腰椎椎間板ヘルニア
この症例の概要
症例サマリー
- 年齢:10代
- 性別:男性
- スポーツ:野球
- きっかけ:明らかなきっかけはなく腰痛発症、その後走っている時に左臀部~下肢後面痛と痺れが出現した
- 診断名:腰椎椎間板ヘルニア(左L5/S1)
- 実施手術:全内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術(FED法)
- 入院期間:3泊4日(FED法の目安)
- スポーツ復帰:術後1か月は腰部動作禁止のためスポーツ動作禁止
リハビリテーションで股関節や肩甲骨などの可動性をだすトレーニングや腰部動作を伴わない腹筋群や背筋群の筋力トレーニングを行っていく。
術後1カ月以降は段階的に練習に復帰し、リハビリテーション時では投球動作や捕球動作、動作時の姿勢などを確認し腰部痛や下肢痛の確認をしていく。この症例に関しては術後3か月で完全に練習復帰している
腰椎椎間板ヘルニアとは?
椎間板は背骨(椎体)と椎体の間でクッションの役割を担う組織です。加齢や負担の蓄積、外傷などをきっかけに椎間板が傷つくと、内部の髄核が外へ飛び出し、神経を圧迫して痛みやしびれが出ることがあります。これが「腰椎椎間板ヘルニア」です。
代表的な症状
- 腰痛に加えて、お尻〜太もも〜ふくらはぎにかけての痛み/しびれ(坐骨神経痛)
- 前かがみや長時間の座位で悪化しやすい
- 重症例では筋力低下や感覚障害が出ることがある
治療の考え方
多くの場合は内服・注射・リハビリなどの保存療法で改善を目指します。一方で、強い神経症状が続く場合や、日常生活・競技活動に大きな支障がある場合には手術を検討します。
この患者さんが困っていたこと
- 日常生活の動作(前かがみ動作など)で痛みが強くなっていた。
- 走っている時に左臀部〜下肢後面の痛み・しびれが出現し、運動時だけでなく普段の生活でも症状が気になっていた。
- 部活動(野球)に支障が出ており、「できるだけ早く競技へ復帰したい」という希望が強かった。
検査と診断
実施した検査
レントゲン:明らかな異常なし

MRI:L4/5/仙骨間のヘルニアを認める

CT:ヘルニアの石灰化なし
医師の一言解説
「MRIで、L5/S1レベル左側の椎間板ヘルニアが確認でき、左S1神経根の圧迫が疑われる所見でした。症状(左臀部〜下肢後面の痛み・しびれ)とも整合しており、画像所見と臨床症状を合わせて腰椎椎間板ヘルニアと診断しました。CTでは石灰化を認めず、内視鏡下での摘出が行いやすいタイプと判断できました。レントゲンでは不安定性を示す所見は明確ではなく、主な原因は神経圧迫による症状と考えられました。」
手術が必要になった理由(症状と治療の経緯)
この患者さんは、明らかなきっかけはなく腰痛発症、その後走っている時に左臀部~下肢後面痛と痺れが出現しました。
保存療法(内服・リハビリ)を行っても症状が強く、部活動だけではなく日常生活でも前傾動作などで支障がありました。
画像検査(MRI)でL5/S1レベルの左椎間板ヘルニアを認め、左S1神経根の圧迫が示唆されました。
腰部痛と下肢痛の経過は半年以上で、野球への復帰希望が強く、早期の疼痛軽減と神経圧迫の解除が必要と判断し、手術治療を選択しました。
手術の内容
- 実施した手術:全内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術(FED法)
FED法は、皮膚切開が小さく(7〜8mm程度)、内視鏡(カメラ)を用いて神経を圧迫しているヘルニアを摘出する低侵襲手術です。
本症例では、ヘルニアの位置と神経圧迫の状況から、椎弓間(IL)アプローチでヘルニア摘出を行いました。
手術の流れ
- 画像(MRIなど)でヘルニアの位置と神経圧迫の状態を確認し、術式と進入路を計画します。
- 全身麻酔下に手術を行います。
- 7〜8mm程度の小切開から内視鏡と手術器具を挿入し、神経周囲を安全に確認します。
- 神経を圧迫している椎間板ヘルニアを摘出し、圧迫解除を確認します。
- 止血を確認し、創部を閉鎖して終了です。
手術後の経過とリハビリ
術後の流れ
術後〜1か月:腰部の動作は禁止期間とし、スポーツ動作(投球・捕球・走塁など)も禁止します。
この期間は、再発予防と早期回復を目的に、リハビリテーションで股関節や肩甲骨など腰部以外の可動性を高めるトレーニングと、腰部動作を伴わない腹筋群・背筋群の筋力トレーニングを行います。
術後1か月以降:状態を確認しながら、段階的に練習へ復帰します。
リハビリテーションでは、投球動作・捕球動作や、動作時の姿勢(フォーム)を確認し、腰部痛・下肢痛の再燃がないかを評価しながら復帰プログラムを調整します。
完全復帰の目安(本症例):この症例では、術後3か月で完全に練習復帰しています。
医師からのコメント
腰椎椎間板ヘルニアは多くが保存療法で改善しますが、強い痛みが続き、日常生活やスポーツ活動に大きな支障がある場合は、低侵襲手術により早期の症状改善が期待できます。
当グループでは、手術の適応を慎重に見極めたうえで、術後のリハビリと再発予防まで一貫してサポートし、患者さんの「完全復帰」を目指します。