第36回東京都理学療法学術大会「手術適応である小児の左両前腕骨骨幹部骨折に対して保存療法が有効であった一例」についての発表報告
6月20日に開催された第36回東京都理学療法学術大会で両前腕骨骨折の小児患者に対し保存療法(手術をしない方法)を実施した症例について報告を行いました。
小児の両前腕骨骨折は、肘の動きに制限が残ることや再骨折のリスクがあることから主に手術療法が選択されます。手術の適応は骨折の変形によって判断します。
今回発表した症例は、手術療法と保存療法の境界例でしたが、医師と本人ご家族と話し合い、保存療法を選択し実施することになりました。
治療は骨折の治癒を促すために患部を安静に保つことが重要になりますが、患者は学校生活やスポーツ活動など活発に体を動かす時期であること、成長過程であり理解や判断力は成人と比べ十分ではないことから患部を保護することが困難だと考え介入方法を工夫しました。
工夫した点は、心理学者ピアジェが唱えた子供の発達段階説を参考に患者の理解力を考慮しながら日常生活での注意点を具体的に説明し指導したことです。また、骨折の治癒過程を妨げないよう医師の指示を確認しながらリハビリテーションの時期を安静期、移行期、荷重練習期に分け治療を実施しました。その結果、受傷後3ヶ月で手術療法の成績と同等な治癒経過が得られ、再骨折することなく受傷前のスポーツ活動に復帰することができました。
今回の発表を通して改めて小児骨折の病態や、小児骨折に対するリハビリテーションを見直すことができました。また、より良いリハビリテーションを行うためには常に最新の知見に触れ様々な選択肢を持ってリハビリテーションを行うことが重要だと感じました。 これからも、日々学び続け患者にとって最良のリハビリテーションを行うことができるよう努めたいと思います。