サッカーの膝のケガの種類
- ACL損傷
- 半月板損傷
- 内側側副靭帯損傷(外側側副靭帯損傷)
- PCL損傷
前十字靭帯(ACL)損傷
原因
荷重位で膝を内側に捻った時に起きます。大きく分けて原因は2つに分けられます。
接触型
外側からタックルを受けた際に受傷
非接触型
ジャンプの着地や切り返し動作で膝が内側に入った際に受傷
症状
急性期は膝関節内が腫れ、歩行困難になったり、膝の曲げ伸ばしが痛みでできなくなります。急性期が過ぎると、膝崩れ(giving way)や不安定感を感じるようになります。
診断
前方引き出しtest、Lachman test、Pivot Shift testなどで前方への不安定性を徒手検査でチェックします。損傷が疑わしければMRIで精査します。
治療
サッカーは切り返し動作が多く、ステップ動作に不可欠な前十字靭帯が機能していない状態でプレーすることは基本的にできません。炎症が落ち着き、可動域が戻った状態で手術(関節鏡視下前十字靭帯再建術)が必要になります。手術後はリハビリテーションを行い、8-9ヶ月を目安に復帰を目指します。
半月板損傷
原因
切り返し動作などの膝を回旋させる動作や、キック動作などの繰り返し動作による受傷が多いです。
症状
受傷直後は損傷した半月板部分の疼痛を認め、関節内に血腫がたまるケースが多いです。その後、切り返し動作時や運動後の膝痛、引っ掛かり感(caching)、クリック(click)、膝が固まるロッキングなどの症状が見られます。
診断
マックマレー(McMurray)検査等の疼痛誘発テストを行い、損傷部位のおおよその位置を特定し、MRIにて詳細な診断を行います。
治療
若年者ではスポーツ外傷による半月板の辺縁部(血流が良好な部位)の損傷が多く、関節鏡視下半月板縫合術を行うことが望ましいとされています。縫合術を行なった場合、競技復帰は4-6ヶ月程度を要します。断裂部位や断裂形態によっては保存療法を選択したり、関節鏡視下半月板部分切除術を施行したりすることもあります。
内側側副靭帯損傷
原因
荷重位で膝を内側に捻った時に起きます。大きく分けて原因は2つに分けられます。
接触型
外側からタックルを受けた際に受傷
非接触型
ジャンプの着地や切り返し動作で膝が外反強制された際に受傷
症状
歩行時の内側部痛、膝屈曲伸展時の内側部痛、外反ストレス時の疼痛を認めます。MCL損傷単独で膝関節に血腫が生じることはありません。重症例で血腫が生じている場合はACL損傷の合併や半月板損傷の合併を疑います。
診断
MCL付着部の圧痛の確認や外反ストレステストを行います。エコー検査、MRI検査で詳細な診断を行います。
治療
疼痛が強い場合は一時的に固定や松葉杖歩行を行い、歩行可能になれば支柱付きの装具を補助的に用いたりして早期より運動療法を開始します。単独損傷例では基本的に保存加療を行い、損傷の程度により1-3ヶ月程度でのスポーツ復帰を目指します。ACL、PCL損傷を合併している場合、外反ストレステストで不安定性が強い場合は手術適応となります。
後十時靭帯(PCL)損傷
原因
接触や転倒により、膝前面を正面から強打することで受傷します。
症状
受傷後すぐに疼痛により歩行困難になったり、膝の曲げ伸ばしで疼痛が生じます。また関節内血腫も生じます。その後、徐々に疼痛は改善し、日常生活は可能になり、スポーツも軽度の違和感は残ることもあるものの復帰できるケースが多いです。慢性期ではスポーツ後に違和感が生じたり、疼痛が生じることもあります。
診断
膝前面の後方への落ち込み(sagging)を確認し、後方引き出しテストによる後方不安定性を評価します。MRIにて詳細な診断を行います。
治療
基本的には保存加療を行います。可動域訓練、大腿四頭筋などの筋力強化を行い、膝の安定化を図ります。2-3ヶ月でのスポーツ復帰を目指します。3ヶ月の保存加療でも不安定性が残存したり、疼痛が残存した場合は、膝のハムストリングを用いた関節鏡視下後十時靭帯再建術を行います。術後は7-8ヶ月での競技復帰を目指します。
中島 駿