第9回 医師事務作業補助者研究会 全国大会

研修参加報告:
第9回 医師事務作業補助者研究会 全国大会

 
報告者 : 医療法人アレックス本部 看護師 平尾 千恵
 
期日:2018年11月9日(土)~10日(日)
名称:第9回医師事務作業補助者研究会 全国大会
場所:〒812-0032 福岡県福岡市博多区石城町2-1福岡国際会議場
大会長:原 成孝(原三信病院 診療支援課)
 
研修目的
*本大会での発表支援を通じ、アレックスクラーク職能を医師を中心とした臨床現場をマネジメントするチーム医療の一員としての位置づけを確立する。
*学会で問題点や改善点などを客観視し次なる役割としての「医療の質の向上」と「患者サービス」へ発展するためのヒントを得る。
*外部との意見交換や発表を聴講し、外部交流を図る。
 
【はじめに】
外来統括として、2017年より毎年参加させていただいておりますが、今年は初めての2日間開催となり、当法人からも3名の演題発表が行われました。
以前から政策として取り組まれている「働き方改革」が法制化されることもあり、外来診療の場も、また外来だけでなく全ての診療の場面で、専門職のタスクシフト、タスクシェアリングが推進されていることもあり、当法人でもさらに外来クラークの業務範囲や位置づけ、それにともなう教育体制の再検討など、重要な課題があります。
それらを解決するためのヒントとして、今年も学会に参加させていただき、大きな学びを得ることが出来ましたのでご報告させて頂きます。
 
【研修内容】
①教育講演:医療訴訟における診療記録の重要性
  浜松医科大学医学部 医療法学 教授  大磯 義一郎 先生
 
*診療記録の目的
 医師の診療における施行活動の補助となるだけでなく、医療の行政上の証拠ともなる。そのため、事実と評価を確実に記載する必要がある。
*訴訟時の診療記録の位置づけ
 訴訟時は「書証」「人証」「鑑定・検証」で行われ、「書証」の根拠となるものは診療記録しかない。そのため、診療記録に書かれていることが全てと認定される。
 すなわち、記載がない内容については「やったこと」「言ったこと」にはならない。
*文書偽造の定義
 文書偽造:文章の名義人と作成者が不一致
 偽造:作成権限がないのに他人名義で作成すること
 虚偽記載:自己の認識と異なる記載をすること
 ⇒後で誤りが判明し修正することは改ざん、虚偽記載ではない
*文章作成でのクラークの位置づけ
 医師の履行補助者⇒作成者・文責はあくまで医師のため、偽造には当たらない
 ※例:クラークが誤った記載をして、それが訴訟での証拠となった場合、その責任は医師にあり、クラークは責任を負う必要はない
  そのため、医師の最終確認は医師が行う必要がある
 
②シンポジウム:診療報酬の側面から考える現状と今後の取組み
    株式会社ウォームハーツ代表取締役 長面川さより 先生
*2024年より「医師の働き方改革」法制化
 ⇒医師、看護師業務のタスクシフト・タスクシェアリングが推進される
  参考資料「中医協 総-1 元.11.8」
*2024年は診療報酬と介護報酬の同時改定
 ⇒医療施設の業務種別に応じた業務範囲、人員配置、教育体制の構築が必須となる
*2020年4月から変更必要事項
・放射線被ばく量管理https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2019/190318_4.pdf
・診療情報提供書の算定要件:患者同意の有無
算定要件引用)保険医療機関が、診療に基づき、別の保険医療機関での診療の必要を認め、こ れに対して、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行っ た場合に、紹介先保険医療機関ごとに患者1人につき月1回に限り算定する。
⇒患者同意の有無を診療記録に記載する必要がある
 
【教育講演をうけて:所感】
•        クラークは、診療記録の重要性を理解し、医師が説明した内容を診療録に記載する必要性を理解して実行しなければならない。
•        診療記録は医師法第21条や療養担当規則などの法律で定義されており、記載しなければならない内容も決められている。その法的根拠を理解したうえで記録の修正など、何が虚偽記載に当たるのか、診療記録の位置づけ、などをクラーク全員が理解し、医師の最終確認を行う重要性を指導していく必要性を感じた。
•        また、算定要件や法の改定が頻繁に行われているため、常に最新の動向を把握し、早い対策を取り安全な医療提供と安定した医療経営ができるようにしていかなければならないと感じた。
 
 
【演題発表】
①「麻酔科医の事務負担軽減と手術室運用の相乗効果」
   社会医療法人敬愛会中頭病院 診療支援室、麻酔科 津覇結千香先生 他
 概要:麻酔科医、手術管理に関する事務業務を医師事務作業補助者が行うことで、術前外来の開始が可能となり手術キャンセルの減少と手術件数の増加が可能となった。
 
②「脳神経外科外来における当院での介助体制について」
   医療法人治久会 もみのき病院 臨床支援課、脳神経外科 戸梶 桃子先生 他
 概要:医師に業務範囲の要望の聞き取りおよび定期的な配置のローテーションで、どの職員がついても影響を及ぼさないよう配慮したことで、医師の個性やスタイルに合わせた柔軟な対応が可能となった。
 
【学会発表を聴講して:所感】
• 医師の働き方改革が2024年から施行されることもあり、医師事務作業補助者の需要はえ高まっている。ただ、配置加算を算定できるのは病床を有する施設だけであることもあり、人件費の面から多くの配置は困難な状況はどの施設でも課題のようである。
• ただ、加算を算定すると医師事務作業補助者の業務範囲が逆に制限されるため、敢えて全員の登録をせずに業務を行っている施設もある。
• 当法人も、医師事務作業補助者としてではないことをメリットと捉え、法人独自のクラーク業務を確立し、より専門性を高めた職能へと確立していく必要があると再認識した。
• また、外来でのクラークの配置および活躍の場を充実させていくだけでなく、今後の具体的な取り組みの検討として、手術室および病棟へのクラークを行うことで、OPスケジュール管理および入院パスの登録やサマリー登録を担うことで、専門職である看護師のマンパワーを専門業務に専念できる環境を構築できるのではないかと他施設の発表からヒントを得たため、検討をしていきたい。