喘息の治し方

 

喘息とは

喘息(気管支喘息)は、慢性的な気道の「炎症」、気道の「過敏性の亢進」、気道の「閉塞」によって咳や喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューした呼吸)、息苦しさを生じる疾患です。
日本国内での有病率はあらゆる原因、あらゆる段階の「喘息」を広く含めると5~10%程度になると言われており、小児喘息の既往がなくても成人や高齢になって初めて喘息を発症する例も少なくありません。
「日常的に症状を認める状態」から「たまに風邪をひいたときにひどい咳になる状態」まで喘息には様々な段階があります。症状が落ち着いて一旦治療を終了していても、気道の「炎症」「過敏性」「閉塞」の状態が水面下に存在していて実は吸入薬や内服薬の継続治療が必要な場合があります。

(出典:日本呼吸器学会)

季節の変わり目や花粉、タバコの煙、ハウスダストなどの刺激により慢性の症状あるいは喘息発作が誘発され、ひとたびひどい喘息発作を起こしてしまうと呼吸を整えるためにステロイドの点滴治療をしたり酸素吸入が必要になったりと入院治療を行う場合もあります。
検査方法の進歩(呼吸機能検査や呼気NO検査等)や治療薬の進歩(様々な種類の吸入薬)に伴って呼吸器専門外来通院治療による喘息のコントロールは経時的に改善していて、喘息発作による死亡も1950年代には16,000人だったものが2010年台には1,500人まで減少してきています。
しかしながら、「風邪を引いたときだけ喘息になるけど普段は大丈夫」「もともと気管支が弱いほうだから仕方がない」と思っている方の中には、きちんとした喘息の治療でさらに状態がよくなる場合がありますので、一度外来へご相談下さい。

喘息の原因

以下のような複数の誘因が絡み合って発作が起こるとされています

風邪、インフルエンザ
風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症は、気道に炎症を起こし喘息発作の最大の誘因と考えられます。「風邪を引くと喘息になる」と考えている方の中には、普段からの喘息の治療を行うことで風邪を引いたときにも症状がひどくならないような安定した状態にすることができる可能性があります。

煙草(たばこ)
煙草の煙には多くの有害物質が含まれており気管支を刺激し、喘息悪化の誘因になります。自身が煙草を吸っていなくても家族からの副流煙(たばこの先端の火のついた部分から立ち上る煙)や洋服にまとった煙成分、吐く息からの受動喫煙も大きな要因となります。煙草は喘息以外にも、COPD(肺気腫)や脳卒中、心筋梗塞、様々な癌のリスクを高めますので健康で長生きするためにも禁煙しましょう。

食べ物
刺激物(香辛料、とうがらし、からし、わさび)や味の濃いものは粘膜の刺激となり、喘息やむせ、逆流性食道炎の原因となります。飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は炎症を悪化させると言われています。夜、遅く食べるような不規則な食生活も問題です。

アレルギー
ダニやホコリ、ペットの毛、花粉、カビなど、吸い込むとアレルギー反応を起こす「吸入アレルゲン」が喘息発作の誘因となることがあります。血液検査でアレルギー反応の度合いを評価することができます。
過労/ストレス
過労や過度のストレスは、抵抗力を弱めるため、風邪やインフルエンザなどの、喘息の原因となる感染症にかかりやすくなります。またストレスは自律神経などの乱れを引き起こし気道を収縮させることがあるので、これも喘息の発作につながります。

  肥満
非アトピー型喘息の原因は肥満が多いことが報告されています。また肥満度が高くなると喘息を発症しやすく、悪化もしやすいことがわかっています。 

急激な気温や気圧の変化
喘息発作は、寒冷前線の通過などで気温が急に下がった時、移動性高気圧や台風のように気圧が急変する時など、気候が不安定な時期に起こりやすい傾向があります。また寒暖差が大きくなる季節の変わり目は、風邪をひきやすくなります。風邪などの呼吸器感染症は、気道の炎症をともなうことが多いので、喘息も悪化しやすくなります。

アルコール
摂取したアルコールは、速やかにアセトアルデヒドに分解されます。このアセトアルデヒドが有害物質であり、喘息発作が誘発される場合があります。これをアルコール誘発喘息と言います。日本人は、体質的にアセトアルデヒドを分解する酵素の働きが弱い人が多いことがわかっていますので、飲酒の機会がある時は要注意です。

