肩腱板断裂の手術:術後のリハビリ

2017/03/14
#肩関節
医師
平田 正純

肩腱板断裂の手術後リハビリテーション

断裂した腱板を縫い合わせ修復する手術(鏡視下腱板修復術)を行った場合は、 手術後のリハビリテーションで腱板の機能を戻すことが重要となります。
また、そのリハビリテーションは、腱板の断裂サイズによって治療プログラムが異なります。

【腱板断裂サイズについて】

腱板の断裂サイズは、診察での超音波画像やMRI画像で医師が診断します。

1㎝未満   → 小断裂
1~3㎝未満 → 中断裂
3~5㎝未満 → 大断裂
5㎝以上   → 広範囲断裂



図1 腱板断裂の解剖図
 

【鏡視下腱板修復術後の固定期間について】

手術後は、腱板が修復するまで時間が必要です。
そこで、修復した腱板に収縮や緊張などのストレスを加えないように一定期間装具を装着します。
この期間に自分の意思で肩を動かすなど、修復した部分へストレスが加わると再断裂してしまう可能性があるため、充分な注意が必要です。
また、固定の装具と期間は断裂サイズによって異なります。

★手術後の装具 
手術後に使用する装具は、断裂サイズの違いにより、外転枕(脇の下に入れる装具)の大きさが変わります。

  図2 ウルトラスリングⅢ(小断裂、中断裂)
 図3 Ken bag(大断裂、広範囲断裂)

※装具の装着方法を知りたい方はこちらをご参照ください。
「ウルトラスリングⅢ装着方法」
       「Ken bag装着方法」
またウルトラスリングはこちらから動画でも確認できます。
「ウルトラスリングⅢ装着方法 動画」

★手術後の装具固定期間
小断裂   → 3週間
中断裂   → 3週間
大断裂   → 6週間
広範囲断裂 → 6週間
 

【鏡視下腱板修復術後のリハビリテーション】


<手術前>
手術前の肩関節の動きが十分であると術後の経過も良好であると言われています。手術前はできる限り関節可動域の改善を図ります。
また、術後に装具の着用をスムーズに行えるように練習や更衣動作を手術前に行います。

<手術後>
早期から浮腫みがでないよう指や手首を動かします。
術後3週間は処置した部分をしっかりと修復させるために安静が必要です。
装具固定期間は自分の意思で肩関節を動かすことができないため、理学療法士が可動域練習を行います。
腫れや熱感がある時期のため、退院後もアイシングを行うよう指導します。

※アイシングの方法はこちらです。 →  「アイスバックの作成方法」 「アイシングの方法」
※夜痛みが出やすい人はポジショニングを確認しましょう。 →  ポジショニングの方法

<術後3週目~>
この頃から、反対側の手で支えて内外に動かすことができます。

図4 内外旋の自動介助運動
 
<術後4週目~>
小断裂、中断裂では3週経過後に装具を外します。
3週間が経過すると腱板の修復が進んでいます。しかし、その強度は十分ではありません。
そのため、装具を外した後も肩関節を自力で動かさず、身体の横で肩に力を入れずに腕を下げる状態にします。
歩行時の自然な腕の振りは許容範囲内の運動です。
リハビリテーションでは理学療法士が腱板の収縮を促すよう介入していきます。

※大断裂、広範囲断裂は6週経過まで引き続き安静時期です。
   装具は外せませんのでご注意ください。  
医師や理学療法士の指示により、段階的に装具を小さくし、6週経過後に外します。


<術後5週目~>
この頃から、小断裂、中断裂では肘を曲げた状態で手を内外に自分で動かすことができます。

図5 内外旋の自動運動

※大断裂、広範囲断裂は7週目からこの動作を行うことができます。

 また、全ての断裂サイズで反対の手で助けて腕を上に挙げる動作もできるようになります。

図6 挙上運動の自動介助運動(座位)

図7 挙上の自動介助運動(背臥位)

<術後7週目~>
腱板の修復が進み、小断裂、中断裂では、方向の制限なく自分で動かせるようになります。
しかし、筋力は回復していないので、物を持たずに自分の手の重みだけで動かしましょう。

※大断裂、広範囲断裂では術後9週目からこの動作を行うことが可能です。

<術後9週目~>
この時期から小断裂、中断裂では、修復した腱板に抵抗をかけることができます。
リハビリテーションでは可動域の獲得後にセラバンドなどによる腱板エクササイズを行います。

※大断裂、広範囲断裂では術後11週目からこの動作を行うことが可能です。



 


 

※エクササイズは必ず医師、理学療法士の指示のもとに行いましょう。

<術後3ヵ月>
この時期までに手を頭の上に挙げる動作や、肘を開く動作の獲得を目指します。
腱板が順調に回復しても、家事動作や自動車運転動作の獲得には2~3ヵ月かかります。
あくまでも、家事動作や自動車運転の開始時期には個人差があります。
自己判断せずに、必ず執刀医の許可を得た上で行いましょう。

<術後6ヵ月>
この時期は、手術後の定期検診で可動域測定、疼痛評価、筋力測定、MRI撮影を行います。
MRI画像や筋力測定の結果を基に、スポーツや余暇活動への復帰にむけて、必要な機能改善を図ります。

※その後、定期検診は、術後1年、術後2年で行い再断裂の有無や復帰状況の確認を行います。

<術後8ヵ月>
重い荷物を持つこと、スポーツ復帰は、回復状況にもよりますが、この頃から可能です。

※あくまでも目安であり、個人差があることをご了承ください。  
スポーツのレベルや種目によっても違いがあります。  
執刀医と相談しながら復帰を目指しましょう。


手術をすることが決まった方へ
手術後の日常生活動作についてまとめた資料をこちらから印刷できます。 
「鏡視下腱板修復術後の日常生活動作資料」
ご不明な点があればスタッフまでお問い合わせください。

肩腱板断裂の保存療法についてはこちらをご参照ください。   →  「肩腱板断裂の保存療法」
肩腱板断裂の概要についてはこちらをご参照ください。     →  「肩腱板断裂の概要」
鏡視下腱板修復術後のクリニカルパスはこちらをご参照ください。→  「鏡視下腱板修復術後のクリニカルパス」
 

入浴装具の作成の仕方はこちらから動画で確認できます。 →  入浴装具の作成方法

【肩関節を担当しているリハビリテーションスタッフ】

※写真をクリックすると紹介文が表示されます。
※肩関節を担当しているスタッフのリハビリテーションを希望される場合は、初診時の問診表に名前の記載をお願い致します。

理学療法士:菅 聖

  

Ver.2 2018.7.8 

この記事を書いたスタッフ
医師
平田 正純
肩関節・肘関節の関節鏡視下手術、肩関節外科、スポーツ整形外科を専門とし、志を抱いて大阪からやってまいりました。最新の超音波診断装置(エコー)を用い、運動器傷害の診断だけでなく治療も行います。また近年脚光を浴びている運動器超音波診療の普及に努めています。ベストな治療を提供できるよう日々知識と技術の研鑽に励みます。関西弁で患者さんの社会復帰、スポーツ復帰を応援、サポートする所存です。
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