スポーツ別症例紹介

女子サッカー

女子サッカー選手の棘間靭帯由来腰痛に対するPRP治療

症例紹介

年齢:19歳
性別:女性
主訴:腰痛
診断名:腰椎椎間板ヘルニア

現病歴:
2025年4月頃から特に誘因なく腰痛出現
2025年4月19日 整形外科受診し腰椎椎間板ヘルニアと診断
2025年6月16日 日本体育大学クリニック・アレックス東京受診し、棘間靭帯にステロイド注射を施行し効果を認める
注射の効果を認めたため、PRP療法施行目的でアレックス脊椎クリニック受診
PRP療法の効果とメカニズム
PRP(多血小板血漿)療法は、腰椎椎間板ヘルニアや他の靭帯損傷でも疼痛の軽減や機能改善に有効とする報告が複数ある
PRP療法は、成長因子やサイトカイン(免疫細胞から分泌されるタンパク質で細胞間の情報伝達を行なう物質)を豊富に含み靭帯や腱の細胞増殖・コラーゲン産生・血管新生を促進し組織修復を加速することができる

また、他の保存療法で効果がなかった腰痛患者で超音波を使用し靭帯に対してPRP療法を施行し効果を認めた報告があったため今回の治療選択となった

画像所見

レントゲン:
MRI:第4腰椎 と第5腰椎の間の棘間靭帯(きょっかんじんたい)に高輝度変化(白く炎症反応がある様子)



 
【棘間靭帯の役割】
①腰部の安定性
背骨の後ろ側で棘突起(上下の出っ張った骨)を連結し背骨全体を安定するように支える
②屈曲(前かがみ)の制動
身体を屈曲させる動作の際に、ブレーキをかけ腰の過度な屈曲に対して制限をかける
【棘間靭帯の作用に関連する腰痛の原因】
①不良姿勢
長時間の猫背や前屈動作は、棘間靭帯を伸ばし続けるため棘間靭帯への負荷が増加し腰痛の原因となる場合がある
②過度な負荷
重い物を持ち上げたり、コンタクトスポーツでのコンタクト(接触)の際に、腰に衝撃が加わることで棘間靭帯に炎症や部分断裂が生じる場合がある
 

治療内容と経過

2025年6月30日 
・PRP1回目施行 左L4/5(椎間関節)棘間靭帯
・NRS(痛みのスケール・10が一番痛い)8/10
・主訴:起床時やランニング時の疼痛がある

2025年7月14日 
・PRP2回目施行 左L4/5(椎間関節)棘間靭帯 
・NRS 3/10
・主訴:起床時やランニング時の疼痛は大分軽減した
重い物を持つと疼痛が出る
ADL(日常生活)は問題なし

2025年7月28日 
リハビリ開始 
・NRS1/10
・主訴:長時間座っていると疼痛が出てくる NRS 6/10
リハビリ内容:椎間関節(背中側にある左右対になっている関節)の動きの改善
エクササイズ内容
3点腹筋
・頭頚部とお尻をあげて背中をおしながらゆっくり体をおろしていきます
(お腹意識下)  



体幹前傾ストレッチ
1.開脚し体を丸めながら前傾してストレッチ


2.足を延ばして背筋を伸ばして前傾してストレッチ

 

最後に

 今回は、女子サッカー選手の腰痛の原因が棘間靭帯にあると特定された。ステロイド注射により疼痛部位を確認しPRP療法を施行した結果、早期に疼痛軽減を認めた。
棘間靭帯は屈曲(まえかがみ)や伸展(反る)動作で負担がかかるため疼痛改善までに時間を要することがある。
今回の選手ではPRP療法が靭帯修復促進や炎症抑制作用を示したと考えられる。
以上のことから、スポーツ選手における棘間靭帯性腰痛に対してPRP療法が有効な選択肢となり得る可能性がある。
 PRP療法の効果は現時点では医学的に効果は認めていないものの、スポーツ選手には必須であるドーピングリスクが低い治療法として注目すべきである。