遺伝
喘息そのものが遺伝することはありません。 しかし、アレルギーになりやすい体質は遺伝することがありますので、家族の中でアレルギー疾患を持っている⽅がいる場合には喘息になる可能性があります。

大気汚染
PM2.5や排気ガスなどによる大気汚染や、日常生活にあふれる化学物質が喘息の誘因になることがあります。大気汚染物質の中でも粒径 2.5μm 以下の微小粒子状物質(PM2.5)は吸入すると気道に炎症反応を生じるなど,呼吸器系に悪影響を及ぼすことが知られています。特に喘息等の呼吸器系疾患を有する人は感受性が高いとされています。
 

喘息の症状

息苦しさ
走ったり運動した後、息苦しさを感じる。喘鳴を伴う。

喘鳴(ぜんめい)
呼吸時に「ゼ―ゼ―」、「ヒューヒュー」という音が出て呼吸が困難になります。主に息を吐く時に発生します。

胸の痛み
咳をたくさんしている方にみられます。また喘鳴を伴わず胸部の痛みを主訴とする特徴的な胸痛喘息の症例にもみられます。気道の部分が腫れぼったく痛むという方もいます。

激しい咳
主に就寝中の夜間や早朝に発作が出ます。そのため、発作が起こっている時は睡眠不足に悩まされがちです。

喉の違和感 
喉のあたりがむずむず、イガイガして息苦しい感じ。


喘息の痰は粘り気が強く、透明であるのが特徴です。 1日に100ml以上咳き込みながら痰を出す患者さんもいます。しかし現れる症状は様々で咳と痰だけが慢性的に続くというケースもあり、自覚症状が持てないような軽度のものから呼吸困難な状態が続く重度のものまで程度に差があることも少なくありません。

喘息症状が起こりやすいとき(症状悪化しやすいとき)
・夜間〜早朝にかけて
・季節の変わり⽬など、気温差がはげしいとき
・天気がよくないとき、変わりやすいとき
・疲れているとき
・⾵邪をひいたとき
・発作を引き起こす刺激に触れたとき(タバコの煙、線⾹の煙、強い臭いなど)
 
喘息の症状の特徴
・発作的な呼吸器症状(咳・喘鳴・胸苦しさ・呼吸困難など)が現れる時と現れない時がまちまちで症状の変動性が大きい。
・激しい咳がなかなか治らず、特に夜間や早朝に咳き込むことが多い
・季節の変わり目など寒暖差のあるときに発作が出ることが多い
・呼吸のたびに喘鳴がある
これが他の慢性的な咳症状が出る病気との見分けるポイントとなります。
 

喘息の検査・診断

問診
小児喘息の既往があるか?
家族に喘息の人がいるか?
症状が出やすいのは朝方や夜中か?(1日の中でも症状のムラがある:日内変動がある)
アレルギーがあるか?
これらの質問全てがYesの場合で、喘鳴があれば気管支喘息を疑います。

呼吸機能検査(スパイロメトリー)
スパイロメーターという検査機器を使って、気道内の空気の流れ方を調べます。マウスピースをくわえて、息を最大限まで吸い込んだ後、できるだけ勢いよく最後まで吐ききります。最初の1秒間で吐き出した空気量を1秒量と言いますが、ぜんそく(喘息)の場合は気道がせまくなっているので、正常値よりかなり低くなります。

気道過敏症テスト
発作をおこしやすくする薬を使って、どのくらいの濃度で発作がおこるかにより、気道の過敏の程度を測定します。重症な人ほど気道過敏性が高く、治療すると低くなります。

血液検査
どのアレルゲンに対してアレルギー反応が起こりやすいかを確認するテストです。RAST法とMAST法があり、どちらの検査も採血した血液とアレルゲンを反応させて、アレルゲンに対する抗体(特異的IgE抗体)が検出されるかどうかをみます。RAST法という血液検査では、6段階でアレルギー反応の強さを見ます。MAST法では、一回に26種類ものアレルギーについての検査ができます。

喀痰(かくたん)検査
気道に炎症があると、痰の中の好酸球が増えたり、気管支の細胞がはがれたものが多く見られます。

呼気NO検査
気道にアレルギー性の炎症があると、呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度が高くなります。

