プロ野球選手のメディカルチェック

2024/10/29
#野球 #肘関節 #肩関節

メディカルチェックの目的

プロ野球球団の読売ジャイアンツではシーズンオフに全選手に対して包括的なメディカルチェックを実施しています。これは単なる健康診断ではなく、野球選手特有の身体評価やシーズンを通じて活動した選手の各関節の状態の評価を行い、来シーズンに向けた準備のために行います。

メディカルチェックの項目

  1. 整形外科的診察・検査
  2. 内科的検査
    ・血液検査
    ・尿検査
    ・心電図検査
  3. 身体組成評価
    ・体重
    ・除脂肪体重
    ・筋肉量
  4. 画像診断
    ・MRI検査
    ・レントゲン検査

プロ野球選手の身体への負担と怪我

  • 競技の開始と怪我:多くの選手が小中学生の時期から野球を開始して怪我の既往も様々
  • 高い試合負荷:年間143試合に加え、6〜9連戦など過密日程
  • 縦断的な負荷:プロ野球選手は、選手が試合や練習に1000回参加するごとに平均して3.61件の怪我が発生する(Posner et al, 2011)
プロ野球選手のケガの特徴

プロ野球選手の怪我には使用過多(オーバーユース)による慢性障害が多く発生します。特に肘関節・肩関節の怪我は多く発生します。
肘関節:アメリカのプロ野球選手では、2011年から2014年の間に3185件の肘の怪我が発生した(Ciccotti et al, 2017)
肩関節:アメリカのプロ野球選手では、2011年から2016年の間に3090件の肩の怪我が発生した(Fares et al, 2020)

1年でも長く活躍できる様に怪我の予防や治療が大切です。そのためにオフシーズンに全身の評価・身体の状態をチェックを行いシーズンを通じてプレーした状態を確認します。

メディカルチェックの必要性

シーズン中に痛みを訴えてきた際に受傷機転・理学所見・画像所見等を合わせて治療が必要な怪我なのか、治療が必要なら治療期間はどの位必要なのかを判断します。長いシーズンを乗り越えられるように、また、怪我をしても早期復帰を目指すためにシーズンオフの際に行う様々なメディカルチェックで得られたデータを活用しています。

画像検査を行うと障害を疑う所見があることがありますが、全てが治療対象になるわけではありません。その判断のために怪我をしていない時期の画像と比較することが重要になります。

画像所見の解釈

画像所見の解釈には実際に症状の原因がどの箇所なのか詳細に見ていく必要があります。

症例1: 無症候性の肘関節の遊離体

画像所見:肘関節内遊離体
臨床経過:症状なく投球継続可能
管理方針:定期的経過観察




 
症例2:肘関節の後方と関節内の遊離体
画像所見:後方の遊離体・関節内の遊離体
臨床症状:関節内の遊離体による症状
治療選択:関節内の遊離体に対する選択的介入
この記事を書いたスタッフ
医師
久保 貴敬
関節外科、スポーツ整形外科が専門です。股関節、肩関節、膝関節に力を入れています。超音波検査(エコー)を用いて、痛みや炎症部位を特定した注射処置など、より効果的な治療を目指しています。自らのスポーツ経験を活かし、早期復帰を目標に患者様と一緒に快方に向かうよう治療にあたるよう心掛けております。AR-Ex尾山台整形外科では、関節鏡手術を行っています。より良い診断、治療を提供できるよう日々精進しております。股関節、肩関節、膝関節を中心にお悩みの方は是非ご相談ください。
関連記事