外反母趾
症状
外反母趾は、足の親指(母趾)の付け根の関節が内側に突出することで、親指の先端が小指側へ「くの字」に曲がってしまう変形です。突出した骨の部分が靴と擦れて炎症や強い痛み、腫れを引き起こします。進行すると歩行に支障をきたし、日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。具体的な症状は、初期の軽い不快感から重度の慢性的な痛みまで様々です。
- 狭い靴やハイヒールを履いたときに、親指の付け根に不快感や痛みを感じる:変形の初期段階で、靴による圧迫によって痛みが出ることが多いです。
- 長時間歩くと足裏や親指の付け根に痛みや腫れが出る:変形が進むと、足裏のバランスが崩れて特定の箇所に負担が集中し、炎症や痛みが頻繁に起こるようになります。
- 選べる靴が大きく限定される:親指の変形が進行し、突出部分の痛みが強くなることで、履ける靴が少なくなり、おしゃれを楽しめなくなることがあります。
- 他の指にも変形が起きる(ハンマー指など):曲がった親指が隣の指を圧迫し、指が曲がったり(ハンマー指)、不自然な場所にタコやウオノメができやすくなります。
- 足の痛みをかばうことで膝や腰にも負担がかかる:痛みから不自然な歩き方(破行)になると、足だけでなく、膝、股関節、腰へと負担が連鎖し、別の痛みの原因となることがあります。
外反母趾の痛みや変形は放置しても自然には治りません。症状が軽いうちに適切な専門的な対応を始めることが、足の健康を守るための鍵となります。
原因
外反母趾は、不適切な靴だけでなく、体質、足の筋力低下、生活習慣など複数の要因が複雑に絡み合って発症し進行します。主な要因は以下の通りです。
- 体質的・遺伝的要因:生まれつき靭帯が柔らかい体質や、扁平足など、足のアーチがもともと崩れやすい構造を持っている場合、外反母趾になりやすい傾向があります。
- 不適切な靴による影響:つま先が細い靴や、かかとの高いハイヒールを日常的に履くことは、足指を圧迫し、親指の付け根に過度な力を加えるため、変形を加速させる大きな環境要因となります。
- 間違った歩き方と筋力の低下:足の裏の筋肉(足底筋群)はアーチを支える重要な役割がありますが、足指を十分に活用できていない歩き方や筋力不足により、横アーチが崩れ、外反母趾が進行します。
- 加齢や体重増加による負担:加齢に伴う筋力低下や、体重増加による足への負担増も、アーチの崩れや変形のリスクを高めます。また、日常的に長時間の立ち仕事をされる方も、足に負担が集中しやすい環境にあります。
これらの原因が複合的に作用し、足の親指の付け根に過度な負担がかかることで変形が進行します。変形のプロセスを理解し、生活環境と体質の両面から対策を講じることが重要です。
診断
外反母趾の治療を進めるには、変形の程度や痛みの原因を正確に知る専門的な診断が不可欠です。当院では、患者様のお話を詳しくお聞きし、精密な画像検査を行います。
X線(レントゲン)検査による正確な診断
外反母趾の診断と重症度の判断には、X線(レントゲン)検査が必須です。
- 変形の正確な測定:X線検査では、足の内部の骨の配列を確認し、親指の傾きを示す外反母趾角(HV角)を正確に計測します。このHV角が20度以上で外反母趾と診断されます。
- 重症度の把握:HV角の数値に基づき、外反母趾の進行度を軽度、中等度、重度に分類します。客観的な数値で進行度を把握することは、治療方針を選ぶ上で非常に重要です。
- 他の疾患の確認:足の痛みの原因が、外反母趾だけでなく、関節リウマチなどの他の病気ではないかを確認し、除外するためにもレントゲン検査は重要です。
外反母趾の重症度分類(HV角に基づく目安)
| 重症度の目安 | 親指の傾きの状態(HV角) | 主な治療方針 |
| 軽度 | 20度~30度未満の傾き | 靴の指導、運動、装具などの保存療法が有効な段階。 |
| 中等度 | 30度~40度未満の傾き | 歩行時の痛みが頻繁に発生。保存療法による集中的な管理が必要。 |
| 重度 | 40度以上の大きな傾き | 常時、強い痛みが続く。保存療法で改善が難しい場合は、手術的な方法も検討。 |
痛みが軽度な段階こそ、治療の効果が出やすく、手術を避けることができる可能性が高まります。足の変形や不調を感じたら、自己判断せずに専門的な診断を受けてください。
治療
外反母趾の治療は、痛みを和らげ、変形の進行を食い止めることを目指し、手術をしない保存療法が基本です。改善が見られない重度のケースで手術的な方法を検討します。患者様の変形度合いや生活環境に合わせて、最適な治療方法を組み合わせて進めます。
1. 保存療法(痛みの軽減と進行の抑制)
軽度から中等度の外反母趾は、以下の保存療法によって症状をコントロールし、変形の進行を抑制することが可能です。
- 靴の指導とインソール:母趾の付け根がフィットして指先はゆったりとした、ヒールが低く柔らかい素材の靴を選びます。足のアーチを補強する中敷き(インソール)を併用し、足裏の負担を分散させ、痛みを軽減します。市販品で効果が得られない場合は、オーダーメイドの装具を作ることも可能です。
- 運動療法:足指でグー・パーをする足指じゃんけんや、ゴム紐で親指を引っ張り合うホーマン体操などを行い、足指や足裏の筋肉を鍛え、アーチを支える力を回復させます。痛みの軽減や変形改善の効果が期待できます。
- 装具療法:歩行時や夜間に使用する矯正用装具や、痛い部分の圧力を除く除圧パッドを使用し、痛みを軽減させます。ただし、装具の使用を中止すると痛みが再燃することもあります。
- 薬物療法:炎症や痛みが強い時期には、湿布や軟膏などの消炎鎮痛剤入りの外用薬を使用します。他の保存療法と併用することで、局所の痛みを一時的に緩和させることが可能です。
2. 手術的な方法(根本的な変形矯正)
保存療法を続けても強い痛みが改善しない場合や、変形が重度に進行し、日常生活に大きな支障をきたしている場合に検討されます。
- 骨切り術:手術方法としては、足の甲の骨(中足骨)の一部を切除し、変形した骨の位置を矯正する骨切り術が最も一般的です。手術を受ける際は、変形の程度や生活習慣を考慮し、医師と十分に話し合って最適な方法を選択します。
外反母趾の治療は、一度良くなっても再発しやすい特徴があります。そのため、治療で痛みが軽減した後も、靴の指導や運動指導などを継続的に行い、長期的なフットケアが不可欠です。当院では、患者様がご自身の足の健康を維持できるよう、継続的なサポートを提供しています。