皮膚反応テスト
血液検査と同様に、特定のアレルゲンに対してアレルギー反応が起こりやすいかどうかを確認する検査です。疑いのあるアレルゲンエキスを皮膚につけて反応をみます。かゆみや腫れが出た場合、その物質をアレルゲンと特定できます。

胸部レントゲン
喘息と同じような症状を持つ他の呼吸器疾患との判別や、肺炎などの合併症を知るために行う検査です。

吸入誘発テスト
疑いのあるアレルゲンを、濃度を薄くして少量吸入し、ぜんそく(喘息)の発作が起こるかを調べます。

喘息の治療

喘息には、「日常的な予防のための治療」と「急性憎悪(発作発生時)に対する治療」の2種類の治療が必要です。 
喘息の治療は、4つのステップに分かれています。治療の開始時に、喘息症状と治療状況を総合してどの治療ステップかが決定されます。各ステップに応じて日常的な予防のための治療として長期管理薬と急性増悪に対する治療として発作時治療薬で治療していきます。
長期管理薬:吸入ステロイド薬
ステップに応じた内服
発作時治療薬:短時間作用性吸入β2刺激薬(吸入SABA)
 
治療ステップ対象症状詳細
1軽症間欠型相当・症状が週1回未満
・症状が軽度で短い
・夜間症状は月に2回未満

2軽症持続型相当・症状が週1回以上(しかし毎日ではない)
・月1回以上日常生活や睡眠が妨げられる
・夜間症状は月2回以上

3中等症持続型相当・ 症状が毎日ある
・短時間作用性吸入β 2刺激薬がほぼ毎日必要
・週 1 回以上日常生活や睡眠が妨げられる
・夜間症状が週1回以上

4重症持続型相当・治療下でもしばしば増悪
・症状が毎日ある
・日常生活が制限される
・夜間症状がしばしば
(一般社団法人日本アレルギー学会「アレルギー総合ガイドライン 2019」より)
 
副作用
吸入ステロイド薬
声がかれたり、口の中に残ると粘膜の免疫を抑制してしまい、カンジダというカビの一種が増えたりすることがあります。

経口ステロイド薬、注射でのステロイド薬
長期間使用すると、薬が全身に作用するためさまざまな副作用(体重増加、高血圧、糖尿病、骨粗しょう症、脂質異常症、胃潰瘍、感染症、副腎不全、白内障など)が生じることがあります。

気管支拡張薬
気管支拡張薬には、特有の副作用がいくつかあります。
β2刺激薬:手の震え、動悸、脈が速くなる、筋肉がつるなどの症状が出ることがあります。
抗コリン薬:口が渇く、男性の場合に尿が出にくくなるなどの症状が出ることがあります。前立腺肥大や閉塞隅角緑内障のある方は、使用することができません。
テオフィリン薬:吐き気、頭痛、動悸などを認めることがあります
 
漢方薬による治療
漢方は上記の吸引ステロイド治療と上手に併用すると治療効果が高まると考えられております。喘息発作時、急性期は現代医学が中心となりますが、発作がおさまった寛解期では漢方の長期服用によって西洋薬の減量が可能となる例も多く経験されます。
喘息発作の改善後もしつこい咳や痰などが残るときには、体力のある実証の人では、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、五虎湯(ごことう)、体力がない虚証や高齢者などでは苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)などが用いられます。
くしゃみ、鼻水、水っぽい痰をともなうときには小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、から咳やのどの乾燥感をともなう咳には麦門冬湯(ばくもんどうとう)、痰がきれない、胸苦しい、のどがふさがる感じがする場合には柴朴湯(さいぼくとう)や神秘湯(しんぴとう)などが用いられます。とくに柴朴湯はこれまでもっとも経験例、有効例が多く、吸入ステロイド療法との併用で長期的に用いて気道炎症の改善、発作の予防に有用です。
 
自分の喘息の状態を把握する
喘息の症状が出ないよう、適切な薬物療法と自己管理を継続することを「喘息をコントロールする」といい、症状がまったく出ない状態を「コントロール良好」といいます。
喘息治療の目標は「症状なく健康な人と変わらない生活を送ること」すなわち、コントロール良好な状態を維持することです。喘息を上手にコントロールできているか 
喘息コントロールテスト(ACT:アクト)でチェックしてみて下さい。
喘息コントロールテスト(ACT:アクト)
 

