半月板の手術前から術後・運動復帰までのリハビリテーション
半月板手術が推奨される場合
- リハビリテーション等の保存療法を行ったが症状が改善しない
- 膝が伸びきらない場合
- 引っかかり感の症状が出る場合
半月板断裂ってどんな状態なの?
半月板の断裂はその断裂の形によって分類され、それぞれの症状や治療法、予後が違ってきます。縦断裂
半月板の形状に沿った走行に亀裂がはいった状態です。半月板縫合術の良い適応です。
横断裂
半月板が分断されたような亀裂が入った状態です。水平断裂
半月板に対して水平に亀裂が入る状態です。経年変化によって徐々に進行することが多く、通常では膝の中で引っかかりなどの深刻な症状は出ないのが特徴です。
バケツ柄状断裂
半月板の縦断裂が大きくなり、裂けた内縁の部分がちょうどバケツの柄のようになって動き、ひっかかるのが特徴です。「ロッキング」という膝が伸ばせない、曲げられないといった症状が現れることが多い断裂形態です。
フラップ状断裂
斜めに裂けた半月板の端がブラブラと不安定な状態です。膝の関節に挟まり急に痛みを出すことが多い断裂形態です。
半月板の手術ってどんなことをするの?
鏡視下半月板縫合術・鏡視下半月板切除術代表的には上記の2つの術式に分けられます。
半月板縫合術:関節鏡を用いて半月板の損傷した部分を縫い合わせる手術です。
半月板切除術:関節鏡を用いて半月板を可能な範囲で温存し、損傷した部分を最小限切除する手術です。
基本的には半月板をできるだけ温存する縫合術を第一優先で行いますが、
半月板の状態により縫合できない場合があります。その際は切除術を選択します。
※鏡視を行い断裂部分が小さな断裂や、治癒が見込めない部位の断裂、状態が悪く縫合不可能な場合は切除を選択する場合が多いです。
手術時間は30分から1時間半程度です。
【入院期間はどのくらい?費用はどのくらいかかるの?】
・入院期間鏡視下半月板縫合術:3泊4日
鏡視下半月板切除術:2泊3日
(手術内容や術後の状態によって異なります)
・手術費用の概算
手術内容によって異なります
詳細は「 手術・入院費用 | AR-Ex 尾山台整形外科 」のページをご参照ください
手術前のリハビリって必要なの?
手術前のリハビリは重要です手術前に膝関節周囲の関節可動域の低下や筋力低下、他の関節の機能低下がある場合、手術後の機能回復に時間がかかり、日常生活動作の獲得やスポーツ復帰に影響が出ます。
そのため、手術前から膝関節の状態はもちろん、全身的な状態を評価し機能回復を行った上で手術に望みます。
手術前のリハビリテーションってなにをするの?
手術前リハビリの内容半月板損傷が起きる原因は様々ありますが、他の関節の機能不良や筋力低下があり結果として膝関節に負担を来たすことが多いです。
手術前のリハビリテーションは患部の状態はもちろん、他の関節の筋力や可動域、姿勢、歩行等々の評価を行い再度断裂しない身体機能の獲得を行います。
例:足首の可動域が少ない場合
→しゃがむ動作で足首の可動性が少ない場合、膝の過度な可動性が求められるようになり膝への負担が上昇します。そのため、足関節の可動域訓練を進めて膝への負担を減らします。
例:股関節の筋力低下がある場合
→スポーツを行う上で股関節の筋力は推進力や支持を担う上で重要です。
股関節の筋力低下がある場合、重心が左右にぶれる原因となり、結果的に膝への負担となります。
入院中のリハビリって何をするの?
