スポーツヘルニア(鼠径部痛症候群)修復術
スポーツヘルニア(鼠径部痛症候群:Groin Pain Syndrome)は、ランニングやキック動作など、腹部に強い負荷がかかる運動を日常的に行うアスリートに特有の慢性の痛みです。鼠径部(足の付け根)周辺の筋肉、腱、腹壁を構成する組織に微細な損傷や不安定性が生じることで発症します。保存療法やリハビリテーションでの改善が難しく、競技レベルの負荷がかかると再発を繰り返す場合が多く、根本的な競技復帰には手術による損傷部位の確実な修復が有効な治療法となります。
治療の適応(対象となる方)
この修復術は、鼠径部痛症候群が原因で日常生活やスポーツ活動に大きな支障をきたしている患者様を対象とします。特に以下のような症状や状態にある方に、治療の適用が考慮されます。
- 運動誘発性の強い疼痛: ランニングやキック動作、起き上がり動作などで、鼠径部や下腹部に鋭い痛みが繰り返し発生する方。
- 慢性的な症状の持続: 痛みが数カ月以上にわたって持続しており、競技の継続が困難になっている方。
- 保存療法の限界: 理学療法や注射などで症状が改善しない、またはスポーツ再開後に再燃を繰り返している方。
- 画像診断による病変の確認: 検査により、腹壁の脆弱性や周辺組織の炎症が確認されている方。
手術術式の選択
当グループでは、スポーツ活動への早期かつ安全な復帰を目指すため、身体への負担が少ない低侵襲な鏡視下手術を主に採用します。痛みの原因を正確に把握し、患者様の活動レベルに応じて最適な術式を選択します。
低侵襲な鏡視下(内視鏡下)修復術
適応
腹壁後方の不安定性が痛みの主たる原因と特定された場合や、早期の競技復帰を強く希望される場合。
方法
全身麻酔下で、腹部に数ミリの小さな切開を数カ所設け、内視鏡と専用器具を挿入します。モニターで患部を拡大しながら、腹壁の弱い部分を内側から確認し、専用の補強材(メッシュ)を用いて丁寧に補強・強化します。
特徴
- 身体への負担が少ない: 傷が小さく、術後の痛みが軽減されます。
- 早期回復: 回復が早く、リハビリテーションへスムーズに移行できます。
- 再発リスクの低減: 腹壁を内側から広範囲に補強し、高い腹圧に耐えやすい構造を目指します。
手術の詳細
麻酔・所要時間
- 麻酔方法:
- 全身麻酔
- 手術時間:
- 60分~120分程度(症例や片側・両側で前後します。)
手術・治療手順
- 術前準備: 術前検査後、全身麻酔を導入します。
- 内視鏡挿入: へそ周辺に数ミリの切開を加え、内視鏡と器具を慎重に挿入します。
- 診断と処置: 内視鏡で損傷部位や神経の状態を確認し、痛みの原因を確定します。
- 修復: 腹壁の脆弱な部分に対し、補強材(メッシュ)を用いて内側から確実に修復します。
- 縫合: 創部を丁寧に縫合し、手術を終了します。
入院・術後経過
- 入院期間: 標準的な入院期間: 3~5日間(低侵襲手術を採用しているため、比較的早期の退院が可能です。)
術後経過
入院中の管理
術後数日は疼痛管理プロトコルに基づき、鎮痛薬で痛みをコントロールします。術後翌日から理学療法士の指導のもと、軽い歩行や体幹の安定化運動を始め、早期回復を促します。
退院後の注意点
退院後も継続的なリハビリテーションが最も重要です。専門プログラムに従い、股関節周囲や体幹の安定性を段階的に高めます。運動負荷を慎重に上げていき、医師とリハビリテーションチームが安全性を確認した段階で競技復帰となります。
期待される効果
手術とそれに続く専門的なリハビリテーションにより、以下の効果が期待されます。
- 運動時疼痛の解消: 慢性的な鼠径部痛がなくなり、高い腹圧が必要なスポーツ動作を痛みなく行えるようになります。
- 競技パフォーマンスの完全な回復: 痛みで低下していた体幹の安定性や股関節の機能を回復させ、受傷前と同等以上のレベルへの復帰を目指します。
- 長期的な再発の予防: 手術と科学的根拠に基づいた運動療法で、損傷の原因となった機能不全を改善し、再発リスクを最小限に抑えます。
手術のリスクと合併症
すべて外科的な治療には一定のリスクや合併症が伴います。
一般的なリスク
- 出血・感染: 手術部位での出血や、術後の感染のリスク。
- 疼痛: 術後の痛み(鎮痛剤で管理可能)。
- 麻酔関連合併症: 全身麻酔に伴う血圧変動や術後の吐き気など。
特有のリスク
- 慢性神経痛・しびれ: 神経の刺激により、一時的または稀に永続的なしびれや痛みが残ることがあります。
- 再発: 補強した腹壁が再度弱くなり、症状が再発する可能性(稀)。
- 補強材による違和感: 使用したメッシュによる異物感や引きつれ感(時間経過で慣れることが多い)。
費用について
スポーツヘルニア(鼠径部痛症候群)修復術は、公的医療保険の適用対象となる治療です。
健康保険3割負担の方の場合、概算で数十万円程度となることが一般的です。詳しくはお問い合わせください。
自己負担額が高額になる場合でも、国の医療費助成制度である高額療養費制度をご利用いただけます。この制度は、1カ月(暦月)の医療費の自己負担額が上限額を超えた場合に超過分が支給されるものです。また、年間の医療費が一定額を超えた場合は医療費控除の対象にもなります。費用の詳細については当グループのスタッフまでご相談ください。
当グループでの修復術の特長
アレックスメディカルグループは、Arthroscopy(治療)、Rehabilitation(リハビリ)、Exercise(運動療法)の3分野を重視する専門クリニックグループとして、患者様の完全復帰をチームで実現します。
- 専門医による低侵襲手術: 低侵襲な内視鏡手術に豊富な経験を有し、傷が小さく、筋肉へのダメージを最小限に抑える術式で早期回復を追求します。最小限の侵襲で最大限の効果を追求し、確実な処置を行います。
- 連携体制に基づく専門リハビリ: 医師と理学療法士がカンファレンスなどを通じて密接に連携し、患者様の状態に合わせた最適なリハビリプログラムを提供します。超音波診断装置などを用いた客観的なデータに基づいた、根拠あるリハビリテーションを実施し、再発を予防するための身体づくりを目指します。
- 再発予防のための運動療法: 理学療法士に加え、トレーナーなどの専門スタッフが在籍し、科学的根拠に基づいたトレーニングを行います。体幹や股関節の機能改善に重点を置き、競技力向上や再発予防に特化した指導を行います。保険診療終了後も、継続的なサポート体制を整えています。
よくあるご質問
Q. 手術は痛いですか?
A. 手術は全身麻酔下で行うため、術中に痛みはありません。術後の痛みは低侵襲手術のため少なく、入院中に適切な鎮痛薬で管理します。
Q. 競技復帰までの一般的なスケジュールを教えてください。
A. 一般的に術後3週間から1カ月半程度で、制限されたランニングや軽いトレーニングを開始できます。本格的な競技復帰は、医師とトレーナーが修復部位の治癒と体幹機能の回復を確認しながら、段階的に進めます。
Q. 入院期間はどれくらいですか?
A. 術後の管理と早期リハビリテーションを確実に行うため、3~5日間の入院を標準としています。
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