距骨骨軟骨病変(OCD)の掻爬・骨髄刺激/移植
距骨骨軟骨病変(OCD)は、足首の関節にある距骨の軟骨とその下の骨の一部が傷つき、剥がれたり壊死したりする病気です。多くは過去の足関節捻挫などの外傷や繰り返しの負荷が原因で発生します。損傷した軟骨は自然には修復されにくく、痛みや不安定感を招きます。この病変を放置すると、将来的に足関節の変形につながる変形性足関節症の大きな原因となる可能性があります。掻爬・骨髄刺激術や骨軟骨移植術は、損傷した軟骨を修復し、足首の機能を回復させるための重要な治療法です。
治療の適応(対象となる方)
距骨骨軟骨病変に対する手術治療は、特に以下のような症状や状態にある患者様を対象とします。
- 足関節(足首)の痛みや腫れが続く方: 歩行時や運動時に足首の奥深くに慢性的な痛みがあり、日常生活に支障をきたしている場合。
- 足首の引っかかりや動揺感がある方: 関節内に軟骨や骨の破片(関節ねずみ)があり、足首の動きを妨げている場合。
- 過去に保存療法で症状が改善しなかった方: 軟骨の損傷が深く、自然な修復が期待できないと判断される場合。
- スポーツ活動の継続や完全復帰を強く希望される方: 軟骨の確実な修復と足関節の安定性回復が必要な場合。
手術術式の選択
治療法は、病変の大きさ、深さ、骨の欠損の有無によって選択されます。画像検査で軟骨の状態を正確に把握した上で、最適な術式をご提案します。病変のサイズ(目安1.5cm)や骨の状態に応じて、「骨髄刺激術」と「骨軟骨移植術」から選択されます。
関節鏡視下掻爬・骨髄刺激術(マイクロフラクチャー法)
関節鏡を使用し、損傷した軟骨を取り除いた後、骨に小さな穴を開けて骨髄から修復細胞を誘導し、新しい軟骨組織の形成を促す方法です。
- 適応: 損傷が比較的小さく(目安1.5cm未満)、骨の欠損が軽度な場合。
- 方法: 関節鏡を使い、病変部に小さな穴(マイクロフラクチャー)を開け、骨髄液に含まれる幹細胞を誘導します。
- 特徴: 体への負担が少なく、傷が小さいですが、形成されるのは耐久性に劣る場合がある線維軟骨です。
自家骨軟骨柱移植術(OATs)
損傷が大きく、深い骨欠損を伴う場合に行われます。
- 適応: 病変が大きく(目安1.5cm以上)、骨の欠損を伴う深い損傷の場合。
- 方法: 膝などの体重があまりかからない部分から、骨と軟骨を円柱状に採取し、病変部に埋め込み固定します。
- 特徴: 強度の高い元の関節軟骨(硝子軟骨)に近い組織による再建が期待できます。術後の荷重開始時期は骨髄刺激術よりも遅くなります。
手術の詳細
距骨骨軟骨病変の手術は、主に小さな傷で行える関節鏡を使用して行われます。
麻酔・所要時間
- 麻酔方法: 腰椎麻酔(下半身麻酔)が一般的ですが、全身麻酔を選択することもあります。
- 手術時間: 60分~120分程度です。移植術は骨軟骨の採取が必要なため、骨髄刺激術よりも時間を要します。
手術手順
- 麻酔導入と準備: 麻酔後、足関節に約5mm程度の小さな穴を開け、関節鏡と器具を挿入します。
- 病変部の処理: 関節鏡で病変部を観察しながら、損傷した軟骨を取り除き、骨を整えます。
- 修復処置の実施: 術式に応じて、骨に小さな穴を開ける処置、または採取した骨軟骨を埋め込む処置を行います。
- 止血・縫合: 関節内を洗浄し、切開部を丁寧に縫合して終了します。
入院・術後経過
軟骨の修復管理とリハビリ開始のため、手術後は入院が必要です。
入院期間
- 標準的な入院期間: 4~5日間程度です。
術後経過
入院中の管理
- 疼痛管理: 術後の痛みを和らげるため、内服薬や点滴で痛みをコントロールします。
- 初期リハビリ: 専門の理学療法士の指導のもと、早期から関節を動かす訓練を開始します。
退院後の注意点
- 荷重制限(免荷期間): 修復軟骨を保護するため、術後4週間から8週間程度は、足に体重をかけない生活(松葉杖を使用)が必須です。
- リハビリテーションの継続: 荷重開始後は、筋力やバランス能力の回復、歩行練習など、段階的なリハビリを継続することが完全復帰のために重要です。
