすいと言われています。
【一般型】
 ➡︎足部の筋力低下や股間節の可動域が大きい(関節弛緩性)、扁平足knee in-toe out(膝が中に入ってしまうような動き)のランニングフォームが特徴的です。


【重症型】
➡︎足関節・股関節の柔軟性低下や、O脚・外側荷重といったランニングフォームが特徴的です。

環境問題

地面環境の影響
➡︎地面が比較的柔らかい土や天然芝は、足にかかる負担は少ないですが、人工芝やコンクリートなどでは、足にかかる負担が大きくなってしまいます。

足に合わない靴
➡︎靴のサイズが大きすぎたり小さすぎる場合、また靴を新しくしたときは足への負担が大きくなるので、注意が必要です。

シンスプリントの症状

下腿内側に位置する脛骨の下方1/3内側部に、慢性的な痛みや、圧痛が生じることが特徴です。
また身体所見の特徴から、比較的早期に競技復帰可能な
一般型と、復帰までに時間がかかる重症型に分けられます。
【一般型】
・痛み    ➡︎ 蹴り出し       
・復帰期間  ➡︎ 2週間    
・痛みの部位 ➡︎ 筋肉が痛む
【重症型】
・痛み    ➡︎ 蹴り出し 踏み込み  
・復帰期間  ➡︎ 2〜3か月  
・痛みの部位 ➡︎ 骨が痛む

シンスプリントの診断・検査方法

レントゲン検査    
レントゲンでは、シンスプリントは明らかな異常を認める場合は少ないです。
疲労骨折では、時間が経過していると骨膜反応という疲労骨折の治癒過程で起きるレントゲン像が確認できます。

超音波検査(US)
超音波では、脛骨周囲の骨膜が腫れているかを確認することができます。
骨膜が腫れている場合、症状の経過や程度によっては疲労骨折の可能性も考えられてきます。

MRI検査
レントゲンで明らかな疲労骨折を認めない場合でも、初期の疲労骨折の可能性は十分にあります。
その場合は、シンスプリントか初期の疲労骨折かを区別するためには、MRI検査が必要となってきます。
(T2脂肪抑制という特殊な撮影条件)

【下腿を正面から見た場合】
 

【下腿を横から見た場合】
 
理学療法評価・疼痛誘発検査
片脚ジャンプテスト ➡︎ 蹴り出しで痛む ➡︎ 筋肉を押して痛む ➡︎ 一般型
           
【一般型の評価】
 ・痛みの部位の特定
 ・足部の形状
 ・足部筋力
 ・股関節の柔軟性
 ・不良動作の有無(蹴り出し、着地時の動作)
 ・股関節・体幹筋力


片脚ジャンプテスト ➡︎ 着地で痛む ➡︎ 骨を押して痛む ➡︎ 重症型

【重症型の評価】
 ・脛の腫れ
 ・足関節・股関節の柔軟性
 ・軸圧で骨の痛みがあるか
 ・痛みの部位の特定
 ・着地の不良姿勢
【重症型】運動中止基準と運動復帰
【中止基準】 
   ⬇︎
・踏み込み・着地での痛み
・骨の痛み
・MRI画像で骨の中が白く変化している場合


【復帰基準】
   ⬇︎
・踏み込み・着地で痛みなし
・足・股関節の柔軟性の改善
・不良動作の改善
・MRI画像で問題なし

シンスプリントの治療方法

【一般型の治療】
一般型の痛みは、筋肉の付着部の炎症です。約2週間で炎症は消失し運動に復帰できます。
しかし!筋肉に炎症が起きてしまった場合である不良動作(knee in-toe out、骨盤の傾き)を改善しない限り、
症状残存や再発の恐れがあるため、当院では不良動作が改善するまでリハビリを行います。
【重症型の治療】
重症型の痛みは、骨の炎症です。
骨の再生には4週間かかるため、4週間はジャンプ・ダッシュなどの運動を禁止します。
一般型と同様に再発防止のため、骨の炎症が改善しても足首や股関節の柔軟性向上や、
不良動作改善(着地時に各関節をしっかりと使う)が認められない場合には、リハビリを継続していきます。

