肩関節の手術前から術後・運動復帰までのリハビリテーション
肩関節の手術ってなにがあるの?
鏡視下腱板修復術
加齢に伴う変性(組織が弱くなる)や外傷(転倒や事故など)などで断裂してしまった腱板を,糸が付いたネジ(アンカー)を上腕骨に挿入し,糸を腱板に通して元の位置につなぐ手術です(腱板の断裂サイズが大きい場合は追加処置を行い,腱板を修復する場合があります)
鏡視下バンカート修復術
初回脱臼時に肩関節の安定性を保っている関節唇・靭帯が損傷する(バンカート損傷)ため反復性の脱臼になりやすくなります.脱臼によって損傷した関節唇や靭帯を元の位置に修復して肩関節の安定性を高める手術です
(一般的にはバンカート修復術を行いますが,重度の場合は追加処置を行いより強固に修復します)
入院期間はどのくらい?費用はどのくらいかかるの?
・入院期間4泊5日の入院期間です.(手術内容によって入院期間は異なります)
・手術費用の概算
手術内容によって異なります.詳細は「手術・入院費用 | AR-Ex 尾山台整形外科」のページをご参照ください
手術前のリハビリは何をするの?
術前リハビリの重要性
術前に肩関節の可動域制限や筋力低下があると術後の機能回復に時間がかかり,日常生活動作の獲得やスポーツ復帰に影響が出ますそのため肩関節の可動域制限の改善・筋力改善を行いできるだけ機能を高めた状態で手術を行うことが重要です
術前リハビリの内容
可動域制限の改善:肩関節周囲の軟部組織や筋肉の柔軟性・滑走性の改善を図る筋力の改善:肩関節・肩関節周囲の筋力強化を図る
術後の日常生活動作指導:装具着脱指導・衣服の着脱指導・入浴指導・術後プロトコルの説明・
日常生活やスポーツ復帰時期の説明
肩腱板小・中断裂 装具装着方法 肩腱板大・広範囲断裂 装具装着方法
入院中のリハビリってなにをするの?
入院日:手術前の可動域や筋力の検査・装具の着脱練習・装具を装着した状態でのポジショニング指導(就寝時の姿勢,日中の姿勢)手術当日:ベッド上でポジショニング練習・肩甲骨周囲のリラクセーション・肘や前腕の動作の確認
手術翌日から退院日:リハビリ室で肩関節周囲のリラクセーション・胸椎/肩甲骨のストレッチ
装具の着脱練習・入浴装具(三角巾)練習・家屋状況など環境にあわせた生活動作
入浴練習(看護師が付き添いの元)
手術後のリハビリってなにするの?どれくらいで生活できるの?
装具固定期間について
〇鏡視下腱板修復術術後3週間,外転装具固定します(腱板の断裂サイズが大きい場合術後6週間の外転装具固定を行います)
〇鏡視下バンカート整復術
術後3週間,装具固定します
※禁止事項
装具固定期間中は修復した組織がとても弱い時期ですので自分の力で肩を動かさないように注意してください
手術後のリハビリ内容
〇鏡視下腱板修復術
・保護期(術後1週~)アイシング・肩関節周囲筋リラクセーション・術創部モビライゼーション・肘関節屈伸運動
・中間期(術後4週~)
肩関節可動域改善:テーブルスライド
肩甲帯トレーニング:YTトレーニング
・筋力強化期(術後9週~)
腱板筋筋力強化:棘下筋(1st)・肩甲下筋 1st・棘上筋トレーニング
ジョギング開始(術後11週~)
・アドバンス期(術後14週~)
肩甲帯・体幹筋力強化:プランク・プッシュアップ
ダッシュ・アジリティトレーニング(術後18週~)
・スポーツ復帰(術後24週~)
オーバーヘッドスポーツ動作トレーニング・各種目別トレーニング・上肢を使用しない運動許可
〇鏡視下バンカート修復術
・保護期(術後1週~)肩関節周囲筋リラクセーション・術創部モビライゼーション・肘関節屈伸運動
腱板筋トレーニング:肩関節内転の等尺性トレーニング・肩関節外旋の等尺性トレーニング
肩関節内旋の等尺性トレーニング・肩関節外転の等尺性トレーニング
・中間期(術後4週~)
肩関節可動域改善:テーブルスライド・ペンデュラム
・筋力強化期(術後9週~)
肩甲帯・体幹筋力強化:プランク・壁立て伏せ
ランニング開始・オーバーヘッドの日常生活動作開始
・アドバンス期(術後13週~)
プッシュアップ・ダッシュ・アジリティトレーニング・プライオメトリックトレーニング
・スポーツ復帰(術後24週~)
オーバーヘッドスポーツ動作トレーニング・コンタクトスポーツ動作トレーニング
○リハビリってどれくらいの頻度でするの?いつスポーツ復帰できるの?
・リハビリ頻度
可動域や創部の状態によりますが術後早期は2~3回/週、機能次第では1~2/週と頻度を減少させます
・スポーツ復帰時期
画像所見・肩関節周囲の筋力(目安:健側と比較して8割以上)・肩関節可動域(目安:健側と比較して差がない)・術後各種スコア・スポーツの内容・手術の内容によって異なる場合があります
※手術前の身体機能や、靭帯や筋や関節の状態、手術中の処置内容、術後の機能改善の経過によってリハビリ内容や復帰期間は変動します。どのレベルまで運動をしていいかなど気になる点がある方は担当のリハビリスタッフや執刀医にご確認ください。