野球の肩関節上方関節唇損傷(SLAP損傷)

2024/04/09
#野球 #肩関節
医師
中島 駿

上方関節唇損傷(Superior Labrum Anterior and Posterior lesion、以下SLAP損傷)は野球やバレーボールなどのオーバーヘッドスポーツに多く起こる障害です。繰り返しの投球動作による反復動作により、上腕二頭筋関節唇複合体に負荷がかかり上方関節唇が関節窩から剥がれてしまう状態です。また投球動作の反復だけでなく、スライディング動作で腕を伸ばして手をついた際に受傷したりする場合もあります。自覚症状としては、投球動作時(レイトコッキング期に多い)の痛み、引っ掛かり感、不安定感などがあります。

病態

病態は二つに分けられます。

①Peel back mechanism

投球動作におけるレイトコッキング期に肩が外転―外旋位に強制された際、上腕二頭筋腱に捻れが生じ、その付着部である上腕二頭筋関節唇複合体にも捻れ+牽引ストレスが加わり(Peel bach mechanisim)上方関節唇の剥離が生じます。

②インターナルインピンジメント

投球動作におけるレイトコッキング期に肩が外転―外旋位に強制された際、上腕二頭筋関節唇複合体が腱板(肩のインナーマッスル)に挟まれる状態(インターナルインピンジ)になり、関節唇の剥離が生じます。

治療

基本的にはリハビリテーションによる保存加療で競技復帰できることがほとんどです。肩関節後方タイトネス(上腕三頭筋、小円筋の硬さ)の改善や肩甲骨の安定性、胸郭の柔軟性、股関節の柔軟性を高めていくことで、投球動作時の肩関節にかかる負担を減らしていきます。改善が乏しい場合はエコーガイド下での注射(ハイドロリリース)や体外衝撃波を用いて治療することもあります。

この記事を書いたスタッフ
医師
中島 駿
肩関節、膝関節、スポーツ整形外科を専門としています。ADLの改善、スポーツへの早期復帰のために、超音波(エコー)を用いて痛みや炎症部位を的確に把握し、同部位に注射等を行うことで即時の徐痛、パフォーマンスの改善を目指します。関節鏡視下手術は勿論のこと、リハビリテーション、体外衝撃波や再生医療等の選択肢も合わせて、患者様にとってベストな医療を提供するために日々精進しています。早期スポーツ復帰、痛みに悩まされない生活のためのサポートを全力でさせていただきますので、いつでもご相談下さい。