自信のつく肉眼解剖学 ~基礎から学ぶ下腿・足関節~ 参加報告
愛知県名古屋市で開催された「自信のつく肉眼解剖学基礎から学ぶ ~下腿・足関節~」に参加致しました。
開催日程:2017年8月27日(日)
会場:国際医療技術専門学校 理学療法学科
講師:荒川 高光先生(神戸大学大学院)
講義内容
・足関節・足部の解剖学
・足関節捻挫の靭帯修復過程
・オスグッド・シュラッター病とシンスプリントの病態
スポーツに関連した足関節・足部疾患の患者さんは多く来院されます。
足関節・足部疾患の解剖学、最新の研究成果を学び、臨床で患者さんの治療にどう活かすか?という点について考えました。
解剖学も日々、最新の研究結果が出ています。
・足関節・足部の解剖
足の外傷で足関節捻挫は多い怪我です。
捻挫は内反捻挫と外反捻挫があります。
内反捻挫:足首を内側へ捻る捻挫 外反捻挫:足首を外側へ捻る捻挫
内反捻挫の方が多く起きています。なぜ内反捻挫が多いでしょうか?
ヒトの足関節は内側への動揺性が大きい構造をしています。
加えて、底屈位(足が下に下がる)のとき内側への動揺性が大きくなります。
この構造は距骨(きょこつ)という足首を構成する骨の構造が影響しています。
距骨(きょこつ)は前が広く、後ろは狭い形態をしています(図1)。
前が広いため底屈位(足が下に下がる)の方が関節の可動性が大きくなり、内反捻挫が起きやすくなります。
図1.距骨(きょこつ)の形態
・足関節捻挫の靭帯修復過程
靭帯は骨どうしをつなぎ関節を安定させる役割があります。
関節に外力が加わり捻挫をした時に靭帯を傷つけてしまいます。
靭帯が傷ついている状態を「靭帯損傷」と言います。
骨から靭帯と骨をつなぐ細胞(骨芽細胞)ができて、細胞が働き靭帯を修復します。
「捻挫はくせになる」とよく耳にすると思います。
捻挫をして固定をしないと靭帯が修復できないうちに関節に負荷をかけることになります。
靭帯の強度が弱ければ関節が不安定になり捻挫を繰り返す原因になります。
・オスグッド・シュラッター病とシンスプリントの病態
ヒトの骨の成長は軟骨が硬い骨に置き換わり成長します。
骨が成長している時期に筋肉が硬い状態で運動を続けると筋肉に軟骨が引っ張られるストレスを受けます。
そのまま運動を継続していると骨膜(骨表面の膜)の炎症が起き悪化すると軟骨剥離(軟骨が剥がれる)が起きます。
これらの代表的な疾患に以下のものがあります。
オスグッド・シュラッター病:太ももの前側の筋肉が付着している膝のお皿の下が突出し痛む疾患です。
10歳~15歳の跳躍・ボールを蹴るスポーツを行う成長期の子どもに多く発症する疾患です。
シンスプリント:足首や足趾を動かす筋肉が付着しているすねの内側が痛む疾患のです。
ランニングやダッシュを繰り返すスポーツを行っている人に多く発症します。
大人は硬い骨に置き換わっているためどちらとも成長期に多い疾患です。
近年の研究では膝下やすねの内側にはさまざまな筋肉が付着することが分かってきています。
個人差があるため人により硬くなっている原因の筋肉は異なります。
今回の研修に参加して今まで臨床で疑問に感じていたことと解剖に結びつきがありました。
病態の原因を一つに特定できない疾患に対しては、その部位には解剖学的になにが存在(付着)するのか?組織の機能は何か?を考えることが大切であることが改めて分かりました。
基礎の解剖学を改めて学ぶだけでも多くの気づきがありました。
基礎の解剖をしっかり復習し患者さんの治療を行っていきます。