腱板断裂に対する腱板修復術後のリハビリテーションを紹介します。
・術後プロトコル。数字の0〜24は週の単位で、24週間までのプロトコルです。
【小・中断裂】
【大・広範囲断裂】
Phase1【術後早期】
目的:組織の回復、血液循環の改善
目標:夜間痛の消失、安静時痛の消失、
リハビリの内容:
手術後は炎症が発生し、疼痛のため安静にすることで血液循環が悪くなります。また手術による修復部位を保護するための装具を装着することにより血流は更に悪くなります。手術後3週間は炎症を抑えつつ、血液循環や姿勢の改善など患部への負担が軽減するように患部以外(手首、肘、肩甲骨、体幹)のプログラムを実施していきます。
特に手指の運動は手術後当日より開始し、肘関節の運動も翌日から開始します。
小・中断裂の場合は、肩関節の運動も肩に力の力を抜いたまま反対側の手を用いて他動的に開始していきます。
肩外転装具装着期間
腱板断裂の範囲により分けられます。
【小・中断裂】
手術後3週間
【大・広範囲断裂】
手術後6週間
(1~3週目:75°、4週目:60°、5週目:45°、6週目:30°)
装具の装着方法
・ウルトラスリング(主に小・中断裂の術後に使用します)
・ケンバック(主に大・広範囲断裂の術後に使用します)
肩関節周囲筋リラクゼーション
肘関節運動
肩甲骨の運動
脊柱の運動
Phase2【術後中期】
目的:肩関節の可動域の拡大
目標:夜間痛、安静時痛の消失
リハビリの内容:術後5週目からは少しづつ自分の力で肩を動かして可動範囲を拡大していきます。痛みや装具固定期間のために代償運動が発生しやすい時期なので、正しい姿勢で肩関節-肩甲帯-体幹が協調した形で肩を動かせるようになることを目指します。修復した腱板の強度が回復してくる約8週間まで継続していきます。
大断裂の場合は、修復組織の治癒を妨げないために少しスケジュールを遅らせて進めていきます。
可動域のスケジュール
【小・中断裂】
屈曲:自動介助運動は5週目~、自動運動は7週目~
回旋:自動介助運動は3週目~、自動運動は5週目~
【大・広範囲断裂】
屈曲:自動介助運動は5週目~、自動運動は9週目~
回旋:自動介助運動は4週目~、自動運動は8週目~
テーブルスライド
介助しながらの挙上運動
stoopimg(ストーピング)
Y字(弱)
壁押し
Phase3【術後中期】
目的:肩関節の可動域の拡大と筋力の獲得
目標:日常生活動作での疼痛なし、上肢による荷重時痛なし
リハビリの内容:術後9週目からは修復した腱板の強度も回復してくることから、腱板の筋力トレーニングを開始していきます。また肩関節-肩甲帯-体幹が協調した形で肩を動かせるようになるためのプログラムを行っていきます。
猫と犬のポーズ
YTW
腱板トレーニング(棘上筋1)
腱板トレーニング(肩甲下筋1)
腱板トレーニング(棘下筋1)
Phase4【術後後期】
目的:肩関節の可動域の更なる拡大と筋力の獲得
目標:動作時痛なし、可動域の健側比80%以上
リハビリの内容:肩の可動域を拡大するためにストレッチを行ったり、上肢を挙げた状態での筋力強化を行います。また手や肘を床に着けた状態で体重を支えるようなプログラムを行っていきます。
腱板強化(棘下筋2)
腱板強化(肩甲下筋2)
プランク1(四つ這い)
プランクプッシュアップ(腕立て肘伏せ)
プランク2(腕立て伏せ)
プランク3(上肢リーチ)
Phase5【スポーツ復帰期】
目的:スポーツ活動に必要な肩関節の可動域と筋力の獲得
目標:可動域の健側比90%以上、筋力の健側比80%以上
リハビリ内容:患者様の取り組んでいるスポーツに必要な特別な動作のトレーニングや、実行に必要な筋力トレーニングを行います。