入院・手術

Hospitalization&Surgery

鏡視下腱板修復術(肩腱板断裂に対する手術)

肩腱板断裂に対し関節鏡で行う手術を「鏡視下腱板修復術」といいます。

肩腱板断裂とは?

肩には棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋の腱板と呼ばれる4つの筋があり、球関節と呼ばれる不安定な関節を安定させ動かしています。
これらの腱板が、肩をぶつけた、転倒して手をついたなどの外傷や、加齢による腱板自体の変性、また、変性をした腱板に外傷が加わってしまったことなどが原因で断裂してしまうことを腱板断裂といいます。
腱板断裂が生じると肩が挙がらない、痛くて夜眠れない、痛くて動かせない、力が入らないなどの症状がでます。
※肩腱板断裂の詳細についてはこちらのページでご確認ください。
  → 肩腱板断裂の概要

肩腱板断裂の診断

① 問診 お話を聞く中で、腱板断裂の原因となりうる外傷などがないかを確認します。
  また、腱板断裂の特徴的な症状の有無もここで確認します。

② 評価 腱板断裂の所見がないかを評価します。
 腱板の1つである棘上筋の評価です。
 
 
 
        full can test

 
       empty can test

※様々な評価の中から一部のみ紹介。

③ 超音波診療 超音波診断機器を用い、腱板の状態を確認します。

 その他画像評価
 以下はMRI画像です。
 通常は、棘上筋は正常画像のようになっています。しかし、腱板が断裂してしまうと断裂画像のようになります。
 鏡視下腱板修復術ではこれを縫合します。

鏡視下腱板修復術の適応とは?

内服や注射、リハビリテーションを実施し、夜間痛や動作時痛の改善が見られない場合、また、腱板断裂による筋力低下や疼痛により日常生活に大きな支障をきたしている場合に鏡視下腱板修復術の適応となります。
 

手術までの流れ

手術が決定したら

① 術前検査
    血液検査、心電図など手術ができる状態か検査を行います。
  持病をお持ちの方は、かかりつけ医に手術を行っていい状況か確認していただきます。

② 術前リハビリテーション
   手術前に可動域制限がないことは良好な術後成績につながると言われています。
 そのため、当院では術前にリハビリテーションを行い、できる限り可動域制限を改善させます。
 また、手術前に2~3回は装具装着練習を行います。装具装着練習を行うことで術後の不安が軽減します。

③ 機能診断テスト
  術後の経過を見ていくために筋力測定を実施します。
  スポーツ復帰や重い荷物を持つことが許可されるタイミングは筋力測定の結果を含めて判断します。
    なお、測定は術前、術後6ヵ月、1年、2年で実施します。

④ 手術説明
    担当医から手術に関する説明を行います。 手術に伴うリスクや手術内容についてここで説明します。
 

入院費用について

鏡視下腱修復術にかかる一般的な費用は以下の通りです。
手術、入院費用 4日間 24~27万円(健康保険3割負担の方)
装具費用 35,370円
その他 個室料金、パジャマ等のレンタル料金は別途かかります。

※あくまでも費用は概算であり、手術の内容により異なりますのでご了承ください。

入院費用に関する詳細はこちらをご参照ください。→ 入院費用
※なお、高額医療に関するお問い合わせも多くいただいております。 合わせて詳細をご確認ください。
 

鏡視下腱板修復術について

肩にカメラや器具の入る小さな傷を数ヶ所作成します。
腱板の断裂部分の上腕骨にアンカーを設置し、断裂した腱板を修復します。
また、上腕二頭筋腱の断裂がある場合は、腱固定や腱切離など追加処置を行うことがあります。
さらに、当院では平田正純医師により、これまで修復の難しかった広範囲断裂も腱板を前進させるDebeyre-Patte変法と呼ばれる方法で手術を実施しています。
なお、当院では通常の麻酔に加え、神経ブロック注射を実施することにより、術後の疼痛緩和に努めています。
(ブロックの効果は第1回肩の看護研究会で発表しました→こちらで確認できます)


 

    ― 断裂部位の縫合 スーチャーアンカーを用いて―

  
 


    ― 断裂部位の縫合完了 ―

   


 

鏡視下腱板修復術後のリハビリテーション

術後のリハビリテーションは当院のプロトコル(リハビリ計画)に沿って実施します。
また、重いものを持つ仕事やスポーツを仕事とされる方の復帰は6ヶ月での定期評価以降の判断となります。



人の背中には、広背筋と呼ばれる大きな筋がついています。
装具固定による安静期間に、この広背筋が硬くなり張り付いてしまうと術後の肩関節可動域に大きく影響します。
これらの予防も含め、術後早期から様々な患部外エクササイズを実施していくことになります。



※術後リハビリテーションについてはこちらをご参照ください。  
  → 鏡視下腱板修復術後のリハビリテーション
 

よくある質問

Q1.短い入院期間で退院して大丈夫ですか?  
        → A.入院前から装具練習を実施し、入院中も更衣動作や入浴動作を練習します。     
                 帰宅後も日常生活に不安がないように指導させていただいておりますので、安心していただいて大丈夫かと思います。

Q2.術後すぐに遠方への移動は大丈夫ですか?  
    → A.当院には長野施設の患者さんが手術を受けるために入院されます。
                そこで、当院のスタッフが術後すぐの遠方移動が術後経過に影響があるのか 研究したところ、問題がないとわかりました。
                第14回 肩の運動器機能研究会で発表しておりますのでこちらもご確認ください。    
                 →「患者退院時長距離移動が鏡視下腱板修復術の術後成績に及ぼす影響」

Q3.仕事はいつからできますか?  
        → A.術後は肘から下は動かせますので簡単なデスクワークは可能です。
                 しかし、断裂サイズによっても固定期間は異なりますが、3~6週の装具固定期間中は手術した腱板に負担をかけないための安静期間です。
       無理をすると周囲の筋緊張が高まり、痛みにもつながりかねません。 術後初期からの長時間労働はお勧めしません。

Q4.車はいつから運転できますか?  
        → A.自分で肩を動かせるようになるのは、小~中断裂で6週、大~広範囲で9週から です。
                その後も車のハンドルを回せるだけの可動域と筋力が必要になりますので、 おおよそ2~3ヵ月頃になるでしょう。
                 個々の回復によって異なりますので医師に確認をとって運転を開始しましょう。

Q5.スポーツ復帰にはどのぐらいかかりますか?
       → A.利き手か非利き手か、手を使うスポーツかどうかによっても異なります。     
                  通常は6ヵ月の定期評価後の復帰を目指します。 また、コンタクトスポーツなどは8ヵ月以降の復帰を目指します。

※クリニカルパスが確認できます。 → クリニカルパス
 

当院の肩関節担当医


当院では平田医師が鏡視下腱板修復術を行っています。
当院での外来は月曜日午後、水曜日午前です。 

 →平田正純 医師


Ver.1 2018.3.19