鏡視下腱板修復術(肩腱板断裂)
肩の腱板断裂は自然に治ることはなく、放置すると断裂の拡大や関節の変形が進む可能性があります。鏡視下腱板修復術は、断裂した腱を元の位置に縫い戻し、痛みと機能の根本的な回復を目指す治療法です。体への負担が少ない関節鏡を用い、術後の専門的なリハビリと組み合わせることで、日常生活やスポーツへの復帰をサポートします。
治療の適応(対象となる方)
鏡視下腱板修復術は、特に以下のような症状や状態にある患者様を対象とします。
- 保存療法(注射やリハビリなど)を数ヶ月続けても、肩の痛みや機能障害が改善しない方。
- 夜間、肩の強い痛みで目が覚めるなど、日常生活に支障をきたしている方。
- 腕を上げたり回したりする際に、明らかな筋力低下を感じる方。
- 腱板の断裂が進行しており、断裂がさらに拡大するリスクが高いと診断された方。
治療術式の選択
腱板断裂の治療では、断裂の大きさや患者様の活動レベルに基づき、保存療法と手術治療が選択されます。腱板の断裂が進行し、腱が骨から完全に離れてしまった場合、腱を骨に再接着させる手術治療が根本的な解決策です。当グループでは、体への負担を最小限に抑え、確実な修復を目指すため、関節鏡視下手術を第一に選択しています。
鏡視下腱板修復術の方法と特徴
鏡視下手術は、小さな切開で行うため、組織への損傷を抑え、修復した腱の回復を優先できます。
方法
5mm程度の小さな穴を肩関節周辺に数カ所開け、関節鏡と専用の器具を挿入します。モニター画面で関節内部を確認しながら、骨に打ち込んだ特殊な固定具(アンカー)を使って、断裂した腱を元の位置にしっかりと縫い戻します。
特徴
- 体への負担が少ない: 傷が小さく、筋肉を大きく切らないため、術後の痛みが軽減され、回復が早いです。
- 精度の高い修復: 関節鏡で内部を詳細に観察できるため、断裂の状態に合わせて適切な位置へ精度の高い処置が可能です。
- スムーズな回復: 早期にリハビリを開始でき、機能回復をスムーズに進められます。
手術の詳細
麻酔・所要時間
麻酔方法
手術中は全身麻酔が基本です。術後の痛みを軽減し、リハビリをスムーズにするために、神経ブロックを併用します。
手術時間
断裂の大きさや状態により異なりますが、目安として60分~120分程度です。
手術手順
- 術前準備と麻酔導入: 全身麻酔と神経ブロックを導入します。
- 関節鏡の挿入: 肩の皮膚に小さな切開を数カ所加え、関節鏡と手術器具を挿入します。
- 断裂部位の確認と腱の準備: 断裂腱の詳細を確認し、縫合するための骨の表面を整えます。
- 腱の修復と縫合: 糸付きのアンカーを骨に固定し、断裂した腱を元の位置に確実に縫合します。
- 止血と縫合: 切開部を丁寧に縫合して終了します。
入院・術後経過
鏡視下腱板修復術が成功するためには、手術後の適切な固定期間と、専門的なリハビリテーションを計画的に進めることが不可欠です。
入院期間
標準的な入院期間は、5日間です。これは、術後の合併症の管理、疼痛コントロール、専門家による初期リハビリの開始のために必要な期間です。
術後経過
入院中の管理
- 装具による固定: 術後から肩専用の装具を装着し、修復した腱を保護します。装具は通常約4週間、安静を保つために終日装着します。
- 疼痛管理: 術後の痛みを和らげる管理を徹底します。
- 初期リハビリの開始: 手術翌日から、医師や理学療法士の指導のもと、肩に力を入れない他動運動や、手首・肘の運動を開始し、肩が硬くなる(拘縮)のを防ぎます。
退院後の注意点
- 段階的なリハビリの継続: 退院後も装具を装着し、リハビリを継続します。約1ヶ月半頃から、理学療法士の指導のもと、自分で力を入れて肩を動かす自動運動を開始します。
- 筋力回復: 術後3ヶ月目頃から、本格的な筋力トレーニングを開始し、日常生活やスポーツに必要な耐久力の向上を目指します。
- 再断裂の予防: 医師や理学療法士の指示に従い、焦らず段階的に動作範囲と負荷を広げてください。
期待される効果
