肩関節脱臼手術後のリハビリテーション
肩関節脱臼手術後のリハビリテーションは手術で修復した組織の回復段階に応じてリハビリテーションを進めていきます。ここでは通常の肩関節脱臼手術後のリハビリテーションについて、解説を行います。
※手術前の身体機能や、靭帯・筋肉や関節の状態、手術中の処置内容、術後の機能改善の経過によってリハビリ内容やスポーツ復帰期間は変動します。
術後リハの段階を0〜5の段階に分けて解説します。
Phase0手術前
手術前は手術に向けて肩関節の可動域と筋力を獲得するための訓練や筋力強化を行います。手術後は肩を固定する期間が3週間程あるため筋力低下が生じます。よって術前に十分な可動域と筋力をつけておくことが必要です。以下に術前によく行うリハビリの内容を紹介します。
肩関節の可動域に重要な背骨の可動性を改善するエクササイズ

肩関節の安定性を出す腱板トレーニング

肩甲骨の安定性をだすエクササイズ

Phase1手術後〜3週間 組織の保護をする期間
装具固定
手術後から3週間は装具を装着して修復靱帯の保護を行います。この期間は修復靱帯を保護するため可動域訓練は行いません。 (木﨑Dr2週non-ROM)
肩周囲の拘縮予防
セラピスト主体で肩周囲筋群のリラクゼーションを行い肩の拘縮を予防します。

肘関節の拘縮予防
装具固定中は肘を曲げているため肘関節の拘縮予防も行います。



等尺性トレーニング
関節運動が起こらないように肩を安定させる腱板筋のトレーニングを行います。(矢印は患者さんが力を入れる方向)

Phase2中間期(術後4週〜)
組織の保護をしながら徐々に関節の可動域獲得と筋力強化を行います。
Stooping Pendulumエクササイズ
修復靱帯への負荷を減らした形で肩の拘縮予防を行います。

下垂位外旋方向チューブトレーニング

内旋方向チューブトレーニング

この時期から写真の肢位で関節運動を伴う筋力強化を行います。
テーブルスライド
肩後方組織のストレッチを行い可動域を増やします。

Phase3筋力強化期(術後9週〜)
本格的な筋力強化訓練を行います。また脱臼を生じやすい肢位での可動域訓練とトレーニングを行うことで再脱臼予防に努めます。
肩関節90°外転肢位での内旋外旋方向へのストレッチ

肩関節外転90°での内外旋トレーニング

Wall Pushup
肩の動きには肩甲骨が正しい位置にあり、かつしっかりと可動することが重要であるため、肩甲骨周りの筋力トレーニングを重点的に行います。再脱臼を予防するためにも非常に重要です。

Scapula Pushup(ニーリング)

この時期からランニングも開始していきます。
Phase4アドバンス期(術後13週〜)
スポーツ復帰への準備期間としてトレーニングの負荷量が増え、複合的かつ瞬発的な要素のあるトレーニングを行っていきます。
ワニ歩き

プライオメトリック
瞬発的な力を求められるエクササイズを行うことで、短時間で最大の筋収縮力をつけることができ、より競技のシーンを意識した再脱臼予防を行います。(内容は競技により変わります)