喘息の予防

かぜやインフルエンザに注意
かぜやインフルエンザかかると、気道の粘膜が炎症を起こします。その結果、わずかな刺激にも反応し、気道が収縮して咳喘息が起こりやすくなります。かぜの流行シーズンには、外出時はマスクを装着するようにしてください。できるだけ人ごみは避け、外から帰ったら、手洗いとうがいを徹底しましょう。
 
喫煙・副流煙に気をつける
たばこの煙は気管支を刺激し、咳の回数を増やします。特にたばこの副流煙は、受動喫煙といって、咳喘息を悪化させる原因になります。患者さん本人の禁煙は当然として、家庭や職場など、周囲の人にも禁煙や分煙を徹底してもらいましょう。
 
飲酒を控える
アルコールは原則控えることが望ましいでしょう。お酒を飲むと、体の中にアセトアルデヒドという物質ができます。この物質は、気道を収縮させて咳を起こしやすくします。日本人は欧米人にくらべてアセトアルデヒドを分解しにくい人が多いため、飲酒の影響を受けやすいといわれています。飲みすぎには十分に注意してください。
 
アレルゲンを減らす
カビは、昔と比べて住環境が高気密になったことで増える傾向にあります。居室内や浴室のカビは目につきやすいのですが、エアコンや洗濯機などの家電製品には、機械の内部に湿気を多く含むことでカビの増殖につながるものがあります。これらは目につきにくいので、エアコンのフィルターをこまめに洗浄したり、洗濯槽のカビ取りをするなど、カビをなるべく増やさないように心がけましょう。
犬や猫などのペットの抜け毛やフケは、アレルゲンとなりやすく、かつダニが増える原因となります。ペットを遠ざけることが、ぜんそくの改善にもっとも効果があります。もし飼育を続ける場合は、寝室を一緒にしない、こまめにシャンプーをする、室内やケージの清掃を怠らないなどの工夫が必要です。
アレルゲンの物質はとても微小で、身近に存在しているにも関わらず、直接肉眼で見ることができないものが多いです。しかし少しでもアレルゲンを減らすために、毎日の清掃や家電製品の手入れなど生活環境を整えていくことが大切です。
 
ダイエット
肥満度が下がるとぜんそくも改善されることがわかっています。食習慣の改善や運動習慣の確立によって、健康的な減量に取り組みましょう。
当院ではパーソナルコンディショニングセンターという会員制スポーツジムを併設しております。パーソナルコンディショニングセンターでは運動の専門家である健康運動士による質の高いコンディショニングを受けられます。このサービスをご利用頂くことで、喘息に対して内科医による検査や治療だけでなく全身的にケアすることができます。
 
食生活の改善
喘息は毎日の食生活と深く関わっています。アレルギーの原因となるような食べ物は避けること、刺激物(香辛料)や味の濃いものは粘膜の刺激となり、むせや逆流性食道炎の原因となりますので摂取を控えるようにしましょう。肥満は喘息を悪化させる原因となるので糖分の多い食べ物は避けましょう。また飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は炎症を悪化させると言われています。肉の脂やマーガリンなども出来るだけ控えましょう。夜、遅く食べるような不規則な食生活も問題ですので規則正しい食事を心がけましょう。
咳喘息の時にお勧めの食べ物は野菜や海草類です。これらはアルカリ性食品に分類され、咳に効果があります。特によいと言われているのはブロッコリーやブロッコリースプラウトに含まれている「スルフォラファン」という成分です。この成分は気道の炎症を抑える働きがあります。また、レンコンには、アレルギー反応を抑え炎症を抑える効果があります。大根にも炎症を抑える効果があります。いずれも絞り汁を飲む方法が効果的です。クレソンには、「イソチオシアン酸アリル」と呼ばれる成分が含まれていて、喉や気道の炎症を抑えます。さらに気道の筋肉の緊張をとり気道を広げる作用もあります。シソは、実にも葉っぱにも、「ルテオリン」や「ロズマリン酸」という成分が含まれ、過剰なアレルギー反応を抑えてくれます。
黒豆の煮汁は「サポニン」という成分が含まれ、昔から咳止めの効果があると言われています。黒豆を1晩水につけ、強火で沸騰させた後、弱火にして20分ほど煮詰め、茶こしなどで濾した汁を飲みます。黒豆茶にも同じような効果が期待できます。また、はちみつにも炎症を抑える効果があります。
ただ、どの食材もそれだけ食べていればよいというわけではなく、あくまでバランスのいい食事を摂ることが基本です。また、一般的に咳に効く食べ物であっても、人によってはその食材がアレルギーの原因になることもあります。試してみて、かえって具合が悪くなった時には中止するようにしましょう。
 
