スポーツ外傷・障害の診断と治療・リハビリ・予防 研修報告
5月26日に宮城県仙台市で行われた「スポーツ外傷・障害の診断と治療・リハビリ・予防」の勉強会に参加しました。
講義内容
・鼠径部痛症候群(グロインぺイン)
・肉離れ
・ウロキナーゼによる血腫溶解穿刺療法
・膝蓋大腿関節軟骨損傷
・前十字靭帯損傷・後十字靭帯損傷の保存的治療
・打撲・ねんざの初期治療
鼠径部痛症候群(グロインペイン)について
鼠径部(股関節の前側)の痛みは股関節だけの問題で起こるものではありません。
鼠径部痛の予防・改善で特に重要なものが「肋骨の動き」と「腹圧」です。腹圧とは、横隔膜、腹筋、背筋、骨盤底筋から形成される腹腔内圧のことです。腹圧をコントロールできるようになると骨盤の可動性が上がり、鼠径部痛を回避することができます。
腹圧を高めるには肋骨の動きが重要になります。肋骨の動きは全身の機能に影響を受けます。つまり身体全身に機能不全があれば、肋骨の動きが低下し、腹腔内圧のコントロールが困難になり、鼠径部痛を引き起こします。そのため鼠径部痛に対しては全身の機能に対する治療アプローチが大切です。
肋骨の動きに注意しながら腹圧を高めるトレーニング例
肉離れについて
ハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)を使う際に、大殿筋(お尻の筋肉)を先に筋収縮できるかが肉離れを予防する上で大切です。肉離れをしたことがある人、しやすい傾向のある人は動作時にハムストリングス→大殿筋の順に筋肉が収縮します。これでは肉離れのリスクが高まります。そのため予防の一つとして大殿筋→ハムストリングスの順に筋収縮を入れられるように身体に学習させる必要があります。
大殿筋→ハムストリングスの順に筋収縮をしているかを評価
捻挫初期治療について
捻挫の初期治療としては「挙上(足を心臓より高い位置に挙げる)」ことが大切です。捻挫の初期治療としては今まで「RICE(安静・冷やす・圧迫・挙上)」という考え方が一般的でした。しかし最近では「EPG(挙上・足首を動かす・揉む)」という考え方が新しく出てきています。つまり必ずしも安静にすることが優先的ではないということです。痛みが出ない範囲で足を動かしたり体重をかけていくことが早期社会復帰やスポーツ復帰につながります。
足を挙上したり、痛みのない範囲で曲げ伸ばしすることで腫れやむくみを予防・改善します
股関節の痛みや肉離れ、捻挫は日頃の臨床でも多く経験する疾患です。今回の講義・実技を受けたことで、治療に対する新たな視点を身につけることができました。特に腹圧を高めるトレーニングは股関節の痛みのみならず、腰痛をはじめとした脊椎疾患にも応用できます。今回得た知識や技術をスタッフ同士で共有し、患者さんによりよい理学療法を提供できるよう努めていきます。
佐久平整形外科クリニック
理学療法士 依田 好平