五十肩の治療について
五十肩とは?
五十肩とは肩周りの筋肉や関節が固まってしまうことで、肩の動かしにくさや痛みが生じる疾患です。50歳前後から発症することが多いため、加齢が原因ではないかとも言われていますが、明確な原因ははっきりとわかっていません。五十肩になりやすい人はどんな人?
糖尿病や甲状腺疾患(橋本病やバセドウ病)のある方は、五十肩になりやすいことがわかっています。また、猫背の姿勢は肩関節の正常な動きを阻害してしまうとされており、五十肩の原因になることが考えられます。五十肩と肩こりとの違いは?
五十肩と肩こりには明らかな違いがあります。五十肩は肩の関節自体が固まってしまうため、肩や腕にかけての痛みや動かしにくさが主な症状になります(腕を挙げづらい、反対の脇の下に手が届きにくい、下着を着けにくい など)。それに対して肩こりは首~肩にかけての張り感や凝り感が主な症状になり、肩を揉んだり動かしたりすれば楽になるといった特徴があります。五十肩はどこが痛む? 初期症状のチェック
五十肩の多くは肩関節の炎症から始まります。炎症が起こると、じっとしていても痛い、夜間は痛みで何度も起きてしまうといった症状が出てきます。痛みは肩~上腕にかけて出ることが多いです。しかし中には上記のような症状がなく、日常生活で徐々に肩の動かしにくさを自覚するケースもあります。その場合は、バンザイをする、反対の肩に触れる、背中に手を回すといった動かしにくさとともに、痛みが生じます。五十肩の4つの痛み出方
ピンポイントで肩に痛みがあるタイプ
肩の前側が広範囲で痛むタイプ
肩の外側が広範囲で痛むタイプ
腕に痛みがあるタイプ
五十肩でやってはいけないことは?
肩関節に炎症が生じている場合は、無理にストレッチなどを行うと悪化してしまいますので、安静にすることを優先します。炎症が治まってくると、痛みは引けてきますが、徐々に肩の動かしにくさが自覚症状として出てきます。ここでも痛みを我慢して、肩の運動などを自己流で行ってしまうと、治癒を遅らせてしまったり、症状が悪化してしまうという恐れがあるので注意が必要です。五十肩は治るまでのどのくらいかかる?
五十肩は早期診断から治療が早いほど予後が良いとされています。五十肩の患者さんの中には何ヶ月も肩の痛みや動かしにくさを我慢されてクリニックに来院される方も多いです。しかし治療の開始が遅くなってしまうと、より長い治療期間が必要になることもあります。肩の動かしにくさや、わずかな痛みが生じている時期には既に肩の筋肉は硬くなり始めていることが多いです。筋肉の硬さが進行すると、さらに深部にある関節包(関節を包んでいる袋)が硬くなってきてしまい、リハビリで難渋することも少なくありません。中には1年以上治療を行っても、満足な可動域が得られない場合もあるため、肩に違和感を感じたら、早めに医療機関へ受診することをおすすめします。五十肩と思いきや別の病気の可能性?
五十肩の症状の似た疾患として腱板断裂、関節リウマチ、石灰性腱炎などがあり、これらの疾患との鑑別が大切になります。腱板断裂は肩のインナーマッスルが一部切れてしまうことにより、力が入りにくい症状が出てきます。関節リウマチは両肩の痛み、肩を含めた3か所以上の関節の痛み、朝の関節のこわばりが特徴的ですが、診断には血液検査が有効になります。また、石灰性腱炎は肩にカルシウムが沈着してしまう疾患で、初期症状としては安静時、夜間時に激痛があるという特徴があります。いずれも40~60歳代で多く発症する疾患であるため、これらとの鑑別が大切になります。実際のレントゲン・MRI画像
五十肩のMRI画像
正常
脇の下にあたる部分の関節包がたわんでいる
脇の下にあたる部分の関節包がたわんでいる
五十肩(凍結肩)
関節包にたわみがない(関節包が固まっている)
関節包にたわみがない(関節包が固まっている)
石灰性腱炎のレントゲン画像
正常
白いもや(石灰)はみられない
白いもや(石灰)はみられない
石灰性腱炎
白いもやがある(石灰が溜まっている)
白いもやがある(石灰が溜まっている)
腱板断裂のMRI画像
正常
肩の筋線維(黒い部分)が連続している
肩の筋線維(黒い部分)が連続している
腱板断裂
筋線維(黒い部分)が切れている
筋線維(黒い部分)が切れている
五十肩の夜間痛対策:おすすめの寝方
五十肩の初期は夜間痛があり、痛みで何度も起きてしまうことが珍しくありません。そのため、写真のようにタオルやクッションを使うことで肩への負担を減らすことが夜間痛を減らすことができます。また、おなかの上にタオルを乗せて抱くようにして寝ることで痛みを減らすことができます。