第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会発表報告

2021/11/15
理学療法士
髙野 秀人

2021年9月4~5日に新潟で開催された第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会に当院の理学療法士の髙野が「肩関節外旋制限に対しCHL切離術により可動域改善を認めた症例」という演題で発表致しました。新型コロナウイルスの蔓延により現地参加は新潟県内在住の方のみとなり、オンラインでの参加となりました。
 
肩関節拘縮とは、「五十肩」や「肩関節周囲炎」と呼ばれる疾患により動きが制限される症状のことを指します。肩関節拘縮により肩周囲の痛みや可動域の制限(洗髪や衣服の着脱が困難)が生じます。40歳~60歳に起こりやすく、男性より女性の方が多いのが特徴です。しかし、依然として最適な治療法は明らかにされていません。



現在拘縮肩の診断においては超音波診断が多く用いられておりMRI検査と同程度の所見が得られるようになっています。また、MRI検査との大きな違いには超音波診断装置は関節を動かしながら検査が可能な点です。よって、肩の動きの悪さの原因組織を視覚的に診断・治療が可能になっています。
 

MRI検査装置

超音波診断装置
拘縮肩の超音波の評価として肩関節の前側の靱帯(烏口上腕靭帯)が厚くなることが特徴的です。烏口上腕靭帯の柔軟性は主に肩関節の外旋可動域(下図参照)に影響します。


(図:外旋動作)
烏口上腕靭帯に対する治療として直接的な切開や、鏡視下手術が報告されていますが、当院では超音波ガイド下に注射針先での烏口上腕靭帯切離を行っています。
 今回、肩関節の外旋制限に対し烏口上腕靭帯切離術により可動域改善を認めた症例を報告しました。症例は50代の女性で特別なきっかけがなく、肩の関節の外旋可動域の制限を生じました。約5ヵ月のリハビリテーションでストレッチや物理療法を行いましたが大きく可動域の変化が生じませんでした。 そこで超音波診断装置を使用し、主な制限の原因となっている組織(烏口上腕靭帯)をみながら注射針先での切離を行いました。処置を行った後の外旋可動域は0°から40°と大きく改善しました。
 このことから烏口上腕靭帯の切離は拘縮肩の治療において有用なオプションであると考えます。しかし、症例数もまだ少ないため適応の判断に関しては十分に検討する必要があります。
 漫然とリハビリテーションで経過を見ていくのではなく、患者さんの状態を客観的に把握し、医師と情報共有することで治療期間の短縮につながると考えています。
 今後も一日でも早く患者さんの笑顔につながるように日々精進してまいります。
  
長野整形外科クリニック 理学療法士 高野秀人
この記事を書いたスタッフ
理学療法士
髙野 秀人
花火の名所長岡から長野に移住して5年目!長野県の冬の日照時間の長さと山の美しさ(もちろんえびす講煙火大会も!)に魅了されています。私の治療方針は患者さんと二人三脚で進めるリハビリです。患者さんが目指すゴールに寄り添うこと、症状を十分に説明し、何故この治療が必要なのかを理解していただくことを大切にしています。また足関節を専門にしており、足関節の症例を多く担当させていただいております。陸上競技の経験からアジリティー(俊敏性)トレーニングを得意とし専門の資格も取得しました。速さにこだわりがある方、ぜひお声掛けください。