保存療法

リハビリテーション
シンスプリントは、痛みが生じた原因がオーバーユース以外の場合もあるため、原因追求し再発防止のため、リハビリを行っていきます。
下腿後面の柔軟性低下や、足趾機能の低下、扁平足など足部の形状異常なども評価し、アプローチを行います。

疼痛の詳細把握
疼痛が下腿のどの範囲に生じているか細かく評価し、負荷がかかっている筋を推察します。
下肢の筋力強化
ふくらはぎのトレーニング
下腿内外側・内側のトレーニング
足底筋のトレーニング
セルフエクササイズ
1.下腿屈筋群のストレッチ
 ➡︎タオルなどを足先のかけ、ふくらはぎから足先の筋肉を伸ばす。
  【20〜30秒 × 3セット程度】


2.タオルギャザー
 ➡︎床の上にタオルを置き、タオルの端に踵をつける。
  踵を床から離さないまま、指先でタオルをつかみ、自分の方にたぐり寄せる。(※足の指を大きく動かす)
  【10回程度】



詳細→タオルギャザー
  
3.足部アーチ(母趾外転筋)機能向上 -Short Foot Exercise-
 ➡︎足底を床につけ、つま先を伸ばしたまま(つま先曲げないように)、アーチを挙上させていく。
  【6秒〜1分程度 保持時間を徐々に増やしていく】
  


装具療法(インソール)


お子様から大人の方まで足型を取り、一人一人足の形に合わせた完全オーダーメイドのインソールを作成します。
インソールを使用することにより、足底のアーチ構造を機能的・解剖的に補正し、足部の形状を改善します。
作成するのみでなく、インソールの状態を定期的に確認し、問題が生じていないか確認いたします。
薬物療法


炎症が強い場合、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs=ロキソニン)や湿布を処方し、炎症の軽減を図ります。
飲み薬を長期的に使用し続けると胃が荒れるなどの副作用が生じることがあるため、注意が必要となってきます。
電気治療
 シンスプリントに対して、当院では筋や筋膜の治療としてインテレクトネオ(インターリハ社製)を使用しています。この装置のコンピネーション治療モードを用いることによって、組織を温める超音波治療と筋収縮を行うハイボルテージ治療を同時に行うことが出来ます。インテレクトネオは他にも臨床プロトコル設定機能により、部位・症状・ステージに合わせた各治療パラメーター情報が検索・閲覧可能です。

拡散型体外衝撃波治療



拡散型体外衝撃波治療とは、ヨーロッパより普及し、欧米では低侵襲ながら有効な治療法としてスポーツ選手を中心に、
腱付着部障害などに使用されている除痛装置です。副作用がほとんどなく、安全な治療として推奨されています! 
なかなか痛みが引かない場合など、慢性的な疼痛は痛みを感じる自由神経終末の増加により、痛みに対して敏感になっています。
その神経をこの体外衝撃波を用いて変性させ、即時的に痛みを軽減させます。

体外衝撃波による刺激は、血管再生を促進させたり、組織再生因子を増加し、損傷した組織の修復を促します。

詳細→体外衝撃波について 

シンスプリントの予防

シンスプリントの予防に欠かせないのが、ストレッチやアイシングです。
日々の日常から、足部周りの筋力強化や柔軟性向上のストレッチを行うことが発症予防に繋がります。

足部だけが問題点ではなく、姿勢不良や動作不良、身体の柔軟性低下などが原因となる場合もあります。
そういった場合、全身的なコンディショニングを(医療法人アレックス)上田整形外科内科が運営する併設の運動療法施設である、
PCC(パーソナルコンディショニングセンター)にて、専門のパーソナルトレーナーがマンツーマン(最大1対3)で状態を把握し、
動作や運動の指導をしてくれる場合もあります。

詳細→パーソナルコンディショニングセンターとは?
AR-Exグループ クリニック