前十字靭靭帯 ACL

Arthroscopic Surgery

前十字靭帯手術の特徴(術式)

どんな術式があるのか

前十字靭帯損傷を放置することにより、スポーツ活動の障害になるだけではなく、将来的に膝の骨が変形しやすくなってしまうことがわかっています。
スポーツ活動への復帰、膝の不安定感の改善、活動量の多い比較的若年者の方は、治療として手術が望ましいとされています。
手術は、元の前十字靭帯があった場所へ移植腱を固定することで、その機能を再度獲得することを目指します。

現在最も多く行われている手術は自身の太ももの腱(ハムストリング腱)を移植腱として使用する「2束再建術(STG)」と膝蓋腱を使用する「BTB再建術」の2種類があります。

健側と患側採取の違いはあるか

2束再建術(STG)の場合、ハムストリングスの筋力低下がみられ、BTB再建術の場合、大腿四頭筋の筋力低下がみられることが多いとされています。
そのため、早期の競技復帰を希望するアスリートの場合は、健側から移植腱の採取を行うことが推奨されています。

2束再建術(STG)について

2束再建術(STG)は手術侵襲が少なく、大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)の回復も早いとされています。
また、膝の回旋不安定性の改善にも良い影響があるとされています。
しかし、BTB再建術と比較すると強度が弱く、コンタクトスポーツを行っているアスリートは再断裂のリスクが高くなります。
また、ハムストリングスは膝を曲げる運動に作用するため、移植腱として採取すると膝の深屈曲域の筋力低下が生じる懸念があります。

BTB再建術について

BTB再建術のメリットは靭帯の強度が高いことが挙げられます。
そのため、アメフト、柔道など強い接触が求められる症例、複合靭帯損傷合併例、再再建術例が適応となります。
しかし、2束再建術(STG)と比較すると手術侵襲が多く、膝関節前面の疼痛が生じるリスクが高くなります。
また、BTB再建術では術後膝伸展筋力が落ちることが懸念されます。

 

手術時の麻酔

当院の前十字靭帯再建術では全身麻酔、脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔から患者様の状態に合わせて選択して行います。また、手術後の除痛目的で神経ブロック、i.v.PCA(経静脈的自己調整鎮痛法)を併用して行うこともあります。
どの麻酔方法を使用するかは麻酔科医と執刀医が相談し、患者様の手術内容や既往歴を含む健康状態を考慮して決定します。そのため、同じ手術内容であっても、麻酔方法が異なる事もあります。

アスリートの麻酔

当院では様々な競技のアスリートの方に手術を行っています。アスリートの方の手術では競技の種類を考慮して麻酔を選択しています。
通常の麻酔では術後疼痛緩和のために全身麻酔と硬膜外麻酔を併用することもあります。アスリートの方の場合は麻酔による侵襲(背中に針を刺すなど)を極力減らすため、あえて硬膜外麻酔は使用せずに全身麻酔と神経ブロックやi.v.PCAを併用して術後の疼痛緩和を行う場合があります。
麻酔方法に関しては執刀医へご相談ください。
 

i.v.PCA

点滴の様に容器内の中に入っている痛み止めが持続投与され患者様自身で疼痛を調節します。疼痛がある時に患者様自身でボタンを押すことで痛み止めが追加投与され、術後の疼痛緩和に繋がります。
誤って続けてボタンを押しても、安全装置により必要以上に投与されないようになっています。

神経ブロック

神経ブロックとは、超音波エコーを使用し手術部位周辺の神経に麻酔薬を注射する方法です。手術部位周囲の神経に麻酔薬を注射することで術後の疼痛緩和を目指します。
 
 
詳しい麻酔のことについてはこちらをご参照ください。