disease

尺骨突き上げ症候群

症状

尺骨突き上げ症候群は、手首の小指側(尺側)に慢性的、あるいは特定の動作時に強い痛みを引き起こす疾患です。特に、ドアノブを回す、雑巾を絞るなど、手首をひねる動作(回内・回外)を行った際に症状が悪化しやすいのが特徴です。この痛みは、手首を構成する骨の長さのバランスが崩れ、尺骨という骨が他の骨や軟骨に衝突することで生じます。この疾患は、日常生活やスポーツ活動に支障をきたすだけでなく、痛みを我慢し続けることで、関節内部の軟骨やクッション材がさらにすり減り、将来的な手首の変形につながる可能性があります。

尺骨突き上げ症候群でよく見られる具体的な症状には、以下のようなものがあります。

  • 手首の小指側の痛み:ドアノブを回す、鍵を開ける、雑巾を絞るなど、手首を回したりひねったりする動作の際に、手首の奥深くに強い痛みが走ります。
  • 手首の押したときの痛み(圧痛):手首の小指側の出っ張った骨(尺骨頭)周辺や、その少し下を圧迫すると、他の部分よりも強い痛みを感じます。
  • 腫れと炎症:手首を安定させる腱(尺側手根伸筋腱鞘)に炎症が起こり、その部分に腫れや熱感を伴うことがあります。
  • 不安定感やクリック音:手首の関節内部にあるクッション材(三角線維軟骨複合体:TFCC)の損傷が進行すると、手首の関節が不安定に感じられたり、動かすときにカクカクとした音(クリック音)が生じることがあります。

これらの症状は、手首の内部にある骨や軟骨がすり減り、関節に無理な力がかかり続けているサインかもしれません。痛みを我慢せず、専門医にご相談ください。

原因

この疾患の主な原因は、手首の「土台」を構成する二本の骨、橈骨(親指側の骨)と尺骨(小指側の骨)の長さのバランスが崩れていること、そしてその不均衡な状態に繰り返し負荷がかかることです。この骨の長さのズレが、手首を動かすたびに尺骨頭を手根骨(月状骨や三角骨)に衝突させ、関節内部を慢性的に傷つけます。痛みの根源が骨の構造的な不均衡にあるため、構造的な衝突が繰り返されると、関節の軟骨が磨耗し、骨内に小さな袋状の変性(骨内嚢腫)が形成されることもあります。

尺骨突き上げ症候群を引き起こす具体的な原因には、以下の要因が挙げられます。

  • 生まれつきの骨の長さの不均衡(一次性):橈骨(親指側の骨)に対して、尺骨(小指側の骨)が相対的に長くなっている状態が生まれつき存在する場合があり、これが突き上げを引き起こす主な原因となります。
  • 外傷後の骨の変形(二次性):過去に手首の骨折(橈骨遠位端骨折など)を負い、その治癒の過程で橈骨が短く変形してしまった結果、相対的に尺骨が突き上げている状態になってしまうことがあります。
  • 繰り返しの過負荷や使いすぎ:仕事や生活上で手関節を小指側へ動かすことが多い人や、野球やテニスなど手首を酷使するスポーツをしている人に多く発生しやすいとされています。骨の長さの不均衡がある人はもちろん、不均衡がない人でも、この繰り返し負荷が関節内の軟骨やクッションに強い負荷をかけ、損傷を引き起こします。

尺骨突き上げ症候群は、単なる一時的な使いすぎによる炎症ではなく、根本に構造的な問題が潜んでいることが多いため、原因を正確に特定することが重要です。

診断

尺骨突き上げ症候群の診断では、患者様から痛みの状態や生活習慣を詳しく伺った上で、手首の骨の構造的な問題と、関節内の軟部組織(軟骨やクッション材)の状態を正確に評価するための専門的な検査を行います。痛みの原因が構造的な不均衡によるものか、それとも外傷や使いすぎによるものかを判別し、適切な治療方針を立てるために不可欠なプロセスです。

診断プロセスは、主に以下のステップで行われます。

  • 問診と触診:いつ、どのような動作で痛みが出始めたかなど、痛みの出方やきっかけを確認します。その後、手首の特定の部位(尺骨頭周辺)に強い圧痛がないか、また手首をひねる動作で痛みが誘発されるかを確認する徒手検査を行います。
  • X線(レントゲン)検査:手首の正面像を撮影し、橈骨と尺骨の長さの比率を測定します。この検査により、尺骨が橈骨よりも相対的に長い状態にあるかどうかを客観的に評価できます。側面像では、尺骨頭が後方にずれている状態(背側亜脱臼)を確認できる場合もあります。
  • MRI検査:X線では写らない関節内のクッション材(TFCC)や、手根骨の軟骨表面の状態を詳細に確認します。突き上げによって軟骨が磨耗している様子や、骨内部の変性(骨内嚢腫)の程度を詳しく把握するために有用です。

当院では、これらの専門的な検査を組み合わせることで、痛みがどこから来ているのか、そして構造的な問題がどの程度進行しているのかを正確に把握し、患者様にとって最適な治療方針を決定します。

治療

尺骨突き上げ症候群の治療は、痛みの程度や症状の原因に応じて段階的に進められます。初期段階では、まず手首への負担を減らす「保存療法」を第一に考えます。保存療法で数ヶ月経過しても症状の改善が見られない、または骨の構造的な不均衡が原因で痛みが持続していると判断された場合、根本的な原因である骨の長さを調整する「手術的治療」を検討します。保存療法は、炎症を抑え、局所の安静を保つことを目的とします。多くの場合、適切な安静を保つことで症状は軽減に向かいます。

尺骨突き上げ症候群の主な治療方法には、以下のものが含まれます。

  • 安静と固定(装具療法):痛みが強い時期には、手首を使いすぎないよう安静を保つことが重要です。外傷による損傷の場合には3~4週間の外固定を行い、症状の強さによって固定の期間は異なってきます。慢性的な使いすぎによるものには、付け外しが簡単な装具を用いることもあります。
  • 薬物療法:炎症や痛みを抑える飲み薬(消炎鎮痛剤)を使用したり、炎症が特に強い部位に対して注射を行ったりすることで、患者様のつらい症状を緩和し、リハビリテーションが行いやすい状態を目指します。
  • リハビリテーションと運動指導:炎症が治まった後、手首の機能回復を目指し、段階的に温熱療法や運動療法を行います。特に、手首に過度な負担をかけない動作や、スポーツ・作業時の正しいフォームを指導し、再発を防ぐための習慣づくりをサポートします。
  • 手術的治療(尺骨短縮術など):数ヶ月間の保存療法でも痛みが改善せず、日常生活に支障をきたす場合、構造的な突き上げを根本的に解消するため、尺骨の一部を正確に切除して短くする手術(尺骨短縮術)を検討します。これにより、関節への過剰な圧迫を取り除き、軟骨のさらなる損傷を防ぐことを目的とします。

当院では、患者様の痛みの程度、生活環境、そして骨の構造的な状態を総合的に考慮し、最も適した治療法をご提案します。

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