surgery
離断性骨軟骨炎(肘OCD)の鏡視下手術(掻爬・骨釘固定 など)
肘の離断性骨軟骨炎(OCD)は、成長期のアスリートに多く見られる病気で、肘の関節軟骨とその下の骨が傷つき、剥がれてしまう状態です。特に野球など、投球動作を繰り返すスポーツで発症しやすく、進行すると痛みや肘の引っかかり(ロッキング)が生じます。この疾患は自然治癒が難しく、症状が進行したり、安静などの保存療法で改善しない場合、鏡視下手術による治療が有効な手段となります。
手術の適応(対象となる方)
離断性骨軟骨炎の鏡視下手術は、特に以下のような症状や状態にある患者様を対象とします。
- 厳格な投球禁止などの安静期間を設けても、肘の痛みが改善しない方
- 肘を動かしたときに、急に関節が動かなくなる「ロッキング」や、「クリック音」などの機械的な症状がある方
- 画像検査(MRIやCTなど)で、傷ついた骨や軟骨の破片が関節の中で完全に剥がれてしまっている(遊離体、関節ねずみ)ことが確認された方
- 軟骨の破片が大きく、元の場所に戻して固定する必要があると診断された方
手術術式の選択
離断性骨軟骨炎の治療では、患者様の病変の大きさ、安定性、年齢などに応じて最適な術式を選びます。
鏡視下掻爬(病変部をきれいにする処置)術とドリリング
この術式は、軟骨の破片が小さく、比較的安定している初期の病変に適用されます。
- 適応: 比較的軽度な初期の病変。
- 方法: 関節鏡を使い、傷ついた部分を取り除き、特殊な器具で骨に小さな穴を開けて(ドリリング)、骨髄から修復に必要な細胞を呼び込みます。
- 特徴: 体への負担が少なく、線維軟骨という組織で修復を促します。
鏡視下骨釘固定術
剥がれかけている骨軟骨片を元の位置に戻して固定し、温存を目指す術式です。
- 適応: 剥がれかかっているものの、まだ温存できる大きさの骨軟骨片。
- 方法: 剥がれた骨軟骨片を正確に元の位置に戻し、吸収されるピン(骨釘)などでしっかりと固定します。
- 特徴: 患者様ご自身の耐久性の高い軟骨を救い、元の関節機能を取り戻すことを目指します。スポーツ復帰率が高い術式です。
骨軟骨移植術(OATS)
欠損が広範囲に及ぶ、進行した病変に対する術式です。
- 適応: 欠損が広範囲に及び、骨片の温存が難しい場合。
- 方法: 膝など、あまり負荷がかからない場所から健全な骨軟骨組織を採取し、肘の欠損部に移植します。
- 特徴: 強固な修復が期待できますが、他の術式よりもリハビリ期間が長くなります。
手術の詳細
肘OCDに対する鏡視下手術は、小さな傷で正確な処置を行うことが可能です。
麻酔・所要時間
- 麻酔方法: 全身麻酔と、術後の痛みを和らげるための神経ブロックを併用することが多いです。
- 手術時間: 術式や病変の大きさによりますが、掻爬術などで1時間程度、複雑な術式ではこれより時間がかかる場合があります。
手術手順
- 麻酔導入: 患者様が痛みを感じないよう、全身麻酔を導入します。
- 関節鏡の挿入: 肘関節周囲に4mm程度の小さな切開を数カ所作り、内視鏡(関節鏡)と手術器具を挿入します。
- 病変の処置: モニターで関節内を詳しく確認しながら、選択した術式に従って正確に処置を行います(骨片の掻爬、ドリリング、固定、または移植)。
- 止血・縫合: 器具を抜き、小さな切開部を丁寧に縫合またはテープで閉じます。
- 術後ケア: 術後の安静のため、固定装具を装着します。
入院・術後経過
入院期間
肘関節の鏡視下手術は体への負担が少ないため、標準的な入院期間は3日間程度です。ただし、術式や患者様の状態、全身の回復状況によっては延長する場合があります。
術後経過
- 入院中の管理: 術後の痛みを抑えるための管理(神経ブロックや内服薬)と、傷口の確認・消毒を行います。理学療法士が、早期に安静度を守った上での関節の動かし方(リハビリ)を開始します。
