森ノ宮医療大学 「運動器理学療法アップデート講座」

2022年4月1日~8月31日の4か月間、大阪府の森ノ宮医療大学およびWebで開催された「運動器理学療法アップデート講座」に、都立大整形外科クリニック理学療法士の吉岡乾太と脊椎クリニック理学療法士の井関航が参加しました。
本プログラムは、医療機関等における整形外科疾患(運動器疾患)に対する高度な専門的知識と、治療技術を兼ね備えた理学療法士の養成を目的としています。また、「職能実践プログラム(BP)」として文部科学大臣に認定を受けており、社会人が大学で学んだことを証明する「履修証明書」を取得することができます。
研修内容:
①    超音波エコーと体表解剖学
②    運動器治療の多職種連携
③    基礎バイオメカニクスと理学療法
④    理学療法症例検討論
理学療法士のスキルアップに必要な科目を学んできました。
今回、学んできた科目の中から一つを簡略して記載します。
 
 
【超音波エコーと体表解剖学】 
講師:森ノ宮医療大学 工藤慎太郎 教授、インクルーシブ医科学研究所 堤真大 先生
 
○踏み込んだ時の足底の痛みについて
踏み込んだ時に足裏が痛い人の問題として、「偏平足」があります。踏み込んだ時に足裏のアーチが潰れてしまい,痛みを生じることがあります。偏平足になってしまう身体の問題点として、足裏の「距骨」という骨が外側にズレてしまう(外転してしまう)ことがあります。踏み込んだ時に距骨がズレてしまうかを、超音波診断装置(以下エコー)で確認することができます。もし、距骨がズレて痛みを生じている場合は、エコーで確認しながら足裏の筋肉のリハビリを行います。エコーで骨の位置や筋肉の収縮を確認しながらリハビリを行うことで、正常な身体の状態を取り戻せる可能性があります。
 
〇曲げ伸ばしや歩行時の股関節前面の痛みについて
 股関節は、多くの「筋肉」や「靭帯」、「関節包」と呼ばれる関節を包む袋状の組織や、「関節唇」と呼ばれる股関節を固定するリング状の組織など、様々な組織によって安定して動かす事ができます。股関節を曲げたり、歩いたりした時に股関節の前面に痛みが生じる要因として、上記の組織が損傷している可能性が考えられます。従来、リハビリでアプローチできる組織は筋肉で、靭帯や関節包、関節唇が損傷している場合は、安静や手術が検討されます。しかし、近年の研究では「股関節の前面には靭帯のような線維様の組織は観測されない」ことや「関節包は小殿筋と腸腰筋の腱によって構成される」という報告がされています。つまり、股関節前面の組織の多くは、筋肉の延長線上の組織で構成されている可能性が高いことが分かってきています。股関節前面の痛みが生じている原因は筋肉に付随する組織の可能性が高いため、リハビリで改善する可能性の高さが示唆されました。
 
 
 この勉強会は、1年間かけて全日程を学ぶ予定となっています。今回は、半年分の講義の一部を紹介させて頂きました。患者様により多くの知識を還元できるように、残りの半年分も研鑽して参ります。