症例 4 TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷 |
1.TFCCとは |
手関節部(手首)の小指側(尺骨と手根骨の間)に存在する三角線維軟骨と呼ばれる組織、もしくはその周囲靱帯部における損傷です。 |
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*TFCC損傷を日本語で表すと、「三角線維軟骨複合体損傷」といいます。
TFCCを構成する組織は、
(1) disc proper = 関節円板
(2) triangular ligament = 三角靭帯
(3) ulnotriquetral ligament = 尺骨三角骨靭帯
(4) ulnolunate ligament = 尺骨月状骨靭帯
(5) volar radioulnar ligament = 掌側橈骨尺骨靭帯
(6) dorsal radioulnar ligament = 背側橈骨尺骨靭帯
(7) ulnar carpal collateral ligament = 尺側手根側副靭帯 |
2. 損傷の原因 |
手首の捻挫や使い過ぎなどにより、この部分に負担がかかり損傷を受けるほか、加齢による変化が影響して痛みが起こることもあります。
☆アメフト・ラグビー等のコンタクトスポーツや、テニスや卓球・バドミントンのようなラケットスポーツなどでも起きやすいと言われています。 |
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また、遺伝的に尺骨(小指側の腕の骨)が橈骨(親指側の腕の骨)より長い方がいます。
そのような方に起きやすいとも言われています。 |
3. TFCC損傷の症状 |
・腱鞘炎のような慢性的な手首の痛み
・ドアノブを回す様な動作での手首の痛みや引っ掛かり感
・手首に力が入りにくい(脱力感) |
4. TFCC損傷の分類 |
TFCC損傷にも幾つかのパターンがあり、以下のPalmer分類が有名です。
( Palmer分類 )
@外傷による損傷
TA:中央部の穿孔
TB:尺骨付着部の剥離
TC:遠位側付着部の剥離
TD:橈骨付着部の剥離
A変性による損傷
UA:TFC断裂
UB:TFC断裂に、月状骨や尺骨の軟骨軟化巣を伴うもの。
UC:TFC穿孔に、月状骨や尺骨の軟骨軟化巣を伴うもの。
UD:TFC穿孔に、月状骨や尺骨の軟骨軟化巣、月状三角骨靭帯穿孔を伴うもの。
UE:TFC穿孔に、月状骨や尺骨の軟骨軟化巣、月状三角骨靭帯穿孔、尺骨手根関節症を伴うもの。 |
5. TFCCのMRI画像 |
TFCCは軟骨と靭帯から構成される為、レントゲンには写りません。 |
左の写真で赤く○をつけた部分にTFCCがあります。
しかし、レントゲンでは何もないように見えます。
そのため、TFCCの損傷を把握するためには軟骨の観察ができるMRIにて検査を行うのが最も適しています。 |
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TFCCは上記の様に、線維軟骨と靭帯から構成されていますので、PD-FS冠状断像では通常低信号(黒く)で描出されます。しかし、損傷が起きるとそこに出血や浮腫がおこるため、信号が上昇します(白っぽくなる)。この症例でも、尺骨と手根骨の間にある三角線維軟骨と尺骨茎状突起の間に高信号(白い部分)がみられ、損傷している事がわかります。
T2*では三角線維軟骨や靭帯の信号変化にはより敏感です。しかし、組織の損傷に伴って起こった出血や浮腫と脂肪組織、筋肉とのコントラストが低く、出血や浮腫がどの程度広がっているかを見るにはあまり適していません。この様に、MRIの画像にはそれぞれ一長一短がありますが、これらを組み合わせて撮像する事によって、病変をより正確に評価する事が出来ます。
☆ その他、詳しい症状や治療方法につきましては、当法人のホームページの『整形外科基礎知識』のページをご覧ください。 |
2015/6/8 更新 |