- 退院後の注意点: 医師や理学療法士の指示に従い、装具の装着や、関節の動かし方の制限を厳守することが非常に重要です。定期的な通院で、傷の治り具合とリハビリの進行を確認します。スポーツ復帰に向けて、専門的なリハビリテーションを継続する必要があります。
期待される効果
手術とそれに続く適切なリハビリテーションにより、以下の効果が期待されます。
- 肘の痛みや引っかかり(ロッキング)の解消
- 関節機能の改善と、可動域の回復
- スポーツ活動への安全な復帰
- 変形性関節症への進行リスクの軽減
手術のリスクと合併症
どのような手術にもリスクは伴います。主なリスクと合併症を理解しておくことが重要です。
一般的なリスク
- 出血、感染症(化膿)
- 術後の痛みや腫れ
- 麻酔による合併症
特有のリスク
- 関節周囲の神経(尺骨神経、橈骨神経など)への刺激や損傷
- 術後の関節の動きが硬くなる(関節拘縮)
- 固定した骨片が癒合しない(骨癒合不全)
- 修復された軟骨が劣化し、将来的に変形性関節症へ移行するリスク
費用について
離断性骨軟骨炎に対する鏡視下手術は、基本的に健康保険が適用されます。
- 当院で実施している類似の肘関節鏡視下手術(関節鏡下関節鼠摘出手術など)の概算自己負担額の目安は、入院期間3日間で健康保険3割負担の方の場合、12万円〜15万円程度です。使用する固定材料などにより費用は変動します。
- 高額療養費制度を利用することで、月々の医療費の自己負担額を抑えることができます。手術が決まった時点で、ご加入の医療保険へ事前手続き(限度額適用認定証の申請)をしていただくことで、窓口での支払いを限度額までに抑えられます。
当グループでの手術の特徴
アレックスメディカルグループでは、患者様の完全復帰を目標に、手術からリハビリ、再発予防まで一貫した専門的な治療を提供しています。
専門医による低侵襲な手術
- 経験豊富な専門スタッフ: 経験豊富なスポーツ整形外科の専門スタッフが執刀します。
- 低侵襲の徹底: 小さな傷で済む関節鏡視下手術を徹底し、体への負担を最小限に抑え、最大限の治療効果を目指します。これにより、術後の痛みや筋力低下のリスクを減らし、早期の回復とスポーツ復帰を可能にします。
手術後の徹底したリハビリテーション
- 個別化されたリハビリ: 治療の成功は手術だけでなく、その後のリハビリが非常に重要です。理学療法士が、知識と計測に基づき、患者様の病状や競技復帰の目標に合わせたリハビリ方法を組み立てます。
- エコーを活用した正確なリハビリ: 超音波診断装置(エコー)を用いて患部の状態を確認しながら、より正確で根拠のあるリハビリを提供します。
- チームによる管理体制: 手術を行った医師と理学療法士、トレーナーといったリハビリスタッフが情報を共有し、完全に復帰するまでの経過をチームで管理します。
再発予防を目指した運動指導
- 科学的根拠に基づくトレーニング: 競技復帰後も再発しない身体づくりを目指し、医師・理学療法士と連携したトレーナーが、リスク管理のもとで運動指導を行います。
よくあるご質問
- Q. 手術は痛いですか?
- A. 手術は全身麻酔と神経ブロックを組み合わせて行うため、術中に痛みを感じることはありません。術後も内服薬や点滴で痛みをしっかりと抑えます。
- Q. 入院期間はどれくらいですか?
- A. 標準的な入院期間は3日間程度ですが、術式や患者様の回復状況、ご希望に応じて調整が可能です。
- Q. スポーツに復帰できるまでどれくらいかかりますか?
- A. 術式によって異なりますが、骨片の固定術の場合は、通常6ヶ月から8ヶ月程度を目安とします。ただし、組織の治癒とリハビリの進行具合によるため、医師と理学療法士の評価に従って慎重に復帰を目指します。
- Q. 手術後、すぐにリハビリは始められますか?
- A. はい。治癒を妨げない範囲で、術後早期から理学療法士の指導のもと、関節の動きを良くする訓練を開始します。
関連する疾患について
- 離断性骨軟骨炎
- 野球肘
- 変形性肘関節症