足部アーチ障害
症状
足部アーチ障害とは、土踏まずが低くなる「扁平足」や高くなる「ハイアーチ」といった異常を呈し、足のクッション機能やバランス機能が損なわれる状態です。この足の土台の異常は、歩行時の衝撃吸収能力を低下させ、全身に負担をかける原因となります。
具体的な症状としては、主に以下の点が挙げられます。
- 足首内側の痛みと腫れ: 中年以降の扁平足の場合、土踏まずを支える後脛骨筋腱炎や損傷が主な原因です。内側のくるぶしの下に強い痛みや腫れが現れやすくなります。
- 足やふくらはぎの強い疲労感: アーチが崩れることで、歩行時や長時間の立ち仕事の際に足裏に過剰な負担がかかります。衝撃吸収力が低下するため、足全体がだるくなったり、ふくらはぎが強く張るような疲労を感じやすくなります。
- 捻挫を繰り返す(ハイアーチの場合): ハイアーチは構造が硬く柔軟性に乏しいため、足関節の安定性が低くなります。そのため、日常的に足首の捻挫を繰り返す原因となります。
- 足裏のタコやウオノメの発生: アーチの異常により、足裏全体で体重を均等に分散できず、特定の箇所に極端な圧力が集中します。その結果、痛みを伴う硬いタコやウオノメが形成されやすくなります。
- 膝や股関節への連鎖的な痛み: 足の機能不全は体の土台の歪みとして全身のバランスを崩します。衝撃が緩和されずに膝関節や股関節、腰へと伝わり、関節の変形や痛みを引き起こす原因となることがあります。
足の痛みや違和感は、体の土台の機能が損なわれ始めているサインです。早期に診断を受け、適切な治療を開始することが症状の悪化を防ぐために重要です。
原因
足のアーチ構造は、骨、靭帯、筋肉の連携で維持されていますが、バランスが崩れることでアーチ障害は発生します。加齢や日々の生活でかかる過度な負担が進行を促すことが一般的です。
具体的な原因として、以下の点が考えられます。
- 後脛骨筋腱の機能低下: 土踏まずを引き上げ、アーチを維持する後脛骨筋腱が、加齢やスポーツ、体重の負荷などにより弱くなり損傷することが、特に成人期扁平足の主要な原因となります。
- 体重の増加や運動不足: 体重が増えることでアーチにかかる物理的な負荷が増大し、アーチを支える腱や靭帯が脆弱になります。運動不足による足裏の筋肉(内在筋)の衰えも、足の変形を進行させる要因となります。
- 不適切な靴の選択と着用: サイズや形が合わない靴や、土踏まずを十分にサポートしない靴を履き続けると、足の特定の箇所に偏った負担がかかります。これが長期的にアーチの変形を助長してしまいます。
- 遺伝的な要素や神経系の影響: ハイアーチの場合、先天的な骨格形態に加え、まれに神経疾患の影響で足の筋肉の緊張に異常が生じることがあります。これにより、アーチが柔軟性を失って高くなりすぎることがあります。
- 足首の繰り返しの怪我: 過去に足首の捻挫を何度も経験し、関節の安定性が損なわれている場合、歩行時にアーチの構造が不安定になり崩れやすくなることがあります。
これらの原因を正確に理解し、症状の進行を食い止めるための効果的な治療を行うことが大切です。
診断
足部アーチ障害の診断には、足の形だけでなく、体重を支えているときの骨格構造(機能的な側面)の評価が不可欠です。当院では、痛みや変形の原因を客観的に見極めるための専門的な検査を行います。
- 詳細な問診と視診: 痛みが発生した経緯、悪化する動作、生活習慣などを詳細に聞き取ります。立って体重をかけた状態(荷重時)で、足裏の形状、踵の傾き、歩き方などを専門的に観察し、機能不全の状態を把握します。
- 荷重時X線(レントゲン)検査: 足に体重がかかった状態でX線撮影を行い、骨格の配列の乱れや、アーチの低下度合い、変形の重症度を数値で正確に評価します。この客観的な情報が、治療方針を決定するための根拠となります。
- 触診と機能評価: 痛みの原因となっている腱や関節の状態、特に後脛骨筋腱に炎症や圧痛がないかを細かく確認します。足の関節の柔軟性や、アーチを自力で支えるための筋肉の力を評価し、具体的な機能改善の目標を設定します。
- 合併症の確認: 足部アーチ障害は、外反母趾や足底腱膜炎などの他の足の疾患を合併している可能性が高いため、関連疾患の有無も確認し、全体的な治療の優先順位をつけます。
これらの多角的な検査により、患者様ごとの足の変形の原因と進行度を明確にし、最も効果的な機能改善につながる治療法をご提案します。
治療
足部アーチ障害の治療は、痛みの緩和と、崩れたアーチの機能を回復・維持させることを目的とした保存療法が中心です。機能改善のためには、専門スタッフの指導のもと、装具の使用と運動療法を組み合わせた総合的なアプローチが欠かせません。
当院では、患者様一人ひとりの足の状態やライフスタイルに合わせた治療法を組み合わせて行います。
- 装具(インソール)療法: 崩れたアーチを物理的に下から支え、足裏全体の圧力分布を理想的な状態に近づけるカスタムメイドの足底板(インソール)を作製します。これにより、痛みや炎症の原因となる特定の部位への過度なストレスを軽減します。
- 運動療法とリハビリテーション: 足の指や足裏の筋肉(内在筋)を強化するための運動指導を行います。「タオルギャザー」などの訓練はアーチの安定性を高めるのに有効で、専門家の指導のもと正しい足首の位置でトレーニングを行います。
- ストレッチと関節の柔軟性改善: 足首やふくらはぎの硬くなった筋肉をストレッチし、関節の動く範囲を改善することで、足にかかる緊張を和らげます。これにより、スムーズで衝撃吸収能力の高い歩き方をサポートします。
- 適切な靴の選択指導: 治療効果を維持し、再発を防ぐために、クッション性、安定性、アーチサポート機能を考慮した正しい靴の選び方と履き方を具体的に指導します。靴は治療効果を左右する重要な要素です。
- 薬物療法(対症療法): 炎症や痛みが特に強い急性期には、消炎鎮痛薬(内服薬や外用薬)を用いて一時的に症状を抑えます。これは、その後のリハビリテーションや装具療法を円滑に進められるようサポートするためです。
装具の使用や運動療法は継続することで効果が現れます。当院では専門スタッフが、機能改善と再発予防に向けてサポートいたします。