ATFL

前距腓靭帯損傷(ATFL)とは

足関節(足首)の捻挫(ねんざ)はありふれた外傷です。しかし、捻挫という診断は、ケガの本質を正確に反映しているとは限りません。捻って(ひねって)挫いた(くじいた)結果として、解剖学的にどの部品が傷ついたかを深掘りした診断名ではないからです。付け加えるなら、傷ついた部品の数も不明、傷ついた部品の重症度も不明です。ここでは、足関節の捻挫で傷つく部品のうち、代表的な外側靱帯損傷、中でも前距腓靭帯損傷(ATFL)の手術に絞って説明します。

手術を必要とするケース

どのスポーツ種目であっても、受傷直後で足関節の靱帯損傷だけなら、大抵はギプス・サポーター・テーピング・リハビリテーション等による保存療法が優先されます。保存療法を行なっても、慢性的に明確な関節不安定性が残っている場合は、手術の対象となります。当院では様々な手術方法を施行しています。第一選択は、ご本人の本来の靱帯を少ない侵襲で、種目特性に合わせて修復する手術です。再断裂などの病状によっては、インターナルブレース法(肘MCL参照)や膝の腱を利用した靭帯再建術を行います。

足関節の構造と解剖

足関節の不安定性と関節鏡視下手術

種目特性に合わせた手術(代表例)

バスケットボール・バレーボール

→ジャンプの着地や切り返しで安定した足関節にすることが重要
→足関節をしゃがみ姿勢とし、鏡視で靭帯の緊張を確認しながら縫合

バレエ・体操

→つま先立ち姿勢をしっかりできることが重要
→靭帯を若干緩めに縫合(「緩め」の程度はまだ手探り状態ですが)

サッカーの蹴り足

→様々な角度で生じる衝撃に耐える足関節にすることが重要
→バレエとは逆に、縫合糸を増やすなど縫合部の強度を優先