TFCC損傷の手術
TFCC(三角繊維軟骨複合体)とは、手関節の尺側(小指側)に存在する①尺骨三角骨靭帯②尺骨月状骨靭帯③掌側橈尺靭帯④背側橈尺靭帯⑤尺側側副靭帯⑥三角靭帯の6つの靭帯と関節円板によって構成されています。
主な役割として、手関節の安定性や衝撃の吸収、手関節の円滑な運動を担っています。
図1 TFCC
TFCC損傷とは
<原因>
TFCC損傷には変性性と外傷性の2種類の原因があります。
変性性では、尺骨(手関節の外側の骨)が過剰に突き上げている状況での手関節の過用によってTFCCに繰り返し微小な損傷が生じることで受傷します。
外傷性では転倒した際に手をついたり、テニスや野球など手関節を過用する方に多く、TFCCに大きなストレスがかかることで受傷します。
図2.3 左:正常 右:尺骨が橈骨より突き上げている
<症状>
手関節を捻る動きや、ドアノブを回すような動きを行った際に、手関節の尺側に強い痛みを生じます。
腱鞘炎と似た症状が生じるため精査が必要です。
図4 手関節を捻る動き
詳細は以下をご参照ください。
手術適応
・手関節尺側の痛みや脱臼感
・手関節を捻った際の尺側の痛みや不安定感も訴え
・整形外科所見で不安定性のある場合
・関節造影で造影剤の漏出がある場合
・画像所見でTFCCの剥離がある場合
以上が認められると適応となります。
また、痛みが出現した後、手関節の安静・固定、関節内へのステロイド注射、3~6か月のリハビリで症状が改善しない場合に手術が適応となります。
スポーツを行っている方で早期に競技復帰を目指している方はリハビリ期間を短縮して手術を行う場合もあります。
手術までの流れ
手術が決定した後、手術内容や方法の説明を行い、合併症や感染症のリスクの説明、手術前の検査(血液検査、尿検査、心電図、胸部レントゲン、必要に応じて呼吸機能検査)を入院までに行って頂きます。
また、術後の経過をより良くするために、手関節の可動域や筋力を維持する目的でリハビリを行っていきます。
痛みが強い場合、必要に応じてサポーターなどを装着して日常生活を過ごして頂きます。
入院について
入院期間:3泊4日(3割負担の場合)
入院費:20~25万
※手術の手技によって値段は変更することがあります。あくまで目安ですので、詳細は以下をご参照ください。
→ 入院費詳細
手術方法
手術では基本的に全身麻酔下で行います。
手術手技は、大きく鏡視下手術と直視下手術に分けられます。
また、尺骨の過剰な突き上げがある場合は尺骨の骨切り術を行い、プレートとネジで固定をし、1年ほどしたら抜釘(プレートを取る)を行います。
当院では主に鏡視下での手術を行います。
図5 ポータル(手術操作に伴う傷)の位置
鏡視下TFCC部分切除術
TFCC中央部の損傷では、血行がなく自己再生能がないため主に部分切除術が行われます。
切除術のみであれば時間をあまり使わないため局所麻酔等で行うことも可能ですが患者様の希望や他の処置もあれば全身麻酔で行います。
なお、当院では原則として全身麻酔で行っております。
手関節の背側から器具を挿入し、高周波メスとシェーバーで損傷部位を切除していきます。
術後リハビリテーション
手関節の自動運動(自分で動かす)を行っていき、術後3週から他動運動(動かしてもらう)や筋力訓練を行っていきます。
術後翌日からスプリントでの固定を除去していきますが、痛みが強い場合はサポーターなどで痛みを改善していきます。
鏡視下TFCC縫合術
部分切除術と同様に手関節の背側から機器を挿入し、損傷部を洗浄してから縫合を行っていきます。
<術後リハビリテーション>
術直後は肘上から手関節まで固定をし、固定下で行える肩や指の自動運動を行います。
その後3~6か月をかけて手関節の機能を向上していきますが、術後時期に応じて組織の修復過程を踏まえて行う必要があります。
よくある質問
Q1.スポーツや仕事はいつから復帰できるの?
A.術後3週経過した後、痛みを確認しながら行っていきますが、処置の内容によって多少前後します。 また、スポーツや仕事でどのような動きが必要かを考慮してリハビリで動きの確認等を行っていきます。
Q2.お風呂はいつから入れるの?
A.固定期間中はビニール等で覆って入ることは可能ですが、患部の腫れが残っている場合は長時間入浴してしまうと悪化の可能性があるため注意してください。
Q3.リハビリの頻度はどのくらいがいいの?
A.術後すぐは炎症期であり、感染症のリスクがあります。術後1ヶ月までは患部の状態や機能のチェックも含めて週に2回は通って頂きます。
Q4.手を使わなければ走ったりしていいの?
A.走ることでも手関節に負担がかかり、腫れに繋がってしまうため控えてください。
Ver.1.2018.3.6