入院日松葉杖の練習(免荷or部分荷重で練習:平地、階段昇降、床からの立ち上がり動作)
手術前の評価(膝の痛みについての確認や筋力、可動域の最終確認をします)
手術当日
ベッドサイドでの術後評価(痺れや感覚障害や、力がはいるかどうかなどの身体所見を確認します)
手術翌日から退院日
入院患者専用のリハビリ室で午前午後1回ずつリハビリを行います。
執刀医の指示に沿って可動域の訓練や手術後の生活動作の練習(松葉杖の使い方、階段昇降の練習)をします。また手術後の活動量低下によって筋力が落ちないように患部外の筋力トレーニングを積極的に行います。
※生活圏での状況を想定して階段昇降や床からの立ちあがりなど、それぞれの生活のニーズにあった指導を行います。
手術から日常生活、スポーツ復帰までの流れ
●鏡視下半月板縫合術手術後のプロトコル
膝関節可動域:術後2週までは可動域訓練は行いません。2週以降で状態に応じて可動域訓練を行います。
荷重量:2-3週免荷します。以降、疼痛に応じて徐々に荷重していきます。
●鏡視下半月板切除術
手術後のプロトコル
膝関節可動域:基本的には制限なし
荷重量:疼痛に応じて全荷重
リハビリテーションの進み方
手術後3週でスクワット等のトレーニングを開始
6週:スポーツ部分復帰
8週:スポーツ復帰
※手術前の身体機能や、靭帯や筋や関節の状態、手術中の処置内容、術後の機能改善の経過によってリハビリ内容や復帰期間は変動します。
特に縫合術の場合は半月板の断裂形態でリハビリの進みが変わります。
また、術後のプロトコルは執刀医やリハビリスタッフから患者さん一人一人に合わせて説明を行います。
リハビリテーション
術後0〜3週 術後の炎症を管理しつつ膝関節周囲の筋力低下予防を行います。術後リハビリを円滑に進めるために非常に重要な時期です。
膝のお皿の可動性獲得や傷口の管理を行い、膝関節の機能低下を防ぎます。
活動量が少なくなるため患部外のトレーニングも積極的に行います。
この期間に行う具体的なリハビリ内容の動画リンクです。ご確認ください。
傷口の管理
パテラセッティング
サイドブリッチ・股関節外転トレーニング
Hip リフト(お尻の筋肉のトレーニング)
ASLR(股関節前面の筋力トレーニング)
足関節可動域訓練(足首の柔軟性改善)
膝蓋骨モビライゼーション(お皿の可動性を獲得する操作)
術後4〜6週 本格的な筋力トレーニングを行い筋力の回復と日常生活の獲得を行います。
筋力と動的なバランス獲得を中心に行う(スクワットやランジ動作)
この期間に行う具体的なリハビリ内容の動画リンクです。ご確認ください。
エルゴメータ
フロントランジ
レッグエクステンション(大腿前面筋群のトレーニング)
スプリットスクワット(大腿前面、股関節のトレーニング)
サイドスクワット(大腿前面、股関節のトレーニング)
術後10週以降 競技復帰に向けての準備期間です
ジョギングやジャンプ、ランニングアジリティーなど種目に応じたアスレティックリハビリを行い競技復帰に備えます。図1に運動開始の基準を記載しています。
以下この期間に行うリハビリ内容の動画リンクです。ご確認ください。
コンビネーションカーフレイズ
ジョギング
BOSトレーニング(股関節、体幹、足部の協調的なトレーニング)
※紹介したリハビリ内容は時期ごとの代表的な種目です。
リハビリの内容は競技レベルや競技特性により大きく変化します。
医師や理学療法士に確認。指導を受けてから行うようにしてください。
運動開始の基準になる指標
・立ち上がりテスト・筋力検査
weight bearing index:以下WBIの数値を確認する
図1 復帰基準に用いるテストとWBIの相関例
ジョギング:立ち上がりテスト40㎝以上かつWBI0.60以上で開始許可
・リハビリ頻度
可動域や創部の状態によりますが術後早期は2~3回/週、機能次第では1~2/週と頻度を減少させます。