2019年7月6日（土）・7日（日）に名古屋のウインクあいちで開催された，第31回 日本整形外科超音波学会において当院柔道整復師・日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーの小林由弥，理学療法士の田中亜吏紗，兼岩淳平の3名が口述発表を行いました．ここからはそれぞれの発表内容とそれぞれのコメントを以下に掲載いたします．
 

〇『超音波診断装置を用いた膝蓋下脂肪体評価の再現性の検討』
柔道整復師・日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー　小林　由弥

膝蓋下脂肪体は，膝前面に存在するクッションのような組織です．
膝の動きに合わせて形を変化させて，関節の中の圧調整を行うなどの機能があると言われています．
当院では，前十字靭帯損傷，半月板損傷のような疾患に対して関節鏡を用いて手術を行なっています．その際に膝蓋下脂肪体は手術の影響を受けることで術後に組織が硬くなったり，腫れたりすることがあると報告されています．

また，膝蓋下脂肪体は痛みを感じやすい組織とも言われているため術後リハビリや日常生活動作での『膝前面の痛み』を引き起こす要因として考えられています．
しかしながら，膝蓋下脂肪体を評価するにあたりMRI等の検査は高額かつ検査に予約が必要なため検査までに時間がかかることから簡便に行えるとは言いがたいです．そのため今回，より簡便かつ患者さん負担が少ない超音波診断装置を用いて膝蓋下脂肪体の評価ができないかと考え，その方法の再現性（誰でも同じように評価ができるか）の検討を行いました．
結果は，検討した評価方法を使用すれば誰でも簡便かつ同じように膝蓋下脂肪体を評価できることがわかりました．
今回の学会発表を通して，多くの先生方からいただいたご助言，質問を踏まえて評価のブラッシュアップを行い，今後の治療に生かしていきたいと思います．
 

〇『関節鏡視下前十字靭帯再建術後の拘縮例における膝蓋下脂肪体の形態についての検討』
理学療法士　田中亜吏紗

前十字靭帯が損傷してしまうと，日常生活やスポーツ時に膝崩れや膝関節の不安定感などが生じます．この靭帯の治療方法は保存療法と手術療法がありますが，保存療法を選択すると膝関節の変形の進行が早まり，人工関節置換術に至る確率が高くなることから，多くの場合は手術療法が実施されます．
手術療法後のリハビリを行う上で，膝を曲げたり伸ばしたりする際，「膝の前が痛い」と訴える方を多く経験します．膝蓋下脂肪体（お皿の下には痛みを感じやすい脂肪）が存在しますが，私は，手術後で膝の曲げ伸ばしが出来にくい方やその際に膝の前が痛くなる方は膝蓋下脂肪体が硬くなったり腫れたりすることが1つ要因であると考えています．

そのため今回，超音波診断画像装置を用いて，膝の曲げ伸ばしの際に膝蓋下脂肪体がどのように動いているかを検討しました．
結果，手術後の方は，膝蓋下脂肪体が腫れており，なおかつ膝の曲げ伸ばしが出来にくい人は，より腫れているという事がわかりました．今回，このような学会に参加し発表することで，様々な先生方とディスカッションし多くのことを得ることができました．今回得られたことは，実際の治療に活かし，より良い治療ができるよう精進してまいります．
 

〇『超音波画像診断装置を用いたretrocalcaneal wedge part移動量信頼性についての検討』
理学療法士　兼岩淳平

アキレス腱のすぐ深層（奥）にはアキレス腱下脂肪体といわれる脂肪の塊があります．このアキレス腱下脂肪体が硬くなると足首の動く角度が小さくなったり，痛みを発したりすると報告があり，アキレス腱付近の痛みがある患者さんにとってはよく治療対象となります．
しかし，このアキレス腱下脂肪体はどのように動くのか，どの程度動くのかは明らかとなっておりません．そこで我々はその動きを明らかにしたいと考えています．そのためには多くの被検者が必要となり，一人で計測するのは限界があります．そこで今回は誰が何回撮っても同じように撮れる方法を明らかにしました．
これにより今までは見えない組織を予想しながら動かし，なんとなく良くなっていると感じていた治療の結果がより明確に目に見えるものに変えることができると考えています．
今後も引き続き研究を続けていき，より良い治療を提供できるように精進してまいります．


来年度以降も当院・当法人からこの学会で発表し，そこで学んだ知識を日々の治療に活かし，患者様へ還元できるようにスタッフ一同精進してまいります．

最後までお読みいただきありがとうございました．