disease
膝蓋骨骨折
症状
膝蓋骨骨折(しつがいこつこっせつ)は、膝の皿にあたる膝蓋骨にひびが入ったり、完全に折れてしまったりする状態です。この骨折は、強い痛みと膝の機能の制限を引き起こし、日常生活に大きな影響を与えます。急性期には、激しい痛みや腫れのほか、稀ではありますが神経や血管の損傷などの合併症を伴うこともあるため、注意が必要です。
- 激しい膝の痛み: 骨折した直後から、膝の前面に激烈で持続的な痛みを感じます。
- 顕著な腫れや内出血: 骨折により内出血が起こり、膝の関節周囲が顕著かつ進行性に腫れます。
- 膝の伸展機能の消失: 膝蓋骨が折れて分離することで、大腿四頭筋の力が入りにくくなり自力で膝をまっすぐ伸ばすことが困難になります。
- 骨折部の異常な凹みや変形: 骨折した部分に触れると、骨の段差や、骨が離れて凹んでいる状態(可視的な凹凸)を感じる場合があります。
これらの症状が見られる場合は、膝の機能が破綻している可能性や合併症のリスクがあるため、速やかに医療機関を受診することが重要です。
原因
膝蓋骨骨折の主な原因は、膝に直接的または間接的に強い外力がかかることです。骨折のパターンは、外力の種類や強さによってさまざまです。
- 転倒による直接的な打撃: 階段や段差からの転落、滑って転んだ際などに、膝を地面や硬い物に強くぶつけることで骨折します。
- 交通事故: 自動車の運転中や同乗中に、膝をダッシュボードなどに強く打ち付けることで骨折が生じることがあります。
- スポーツ外傷: サッカーやラグビーなどのコンタクトスポーツ中に、膝に強い衝撃を受けることがあります。
- 急激で強い筋肉の収縮: 転びそうになった時など、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が膝蓋骨を介して非常に強く収縮し、その引っ張る力で骨が折れる場合があります(間接的な損傷)。
これらの外力により膝蓋骨が骨折すると、膝の機能に重大な障害を残す可能性があるため、注意が必要です。
診断
膝蓋骨骨折の診断は、ケガをした際の状況や痛みの状態を詳しくお聞きする問診と、身体の診察、そして画像検査を組み合わせて行われます。
- 診察(身体所見の確認): 膝の腫れや骨折部を押したときの痛みの有無を確認します。特に、最も重要な臨床的な目安として、患者さんが自力で膝を完全に伸ばせるかどうか(膝伸展機能)を調べます。伸展機能が失われている場合、骨折により膝の伸展機構が破綻している可能性が高いと判断されます。
- X線(レントゲン)検査: X線検査は、骨折の有無、骨折の場所、タイプ(横骨折、粉砕骨折など)、そして骨片のずれ(転位)の程度を正確に把握するために最も重要な検査です。治療方針を決めるために、このX線検査で骨折片の分離量や関節面の段差を厳密に計測します。
- CT検査: X線検査では分かりにくい、骨折の細かい状態や関節面のズレ(段差)をより立体的に詳しく確認するために行うことがあります。手術が必要な場合の、より詳細な方法を決めるのに役立ちます。
- MRI検査: 骨折に付随する靭帯や半月板、関節軟骨といった周辺のやわらかい組織の損傷の程度を詳しく評価するために行われることがあります。特に、他の骨折や靭帯損傷を併発している可能性が高い高エネルギー外傷の場合、MRIによって損傷を事前に特定することは、長期的な膝関節の安定性を評価する上で不可欠です。
これらの検査結果に基づき、骨折の安定性と重症度を評価し、適切な治療方法を決定します。
治療
膝蓋骨骨折の治療は、骨片のズレ(転位)の程度や、膝を伸ばす機能が保たれているかどうかによって、手術をしない方法(保存療法)と手術を行う方法(手術療法)が選ばれます。
治療の選択において最も重要なのは、骨折片の分離が2〜3mm未満、かつ関節面の段差が2mm未満であるかという厳格な基準です。この基準を超えてズレている場合、将来的に外傷後の変形性膝関節症(OA)になるリスクが著しく高まるため、手術が必要となります。
- 保存療法(手術をしない方法): 骨折していても骨片のズレが少ない場合や、膝を伸ばす機能が保たれている安定した骨折に対して行われます。膝を動かすことで骨折片がさらに引き裂かれることを防ぐため、膝を伸ばした状態でギプスや装具で3〜5週間程度固定し、骨がつくのを待ちます。
- 手術療法(観血的整復固定術): 骨折により骨片が大きくズレてしまった場合や、膝を伸ばす機能が完全に失われている場合に行われます。手術では、ズレた骨片を元の位置に正確に戻し(整復)、ワイヤーやスクリュー、プレートなどの金属でしっかりと固定します。
- リハビリテーション: ギプスや装具による固定期間が終了した後、または手術直後から、固まった膝の関節の動きを良くし(可動域訓練)、弱くなった太ももの筋肉(大腿四頭筋)を回復させるための訓練を集中的に進めます。特に、骨折部の安定性が確認されたら、膝関節の拘縮(関節が固まること)を防ぐため、早期に膝の曲げ伸ばし練習を開始することが重要となります。
膝蓋骨骨折は、治療後のリハビリが非常に重要であり、適切な指導のもとで継続的に取り組むことが、元の生活に戻り、長期的な機能回復を目指すための鍵となります。