手術と専門的なリハビリテーションにより、以下の効果が期待されます。
- 長期間続いていた夜間痛や慢性の痛みの根本的な解消。
- 肩の挙上や回旋といった動作範囲(可動域)の改善と回復。
- 断裂の進行を防ぎ、将来的な肩関節の変形を予防。
- 肩の機能回復による、日常生活や社会生活の質の向上。
手術のリスクと合併症
鏡視下腱板修復術は一般的に広く行われている手術ですが、特有のリスクや合併症についてご理解ください。
- 再断裂: 修復した腱が再度断裂してしまうこと。元々断裂が広範囲であった場合や、術後の固定期間中に無理な動作をした場合に起こる可能性があります。
- 関節拘縮: 術後の固定期間や炎症により、肩の動きが硬くなってしまう状態。リハビリにより改善を図りますが、回復に時間がかかることがあります。
- 感染症: 手術部位に細菌が入り、感染を起こすことがあります。
- 神経損傷: 非常に稀ですが、手術操作により肩周囲の神経が一時的に麻痺したり、しびれ・感覚障害や筋力低下が一時的に生じる可能性があります。
費用について
鏡視下腱板修復術は公的医療保険(健康保険)の適用となります。
- 料金(概算): 健康保険証3割負担の方の場合、手術と標準的な5日間の入院にかかる自己負担額の目安は、25万円から36万円程度です。治療内容や入院期間により金額は変動します。
- 高額療養費制度: 月間の医療費が高額になった場合、「高額療養費制度」の適用が可能です。事前に手続きを行うことで、入院中の支払いを限度額までに抑えることができます。医療費控除についてもご相談いただけます。
当グループでの鏡視下腱板修復術の特長
アレックスメディカルグループ(AR-Ex)は、Arthroscopy(手術)、Rehabilitation(リハビリ)、Exercise(運動療法)の三分野を重視し、専門スタッフによるチーム体制で、患者様の完全復帰を目標としています。
低侵襲で確実性の高い手術(Arthroscopy)
経験豊富な医師が関節鏡を用い、最小限の切開で正確な修復を行います。小さな傷で済む低侵襲手術により、術後の痛みや筋力低下のリスクを抑え、早期にリハビリに移行できます。修復の精度にこだわり、腱がしっかりと骨に再接着することを目指します。
専門的なリハビリテーション(Rehabilitation)
手術の成功にはその後のリハビリが不可欠です。医師と理学療法士が連携し、知識と客観的な計測に基づいた最適なリハビリプログラムを作成します。超音波診断装置などで回復状況を確認しながら、安全かつ根拠に基づいてリハビリを進めるため、再断裂を防ぎながら機能回復を目指します。
再発予防を見据えた運動療法(Exercise)
痛みを取るだけでなく、再発を予防するための身体づくりをサポートします。理学療法士、トレーナー、アスレティックトレーナーといった専門スタッフが連携し、リスクを管理しながら、競技力向上や日常生活の耐久力向上に必要なトレーニングを提供します。保険診療終了後も、継続的にサポートする体制を持っています。
よくあるご質問
Q. 手術は痛いですか? A. 手術中は全身麻酔と神経ブロックを併用するため、痛みを感じることはありません。術後も神経ブロックや内服薬で痛みをコントロールし、痛みを抑えた状態で初期リハビリを開始します。
Q. 入院期間はどれくらいですか? A. 標準的な入院期間は5日間です。これは、合併症の管理、疼痛コントロール、初期リハビリを安全に行うために必要な期間です。
Q. スポーツ復帰までどれくらいの期間がかかりますか? A. 軽い筋力トレーニングは術後3ヶ月頃から、ゴルフなどの軽度なスポーツは6ヶ月頃から、激しいスポーツへの完全復帰には6ヶ月から1年程度を目安としています。リハビリの進捗には個人差があるため、専門スタッフがサポートいたします。
関連する疾患について
鏡視下腱板修復術の対象となる、または関連する疾患は以下の通りです。
- 腱板損傷・断裂
- 拘縮肩
- 石灰沈着性腱板炎
- 上腕骨近位端骨折
- 肩関節脱臼