円板状半月板の再手術によりバレーボール復帰を果たした女子高校生

2017/08/01
#バレーボール #膝関節
理学療法士
竹内 大樹

患者紹介

半月板を縫合する手術を他院で行いましたが、スポーツ復帰に際して細かいリハビリの指導がなされずに、試合が迫っていたためバレーボールに復帰し、痛みが消えず、膝関節内の引っかかり感も再燃し当院で再手術となってしまったバレーボール選手です。                                

2015年7月にバレーボール練習中、ジャンプの着地をした際に膝を捻ってしまい左膝外側半月板損傷を受傷しました。その後、断裂してしまった半月板を縫合する手術を8月下旬に他院で施行しました。退院後は細かいリハビリの指導がなかったのですが、大会も迫ってきたため徐々に練習を開始していったようです。その結果、復帰してからも痛みや関節内の引っかかり感が消えることはなく次第に日常生活においても痛みが出てきたため都立大整形外科クリニックを受診されました。当院ではMRI検査結果から左膝外側半月板損傷を認め、再度手術を行いました。                                                    

最後の大会には必ず出たいという強い希望もあり、1回目の術後のような再度の失敗は許されないことと再手術ということで慎重に術後のリハビリを進めました。患者さんも復帰したいという強い気持ちがあり無事に高校生活最後の大会に痛みもなく最高なパフォーマンスを発揮し出場することができました。

患者データ

性別:女性 

年齢:16歳(高校生)

スポーツ:バレーボール(ポジション:セッター)                                                    競技歴:5年目                                                                    練習頻度:週5日、1日3~4時間                                                            

診断名:左膝円板状半月板術後、左膝外側半月板損傷

術式:鏡視下左膝外側半月板部分切除術

現病歴:2015年7月にバレーボール練習中、ジャンプの着地をした際に膝を捻ってしまい左膝外側半月板損傷を受傷しました。当初は膝ロッキング現象(半月板が関節の中で捲れ上がってしまい、関節の空間がなくなり膝がロックしてしまう現象)が出現しておりました。その後、断裂してしまった半月板を縫合する手術を8月下旬に他院で施行しました。退院後、細かいリハビリの指導がなく、大会も迫ってきたため徐々に練習を開始した結果、復帰してからも痛みや関節内の引っかかり感が消えることはなく次第に日常生活においても痛みが出てきたため都立大整形外科クリニックを受診されました。当院ではMRI検査結果から左膝外側半月板損傷を認め、2016年9月16日再度手術を行いました。

手術前と手術後のデータ

理学所見

手術前 手術後4か月
関節可動域 屈曲 150° 160°
伸展 -10°
整形外科的テスト Catching sensation 陽性 陰性
Mcmurray test IR 陽性 陰性
圧痛 外側半月板前節 陽性 陰性
外側半月板中節 陽性 陰性
スコア Lysholm score 100点/100点
IKDC 89.6点/100点
KOOS

その他

手術前 手術後6か月
筋力検査(BIODEX) WBI
Quad患健比
Ham患健比

画像所見

レントゲン所見

手術前 手術後
明らかな変形などの病変なし

術後の変形などはなく術前と変化なし

MRI所見

手術前 手術後
関節水腫、骨髄浮腫を認める 術前認めた水腫などの所見はなし

手術

滑膜増生を認める 大腿骨の軟骨損傷に対して処置 前回手術の半月板縫合糸と半月板断裂、滑膜増生

執刀医より

この患者さんは外側半月板の前方が断裂しておりました。これは、元々膝関節が緩い人が、膝を伸ばしきった際に傷つくことがあります。また、膝を伸ばしきった際に断裂した部分が挟み込まれたり、直上の軟骨を傷めたりして痛みが取れない場合が多いです。

術前から膝関節の緩さなど患者さんの身体特性を担当理学療法士やトレーナーとチェックしながら進めました。

半月板の部分切除術を行った場合、二次的に軟骨が損傷していく可能性が増すため、出来る限りきちんと断裂した部分を縫合しました。

完全復帰ができ、とても良かったと思います。今後も、再受傷しないように予防的なトレーニングが重要だと思います。

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リハビリテーション

膝関節ROM-Ex
膝関節可動域を広げ、左右差をなくすことを目的とします。       写真は屈曲(曲げる方向)の可動域練習ですが伸展(伸ばす方向)も重点的に行いました。伸展可動域を確保することで筋力向上にも寄与します。

担当理学療法士より

再手術ということもあり慎重にリハビリテーションを行いました。特に重要視したのが膝関節の伸展可動域を早期に改善させるということでした。伸展可動域が制限されていることにより大腿四頭筋(太腿の筋肉)の筋力が上がってきませんし、スポーツパフォーマンスには大きな影響を与えてしまいます。また、バレーボールはボールを取る際やジャンプをする直前に膝を深く曲げるというスポーツ特性があります。その時、膝が内側に入るKnee in(ニー・イン)という姿勢を取ってしまうと外側半月板に大きなストレスがかかります。この姿勢を取らないためのポイントは股関節と言われています。                                 今回紹介させていただいている患者さんもこのような姿勢を取ってしまうため、伸展可動域を獲得することと並んで股関節に対する柔軟性向上、筋力強化、体幹筋力の強化も重点項目としてリハビリテーションを実施いたしました。 無事に最後の大会も出場でき良かったです。

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アスレティックリハビリテーション

担当トレーナーより

術後は体重を反対足にかけていたため、手術した膝が外反(X脚の状態)となっていました。この状態では膝の外側に圧迫ストレスが大きくなり、外側半月板に負荷が大きくかかってしまいます。そのため、ニュートラル(正常な位置)で体重をかけていくことから始めました。

トレーニング開始時はスクワットで膝が内側に入るため、膝にねじれるストレスや膝の外側に圧迫ストレスが大きくなっている動作でした。そのため股関節のトレーニングを重点的に行って改善していきました。

半月板の術後は急激に負荷をあげてしまうと痛みが出るリスクが高くなってしまいます。そのため、トレーニング時は膝の動きに注意し、レシーブやトスなどの動作を確認しながら段階的に負荷をあげていきました。競技に無事復帰でき、部活動を引退されましたが、今後も楽しくスポーツを続けられることをお祈り致します。

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バレーボール復帰状況

お問い合わせ

同じような怪我や症状で悩まれている方や診察を希望される方は、下記までお問い合わせください。

インフォメーションセンター:0267₋88-7850

メール:toritsudai@ar-ex.jp

この記事を書いたスタッフ
理学療法士
竹内 大樹
関節鏡視下手術を中心とした関節外科疾患とスポーツ障害を中心に日々、選手ならびに患者さんの治療を行っています。トップアスリートから地域のスポーツ少年、小児からお年寄りまで、スポーツレベルや年齢問わず幅広く対応しております。すべての人々にそれぞれ適した治療方針を模索しながらリハビリテーションの提供をしています。また、アレックスではリサーチ部門に在籍し研究活動と外来治療を行っています。
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