休息
忙しい毎日の中で、十分な休息を取るのは容易ではありませんが、なるべく無理をしないことが大切です。
 
鑑別が必要なぜん息と似ている病気
喘息と似ている、せきやたんが出るさまざまな病気があります。適切な治療を受けるためにも特徴を知り、気になる症状があったら早めに病院を受診しましょう。

咳喘息
カゼを引いた後などに乾いたせきが8週間以上長引く場合、「咳喘息」が疑われます。広くは喘息の一種ですが、喘息の症状として特徴的な「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴や呼吸困難はありません。また、呼吸機能はほぼ正常なことが多いといわれています。
喘息と同様に、気道感染や冷気、運動、受動喫煙を含む喫煙、天気や気温の変化、花粉や黄砂などで症状が悪化します。通常のカゼ薬やせき止め薬では効果がなく、喘息治療と同じ吸入ステロイド薬と気管支拡張薬が有効です。
特徴
・カゼなどの後に、乾いたせきが8週間以上続く
・就寝時、深夜から明け方によくせきが出る
・運動時、冷たい空気を吸ったとき、ホコリっぽいところなどでせきが出る
・カゼ薬やせき止め薬を飲んでも、せきが止まらない
・気管支拡張薬で症状が改善する
 
成人の場合、咳喘息を放っておくと30~40%は喘息に移行するといわれています。病院で検査を受け診断が出たら、医師の指示通りに症状がおさまってからも治療を続けることが大切です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)
COPDは、主に長期間の喫煙が原因で肺に炎症が起こり、酸素と二酸化炭素を交換する役目をする肺胞が壊れ、息が吐き出しにくくなる病気です。初期には息切れやせき、たんなどのありふれた症状なので気づきにくい病気ですが、放置すると喘息発作と同様の「おぼれるような」息苦しさに見舞われます。
COPDの症状と特徴
坂道や階段を上ったり、体を動かしたときに息切れやせき、たんなどが現れる
安静時や就寝時には症状が起こりにくい
COPDと喘息の合併
COPDと喘息が合併していることもあります。とくに高齢者に多く、喘息とCOPDが合併していると、喘息が悪化する頻度が高く、QOL(生活の質)も低くなり、病気の経過(予後)も悪いことがわかっています。COPDと診断されている患者さんで、動かなくても発作性の呼吸困難がある(とくに朝、晩)など、喘息の症状がみられる場合には、合併のおそれもありますので医師に相談しましょう。
 
心臓疾患
心臓の病気(虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋症など)によって、発作性の呼吸困難が起こることがあり、「心臓喘息」とも呼ばれます。とくに60歳以上の患者さんに多いとされ、体を動かしすぎた日の夜に急に息苦しさが増したり、カゼなどの気道感染症、寒さなどで症状が出やすくなります。
以下のような症状がみられたら、心臓の状態が悪化していないかどうか、医師に相談してください。
心臓喘息の主な症状
息苦しさ、息切れ、動悸、むくみ、手足が冷えやすいなど
急速に悪化すると喘息発作とよく似た、「ゼーゼーヒューヒュー」という喘鳴をともなう呼吸困難が起こる
 
そのほかの疾患
まれですが、そのほかにも喘息発作とよく似た「ゼーゼーヒューヒュー」という音が聞こえる疾患がいくつかあります。その中には、耳鼻咽喉科で診察される声帯や気管の病気があります。また、胸の痛みを伴うことが多いですが、肺の一部が破れてしぼんでしまう「気胸」、心臓から肺に行く血管がつまる「肺血栓塞栓症」などもあります。肺血栓塞栓症は、血たん、喀血、胸の痛みを伴います。
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