腰部脊柱管狭窄症
この症例の概要
症例サマリー
- 年齢:80代
- 性別:女性
- 生活背景:フィットネスクラブでの運動(エアロビ・水泳・水中歩行等)を継続したい
- きっかけ:転倒による右臀部打撲後に右下肢痛・しびれが出現。当院受診しブロック注射とリハビリテーションを行い一度軽快したが誘因なく再燃した
- 主訴:右臀部〜大腿外側〜下腿にかけてのしびれを伴う痛み/歩行で増悪、間欠性跛行症状
- 診断名:腰部脊柱管狭窄症(右L4/5)
- 実施手術:内視鏡下椎弓切除形成術(MEL法)
- 入院期間:4泊5日(MEL法の目安)
運動復帰(目安)
- 術後1か月:腰部動作禁止期間のため、スポーツ動作・高負荷運動は避ける
- リハビリでは、股関節・肩甲骨などの可動性改善と、腰部動作を伴わない腹筋群・背筋群の筋力トレーニングを実施
- 術後1か月以降:段階的に運動(エアロビ/水泳/水中歩行など)へ復帰
- リハビリでは、それらの動作や日常生活動作を確認しながら、腰部痛・下肢痛の再燃がないかを評価し復帰プログラムを調整
- この症例に関しては術後3か月で運動を完全に再開した(完全復帰)
腰部脊柱管狭窄症とは?
脊柱管狭窄症は、神経の通り道(脊柱管)が加齢変化などで狭くなり、神経が圧迫されて症状が出る状態です。腰では、歩くと下肢が痛くなり、休むと楽になる間欠性跛行が典型です。
代表的な症状
- お尻〜太もも〜すねにかけての痛み・しびれ
- 歩行や立位で悪化しやすく、休憩で軽快
- 症状が強いと日常生活(買い物・外出など)に支障
治療の考え方
まずは内服、注射、リハビリなど保存療法を行います。強い痛みや歩行障害が続く場合は、神経の圧迫を解除する手術を検討します。
この患者さんが困っていたこと
- 右臀部〜下肢の痛み・しびれがあり、長く歩くことが難しい(間欠性跛行)
- 日によっては症状が強く、日常生活が困難になるほどの下肢痛が出現
- フィットネス活動(運動習慣)を続けたいが、痛みで継続が難しく「できるだけ動ける状態に戻したい」希望が強かった
検査と診断
実施した検査
レントゲン:変性側弯を認める。椎体すべりは認めない

MRI:右L4/5レベルで狭窄所見を認める

CT:中等度の骨性狭窄を認める
医師の一言解説
「症状(右臀部〜下肢の痛み・しびれ、歩行で増悪し休憩で軽快する間欠性跛行様症状)から、腰部で神経が圧迫されている可能性を疑いました。MRIでは右L4/5レベルで狭窄所見があり、訴えと整合していました。CTでは中等度の骨性狭窄を認め、骨性要素による圧迫が関与していると考えられました。XPでは変性側弯を認めた一方で、椎体すべりは認めず、明らかな不安定性を示す所見は乏しいため、本症例の主因は“狭窄による神経圧迫”と判断し、治療方針を検討しました。」
手術が必要になった理由(症状と治療の経緯)
転倒後に右下肢の痛み・しびれが出現し、ブロック注射とリハビリテーションを行い一度軽快したが誘因なく再燃しました。MRI検査を行ったところL4/5の狭窄を認めました。以前から歩行で増悪する症状が目立ち、日によっては日常生活が困難になるほどの右下肢痛あり、症状が長期化し生活・活動性の低下が大きかったため、神経圧迫を解除して疼痛軽減と歩行機能の改善を図る目的で手術治療を選択しました。
手術の内容
実施した手術:内視鏡下椎弓切除形成術(MEL法)
MEL法は内視鏡を用いて、神経を圧迫している部分(骨・靱帯など)を必要最小限に除圧し、神経の通り道を広げる低侵襲手術です。
手術の流れ
- MRI/CTで狭窄部位と神経圧迫の状態を確認し、除圧範囲を計画
- 麻酔下に手術を実施
- 小切開から内視鏡と器具を挿入し、神経周囲を確認
- 神経を圧迫している要素を除去し、除圧を確認
- 止血確認後、創部を閉鎖して終了
手術後の経過とリハビリ
術後の流れ
- 術後〜1か月:腰部動作禁止期間として、スポーツ動作・高負荷運動は避けます
- リハビリテーションでは、股関節・肩甲骨など腰部以外の可動性を高める練習と、腰部動作を伴わない腹筋群・背筋群の筋力トレーニングを行います
- 術後1か月以降:状態を確認しながら、段階的に運動(エアロビクス/水泳/水中歩行など)へ復帰
- リハビリ時に運動動作と日常生活動作を確認し、腰部痛・下肢痛の再燃がないか評価しながら負荷量を調整します
- 完全復帰の目安(本症例):この症例では、術後3か月で完全に練習復帰しています。
医師からのコメント
腰部脊柱管狭窄症は、保存療法で症状が落ち着くことも多い一方で、歩行障害や強い下肢痛が続き、生活に大きな支障が出る場合があります。
当グループでは、画像所見(MRI・CT・レントゲン)と症状の整合性、経過、生活背景を丁寧に評価したうえで、低侵襲手術と術後リハビリを組み合わせ、痛みの改善だけでなく「動ける状態への回復」を目指して一貫してサポートします。