手指関節靭帯損傷
症状
手指関節靭帯損傷(しゅしかんせつじんたいそんしょう)は、主に「突き指」として日常的によく見られる怪我ですが、指の第一関節(DIP関節)や第二関節(PIP関節)といった指の重要な関節の安定性を保つ靭帯が傷ついた状態を指します。単なる打撲と軽視されがちですが、靭帯の損傷の程度によっては関節が不安定になり、将来的に指の機能に大きな影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。正確な診断と適切な初期治療が、指の機能回復への鍵となります。
具体的な症状は、損傷の重さによって異なりますが、主に以下の点が挙げられます。
- 強い痛みと腫れ:怪我をした直後から、関節の周りに激しい痛みが起こり、内出血を伴う腫れ(炎症)が生じます。
- 指の動かしにくさ(動作時痛):患部を動かすと痛みが強くなるため、指を十分に曲げたり伸ばしたりすることが難しくなります。これにより、日常生活の細かい作業(文字を書く、物をつまむなど)に支障が出ます。
- 関節の不安定さ(ぐらつき):靭帯が完全に断裂してしまった場合、指の関節が横方向に不安定になったり、異常な方向に曲がったりする感覚を覚えることがあります。
- 慢性的な症状や変形:初期の治療が遅れたり、不完全だったりすると、関節の組織が硬くなる「拘縮」が起こり、指の動きが恒久的に制限されることがあります。また、慢性的な痛みが残ったり、関節が変形してしまったりするリスクも高まります。
これらの症状がある場合、骨折が隠れていたり、関節の安定性に重大な問題が残ったりすることがあります。指に痛みや腫れを感じたら、「たかが突き指」と自己判断せずに、医療機関を受診することをおすすめします。
原因
手指関節靭帯損傷の主な原因は、指の関節が本来動く範囲を超えて、強制的に過剰な力が加わることです。特にスポーツ活動中に発生することが多く、不意な転倒や事故によっても起こります。この外力により、関節を支えている靭帯が引き伸ばされたり、部分的に、あるいは完全に断裂してしまいます。
具体的な原因となる状況には、以下のようなものがあります。
- 突き指などの瞬間的な衝撃:球技スポーツなどで、指先に強い衝撃が加わることで、指が不自然な方向に曲がったりねじれたりします。この結果、関節の側面を支えている側副靭帯が損傷します。
- 指の過度な反り返り:転倒した際に手のひらをついたり、強いボールが手のひら側に当たったりして、指が手の甲側へ大きく反り返るような力が加わります。この力によって、指の関節の前面にある掌側板という靭帯組織が傷ついたり断裂したりします。
- 骨を伴う損傷(剥離骨折):非常に強い外力がかかった場合、靭帯そのものが切れるだけでなく、靭帯が骨に付着している場所の骨の一部が、靭帯に引っ張られて一緒に剥がれてしまう剥離骨折を伴うことがあります。剥離骨折は、靭帯損傷の治療をより複雑にし、早期に正確な診断が必要です。
指の靭帯損傷は、単なる打撲とは違い、関節の安定性そのものに関わるため、発生直後の正確な処置と診断が、後の指の機能に大きく影響することを理解しておく必要があります。
診断
手指関節靭帯損傷を適切に治療するためには、損傷の程度、骨折の有無、そして関節の不安定性がどの程度かを詳しく調べる正確な診断が非常に大切です。
まず、医師が患者様から、いつ、どのように怪我をしたのか、現在の痛みや動かしにくさといった症状を詳しくお聞きします。次に、専門医が指の関節を注意深く観察し、触って確認(診察)します。この診察では、痛む場所(圧痛)や腫れの様子、指の動く範囲、そして靭帯にゆるみ(不安定性)がないかを手で動かしながら慎重に評価します。
治療方針を決める上で、骨の損傷がないかを確認するための画像検査は欠かせません。
- 問診と診察:痛みや腫れの場所、指の動く範囲、靭帯のぐらつきの有無を確認することで、損傷の重症度や種類を把握します。
- X線(レントゲン)検査:骨折や、靭帯が骨を引っ張って起こる剥離骨折の有無を調べます。骨の合併症の有無を確認し、保存療法で治せるか、手術が必要かといった治療の方向性を決めるために重要です。
- 超音波(エコー)検査:レントゲンでは写らない、靭帯そのものの断裂がどの程度であるかや、周囲のやわらかい組織の状態を詳しく確認できます。これにより、より精密な損傷レベルを特定できます。
特に指の関節は複雑な構造をしているため、初期段階で骨折や靭帯の完全断裂を見逃さないことが、その後のリハビリテーションや機能回復の成否を左右します。当グループでは、これらの検査を組み合わせ、患者様一人ひとりの損傷状態を正確に把握します。
治療
手指関節靭帯損傷の治療は、靭帯の損傷の重さや、それによって引き起こされている関節の不安定性に応じて選択されます。治療の主な目的は、傷ついた靭帯を回復させ、指の関節の安定性を取り戻し、日常生活に支障のない指の機能を取り戻すことです。重度の不安定性や骨折がない限り、多くは「保存的治療」を中心に行われます。
当グループで提供される治療法には、以下のものがあります。
- 安静と固定(保存療法):損傷した靭帯が無理なく治るように、受傷後の炎症が強い時期には、装具やテーピング、あるいは軽いギプスなどを使用して関節を安定した状態に保ち、安静を確保します。多くの場合、靭帯の治癒が見込めます。
- リハビリテーション:痛みが軽減し、医師の許可が得られた段階で、関節が硬くなる状態(拘縮)を防ぐために、専門スタッフによる運動指導やリハビリを始めます。指の曲げ伸ばしの動きや筋力を回復させ、将来的な機能障害を防ぐためにとても大切なステップです。
- PRP(多血小板血漿)治療:患者様ご自身の血液から、組織の修復を助ける成長因子を多く含んだ成分(PRP)を抽出し、損傷した靭帯の部分に注射する治療です。PRP治療は、靭帯や腱の損傷の治癒を促し、早期の機能回復をサポートする可能性が期待されています。
- 手術(外科的治療):靭帯が完全に断裂して関節の不安定性が著しい場合や、剥離骨折を伴い骨片が大きい場合、または保存的治療を続けても不安定性や痛みが残ってしまう場合に検討されます。手術では、切れた靭帯を縫い合わせたり、再建したり、骨折した部分を固定したりします。
当グループでは、固定やリハビリといった標準的な治療に加えて、PRP治療のような先進的な治療法も、患者様の状態やご希望に応じて提案し、早期の社会復帰を力強くサポートします。