アキレス腱断裂
【アキレス腱の役割】
アキレス腱は「腓腹筋」と「ヒラメ筋」が収縮した時の力を踵(かかと)の骨に伝える強靱な腱です。「腓腹筋」と「ヒラメ筋」はつま先立ちや走る動作など、体を持ち上げる時や地面を蹴る時に働く筋肉です。これらの筋肉が発揮した力をうまく伝達してくれることで、普段の日常で行ってる動作やランニングなどの動作が可能となります。
【アキレス腱断裂はどうやって起きるのか】
アキレス腱断裂はアキレス腱に強い伸張ストレス(引き伸ばされる力)と「腓腹筋」と「ヒラメ筋」の収縮が同時に起こった時に発生します。つまり、これらの筋肉が付着している膝関節を伸ばし、かつ、足首を曲げた状態で前側に体重をかけて蹴りだす時などに起こります。スポーツの現場では、バスケットボールでのバックステップからの片脚ジャンプ、剣道での踏み込みなどがあげられます。また、発生した瞬間は「バン!」と断裂音があり、「後ろから足を蹴られた」と錯覚するような症状を訴える方が多いです。
図1.アキレス腱断裂しやすい姿勢:膝関節伸ばして足関節を曲げてバックステップの着地
【症状】
アキレス腱断裂後は歩けなくなると思われがちですが、実際は歩くことができるケースが多いです。しかし、つま先立ちができなくなります。走る際にもつま先がペタペタする感じになりうまく走れなくなります。これ意外にも、痛みが少ない場合が多いです。また、アキレス腱周囲が腫れることが多いですが、アキレス腱の腱鞘(踵の骨から2-6cm程度上)に損傷がない場合は腫れないこともあります。
【診断について】
主に整形外科的テストと言われる徒手的な検査や超音波・MRIによる画像診断が有用です。有効な検査としてはトンプソンテストというものがあります。うつ伏せでふくらはぎを握るとアキレス腱断裂がない場合は足が動きますが、アキレス腱断裂がある場合は足が動かなくなります。
図2.トンプソンテスト:ふくらはぎを握っても足が動かない。
【治療について】
アキレス腱断裂の治療法としては大きく分けて保存療法と手術療法があります。
保存療法のメリットは手術による傷が残らない、傷口が感染する危険性がないことです。デメリットはアキレス腱治癒のため固定(足首を動かさない)と免荷(足に体重をかけない)をする期間が手術に比べて長いことがあげられます。
手術療法のメリットは、保存療法に比べて固定・免荷期間が短くスポーツ復帰が早いことです。デメリットは手術による傷ができることと、それによって感染のリスクがあることです。
手術するにあたり、早期の診断と治療が良好な回復経過をたどるといわれています。受傷から長時間が経過してしまうと、手術による時間的メリットがなくなること、アキレス腱が断裂した部位が瘢痕化して変性してしまい手術後の予後が悪くなってしまう事があります。
アキレス腱断裂を疑う場合は早めに病院を受診し、担当医師からの診断を受け、治療方針を決定することをお勧めします。
アキレス腱断裂は保存療法と手術療法のどちらにおいてもリハビリが大切となります。次回の投稿では、リハビリテーションについて情報提供をしていきます。
※保存療法(リハビリ)については後日掲載します。
※手術療法後リハビリについてはこちらをご確認ください。
「アキレス腱縫合術後リハビリテーション」