disease

フォルクマン拘縮

症状

フォルクマン拘縮は、前腕や肘周辺の骨折、特に小児の上腕骨顆上骨折などの重い外傷後に起こり得る、手の機能に深刻な障害を残す後遺症です。外傷によって前腕の血管が圧迫され、血液の流れが極端に悪くなること(血行障害または阻血)が原因となり、筋肉や神経の組織が酸素不足で壊死してしまいます。壊死した組織は、弾力のない硬い線維の塊(瘢痕組織)へと変化します。この硬い組織が短く縮んでしまうことで、手首や指の動きが曲がったまま固定されてしまうのです。この拘縮が完成する前の急性期に、異常な痛みや腫れを見逃さずに対処することが、手の機能を守る上で最も重要です。

フォルクマン拘縮が固定した「慢性期」の具体的な症状は以下の通りです。

  • 指と手首の変形(鉤爪手): 筋肉の短縮により、手首は手のひら側(掌屈位)に曲がり、指も内側に強く曲がったまま固まります。指の付け根の関節が反り、指先が曲がるという特徴的な「鉤爪(かぎづめ)のような手」の形になります。
  • 握力や筋力の低下: 血行障害で前腕の筋肉がダメージを受けるため、筋肉が痩せ細り(萎縮)、握る力や指を動かす力が大幅に低下します。
  • 手の感覚の異常としびれ: 正中神経や尺骨神経が麻痺することが多く、手のひらや指先に強いしびれや感覚の鈍さが現れます。これにより、細かい作業や温度の感覚が鈍くなることがあります。
  • 急性期の緊急サイン: 慢性化する前の段階では、怪我の程度に見合わない「激しい痛み」や「前腕の異常な腫れ」が急速に進行します。皮膚の色が青白くなる(蒼白)ことも血行不良を示す重大な兆候です。

これらの症状、特に指の変形やしびれは、一度定着すると機能回復が困難です。外傷後に異常な痛みや腫れ、または指の動きの悪化を感じる場合は、深刻な後遺症を避けるためにも、すぐに当院にご相談ください。

原因

フォルクマン拘縮の根本的な原因は、前腕の骨折や重度の打撲などの外傷によって引き起こされる「前腕の血液循環の障害」です。血管が圧迫され、筋肉や神経が壊死し、硬く縮んだ瘢痕組織になることで拘縮に至ります。この血行障害を引き起こす具体的な原因は以下の通りです。

  • 小児の上腕骨顆上骨折: 子供が転倒などで肘周囲を骨折した際に、骨のずれや周囲の腫れが、前腕への血流を供給する動脈を圧迫し、血行不良を招きます。
  • 成人の前腕の骨折や圧挫傷: 成人では、強い圧迫を受ける外傷や前腕の骨折が原因となることが多く、内出血や筋肉の腫れが増大することで血行不良を招きます。
  • コンパートメント症候群の進行: 骨折や打撲後、筋膜で囲まれた前腕の区画内で内圧が異常に高まる状態です。この高圧が血管や神経を強く絞めつけ、筋肉の壊死(阻血)を引き起こす主要な原因となります。
  • 特定の要因によるリスクの増加: ご高齢の方や、抗凝固薬を服用している方は、比較的軽い外傷でも出血が増えやすく、コンパートメント症候群を発症するリスクが高まるため注意が必要です。

いずれも前腕の血液循環が決定的に損なわれることが共通しています。外傷後の腫れや痛みが強まる場合は、この「血行障害」を疑い、直ちに対処することが不可欠です。

診断

フォルクマン拘縮の診断は、急性期には血流障害の緊急度の評価が最優先されます。一方、拘縮が固定した慢性期では、残存機能の客観的な評価を行い、今後のリハビリテーションや治療計画を立てるための情報を得ます。

身体の診察と詳しい問診

まずは、激しい痛みの有無、手の感覚の範囲、そして指や手首の動かしにくさの程度を確認します。前腕の腫れの程度、硬さ、皮膚の色などを観察し、血流の異常がないかを判断します。特に損傷に見合わない強い痛みは、コンパートメント症候群の強い兆候であり、徹底的な評価が必要です。

画像検査による損傷の範囲の特定

X線(レントゲン)検査は、原因となった骨折の有無を確認するために必須です。慢性期には、超音波検査やMRI検査を用いて、拘縮した筋肉組織の範囲や硬さ、そして合併している神経の損傷度合いを詳細に評価できます。これらの情報は、リハビリテーションによる回復の見込みや、手術が必要かどうかの判断材料となります。

重症度に応じた機能の評価

拘縮が完成している場合、当院では指や手首の動きの制限度合い、感覚の麻痺の範囲に基づいて、重症度を客観的に分類します。これにより、患者様一人ひとりに合わせた治療計画を立てる目安とします。

重症度主な機能の障害の特徴
軽度指2〜3本のみに動きの制限が見られ、手の感覚の障害は限定的です。
中等度すべての指が曲がった状態となり、親指も手のひらに固定されます。手首も曲がってしまい、ある程度の感覚の麻痺を伴います。
重度手首や指を動かす前腕の筋肉全体に強い拘縮が生じ、手首や指の動きがほとんど失われます。

当院では、外傷の状況と現在の症状を総合的に判断し、適切な治療へとつなげるための正確な診断を行います。

治療

フォルクマン拘縮の治療は、発症からの経過時間によってその焦点が大きく変わります。急性期には、組織の壊死を最小限に抑えるための「緊急処置」が最も優先されます。一方、拘縮が固定した慢性期では、硬くなった組織への多角的なアプローチと、残された機能を最大限に引き出すための「機能回復訓練(リハビリテーション)」が治療の柱となります。当院は、特に機能回復を目指すリハビリテーションを通じて、日常生活の質の向上をサポートします。

具体的な治療方法には、以下のようなものが含まれます。

  • 急性期の緊急処置: 症状が急速に進行し、コンパートメント症候群が強く疑われる場合、不可逆的な組織の壊死を防ぐため、高まった圧力を下げる緊急手術(筋膜切開など)が最優先で必要となります。
  • 物理療法と徒手療法: 慢性期において、硬く短縮してしまった前腕の筋肉や関節包を理学療法士の手技や物理療法機器を用いて丁寧に伸ばします。筋肉の柔軟性を高め、関節の動く範囲(可動域)の改善を図るための基礎となる治療です。
  • 運動療法(リハビリテーション): 筋肉を柔軟にしつつ、機能が残っている筋肉を強化する訓練を行います。日常生活で必要となる掴む、曲げる、伸ばすといった動作の再習得を目指し、専門スタッフが連携して機能回復をサポートします。
  • 装具による矯正: 拘縮の進行を防ぐ目的や、リハビリテーションの効果を補助するために、手首や指を適切な位置に保持する装具(スプリント)を装着することがあります。
  • 外科的治療の検討: 拘縮の程度が重度であり、リハビリテーションのみでは日常生活に支障をきたす機能障害が残る場合、硬い筋肉の切除や、機能する腱を移動させる腱移行術といった専門的な手術を検討します。患者様と相談の上、最も適切な機能回復のための次のステップを慎重に判断します。

フォルクマン拘縮は長期的な治療が必要ですが、適切なリハビリテーションを継続することで、失われた機能の一部回復や、残存機能の強化は十分に期待できます。

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