- 定期的な通院: 軟骨の修復状況や機能回復の状態を確認するため、定期的に通院していただきます。
期待される効果
手術治療により、以下の効果が期待されます。
- 痛みや不安定感の解消: 損傷軟骨が修復され、動作時や運動時の痛み、不安定感が解消されます。
- 変形性足関節症への進行予防: 病変を根本的に治療することで、将来の重度な関節症への進行リスクを下げます。
- 日常生活やスポーツへの完全復帰: 適切なリハビリテーションと運動療法により、足首の機能が回復し、活動再開を目指せます。
手術のリスクと合併症
手術には合併症のリスクが伴いますが、経験豊富な医師が対応し、リスクを最小限に抑えます。
一般的なリスク
- 出血、感染症、術後の疼痛。
- 深部静脈血栓症(血の塊ができること)、麻酔に関する合併症。
治療特有のリスク
- 軟骨修復の遅延または不十分: 特に骨髄刺激術において、修復組織が期待通りに成長せず、再手術が必要となる可能性があります。
- 移植片に関する問題: 移植術の場合、移植した骨軟骨片が定着しない可能性や、骨軟骨を採取した部位に痛みが残る可能性があります。
- 再発: 修復した組織が再び損傷する可能性があります。
費用について
距骨骨軟骨病変の掻爬・骨髄刺激/移植手術は、健康保険が適用される保険診療です。
- 料金の目安(3割負担の場合):
- 概算で17万円~22万円程度です。一般的な入院期間は4~5日間程度です。
※治療内容や入院期間、病室の種類により金額は変動します。
- 概算で17万円~22万円程度です。一般的な入院期間は4~5日間程度です。
- 高額療養費制度の活用:
- 医療費の自己負担額が高額になった際、限度額を超えた分が払い戻される制度です。手術が決まった時点でご加入の医療保険へ事前手続きをすることで、入院中や退院時の支払いが高額医療の限度額までとなります。
- 医療費控除:
- 1年間に支払った医療費の合計額が一定額を超えた場合、確定申告を行うことで所得から控除され、税金が還付される医療費控除の対象となります。詳しくは窓口でご相談いただけます。
当グループでの距骨骨軟骨治療の特長
アレックスメディカルグループ(AR-Ex)は、手術(Arthroscopy)、リハビリ(Rehabilitation)、運動療法(Exercise)を重視し、患者様の「完全復帰」を目指す専門的なチーム体制を構築しています。
低侵襲で高精度な関節鏡視下手術
当グループは関節鏡視下手術を専門とし、病変の大きさに応じて最適な術式を選択します。1mmの精度にこだわった丁寧な処置により、周囲組織へのダメージを最小限に抑え、傷を小さく保つことで、術後の早期機能回復を促します。
専門チームによる徹底したリハビリテーション
手術後の成果を最大化するため、医師と理学療法士が密に連携し、軟骨の修復状況や回復段階に応じた最適なリハビリプログラムを提供します。痛み緩和だけでなく、関節の動きや筋力の回復、再発予防を含めた総合的な身体づくりを目指します。
再発予防を見据えた運動療法
治療の最終目標は、長期的に活動を継続できることです。理学療法士に加え、トレーナーやアスレティックトレーナーが在籍しており、保険診療終了後も、競技力向上や再発予防に特化した科学的根拠に基づいたトレーニング、一貫した継続的なサポートを提供します。
よくあるご質問
Q. 手術は痛いですか?
A. 手術は麻酔下で行うため、術中に痛みを感じることはありません。術後の痛みについても、内服薬や注射で適切に管理しますのでご安心ください。
Q. 術後すぐに歩けますか?
A. 軟骨の修復には時間を要するため、術式によりますが、術後4週間から8週間程度は、修復部位を保護するために松葉杖を使用し、体重をかけない期間(免荷期間)が必要です。
Q. スポーツ復帰は可能ですか?
A. はい、可能です。当グループの専門的なリハビリテーションと運動療法により、多くの患者様がスポーツに復帰されています。復帰までの期間は、損傷の程度や術式により異なりますが、一般的には術後6ヶ月から1年程度が目安となります。
関連する疾患について
- 離断性骨軟骨炎
- 足関節捻挫
- 変形性足関節症