半月板縫合術(鏡視下)
半月板縫合術(鏡視下)は、膝のクッション組織である半月板の損傷に対し、切除せずに特殊な器具で修復・温存する専門的な治療法です。半月板を温存することは、膝関節の安定性を保ち、将来的な関節軟骨の摩耗や変形性膝関節症への進行を防ぐ上で非常に重要です。本術式は、直径数ミリの関節鏡(内視鏡)を使用する低侵襲な方法で、体への負担が少なく、早期回復を目指します。
手術の適応(対象となる方)
半月板の縫合術は、半月板の長期的な機能維持を目的としており、特に以下のような症状や状態にある患者様を対象とします。
- 膝の痛みや不安定感がある方: 動作時に痛みを感じたり、膝がグラグラする不安定感がある方。
- ロッキング症状がある方: 損傷片が挟まり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」症状がみられる方。
- 血流の良い部分の損傷: 半月板の外側(辺縁部)など、治癒能力が期待できる部位に損傷がある場合。
- 活動性の高い方: 若年者やスポーツ選手など、高いレベルでの膝の機能維持を強く希望される方。
手術術式の選択
当グループでは、長期的な膝の健康を最優先し、損傷の形態や血流の状態を総合的に評価し、可能な限り半月板の温存を目指します。
半月板の温存(縫合術)と切除(部分除去)の判断
損傷の治癒可能性に基づき、縫合術か切除術かを判断します。
半月板縫合術(温存)
血流が良く、修復が期待できる損傷に適用されます。回復には時間を要しますが、半月板の衝撃吸収機能を維持し、将来の膝の変形リスクを最小限に抑えます。
半月板切除術(部分除去)
血流が乏しく治癒が期待できない損傷に適用されます。早期の症状解消は早いですが、半月板の一部を失うため、残った軟骨への負担が増加するリスクがあります。
手術の詳細
鏡視下半月板縫合術は、数ミリの小さな切開のみで行われます。
麻酔・所要時間
麻酔方法
主に、腰椎麻酔(下半身麻酔)または全身麻酔下で行われます。
手術時間
損傷の程度によりますが、一般的に60分程度で終了することが多いです。
手術手順
関節鏡を膝関節内に挿入し、モニターの映像を見ながら手術を行います。
- 関節鏡の挿入: 関節鏡と器具を挿入し、損傷部位を詳細に観察します。
- 損傷部位の処理: 縫合を成功させるために、断端を整えたり、治癒に必要な血流を促す処置を行います。
- 縫合: 特殊な縫合器具を用いて、損傷した半月板を強固に縫い合わせ、安定させます。
- 終了: 関節内を洗浄し、切開口を閉じて終了します。
入院・術後経過
縫合術は組織が定着するまでの初期保護が必要なため、入院が必要です。
標準的な入院期間
標準的な入院期間は、4日間を予定しています。
術後経過
入院中の管理
適切な疼痛管理と感染予防を徹底し、術後早い段階でリハビリテーションを開始します。松葉杖歩行方法を集中的に指導します。
退院後の注意点とリハビリテーション
- 松葉杖の使用と荷重制限: 縫合部を保護するため、退院後も医師の指示に基づき、通常2~3週間は松葉杖歩行が必要となります。
- 日常生活への復帰: 1ヶ月程度でほぼ制限のない日常生活に戻ることを目指します。
- スポーツ復帰: 競技復帰は、治癒状態を確認しながら、通常2~3ヶ月目から段階的な運動療法を開始し、完全な復帰を目指します。
期待される効果
鏡視下半月板縫合術により、以下の効果が期待されます。
- 半月板機能の温存: 衝撃吸収能力と安定性が維持されます。
- 痛みや症状の根本的な解消: 痛み、引っかかり感、ロッキング症状が解消されます。
- 関節軟骨の保護: 将来的に変形性膝関節症へ進行するリスクを最小限に抑えます。
手術のリスクと合併症
一般的なリスク
- 出血・感染: 手術部位からの出血や感染が生じる可能性があります。
- 疼痛・腫れ: 術後に一時的な痛みや腫れが生じますが、鎮痛管理によりコントロールします。
半月板縫合術特有のリスク
- 治癒不全: 縫合した半月板が完全に定着しない(治癒しない)場合があります。
- 再断裂(再損傷): リハビリが不十分な場合や組織が脆い場合、スポーツ活動などにより再び損傷(再断裂)を生じるリスクがあります。予防には長期的な専門的な運動療法が不可欠です。
費用について
鏡視下半月板縫合術は、公的医療保険が適用される保険診療です。
- 料金(概算): 健康保険証3割負担の方の場合、入院期間を含め16万円から20万円程度です(治療内容や入院日数により金額は前後します)。
- 高額療養費制度: 事前手続きにより、窓口での支払い金額が高額療養費の限度額までで済みます。一時的な経済的負担を大幅に軽減できますので、ご不明点はお気軽にご相談ください。
当グループでの鏡視下半月板縫合術の特長
アレックスメディカルグループは、Arthroscopy(鏡視下手術)、Rehabilitation(リハビリテーション)、Exercise(運動療法)の3分野(AR-Ex)を連携させ、「完全復帰」を目標とした専門的な治療を提供しています。
低侵襲で高精度な手術の追求
低侵襲な関節鏡視下手術を専門とし、体への負担を最小限に抑えます。半月板縫合術では、1mmの精度にこだわった処置で、損傷部位を確実かつ強固に修復します。傷が小さいため、術後の痛みが少なく、早期回復を支援します。
専門スタッフによる緻密なリハビリテーション
手術を行う医師と理学療法士が定期的にカンファレンスを実施し、情報を密に共有することで、完全復帰に向けた管理体制を整えています。
また、リハビリテーションの際には、超音波診断装置(エコー)を用いて治療部位の筋肉や組織の状態を視覚的に確認しながら治療を進めます。これにより、正確な根拠に基づいたリハビリを提供し、効果的に回復をサポートします。
再発予防と競技復帰を目指す運動療法
半月板縫合術後の再断裂予防は最も重要な課題です。当グループでは、科学的根拠に基づいた運動療法を徹底しています。理学療法士に加え、専門のトレーナーやアスレティックトレーナーが在籍しており、医師・理学療法士と連携しながら、リスク管理のもとで、再発予防に特化したトレーニングを提供し、完全なスポーツ復帰をサポートします。
よくあるご質問
Q. 手術は痛いですか?
A. 手術は麻酔下で行うため、術中に痛みを感じることはありません。術後も適切な鎮痛管理を徹底しています。
Q. スポーツに復帰できるのはいつ頃ですか?
A. 半月板縫合術の場合、治癒に時間が必要です。患者様の回復状況によりますが、通常、競技復帰までには2~3ヶ月以上を要します。専門スタッフの指導に基づいた段階的なリハビリを進めることが重要です。
Q. 松葉杖はどれくらいの期間必要ですか?
A. 縫合部を保護するため、手術後、通常2~3週間は松葉杖を使用して、患側の足に体重をかけないようにしていただきます。
Q. 半月板が治らなかった場合、どうなりますか?
A. ごくまれに治癒が不十分な場合や再断裂が生じた場合、再度手術が必要になる可能性があります。その際は、別の治療方針(最小限の半月板切除術など)を検討することがあります。
関連する疾患について
- 変形性膝関節症
- 膝半月板損傷