disease

キーンベック病

症状

キーンベック病(月状骨軟化症、または月状骨無腐性壊死)は、手首の真ん中にある8つの小さな骨(手根骨)の一つである「月状骨」に血液が届かなくなり、骨が壊死して最終的に潰れてしまう、進行性の病気です。この疾患の初期段階では、単なる手首の使いすぎやねんざ、腱鞘炎と間違われやすく、診断が遅れることが少なくありません。しかし、病気が進行すると月状骨が徐々に変形し、手首全体の関節のバランスが崩れることで、手首の動きや機能に深刻な影響を及ぼし、日常生活に大きな支障をきたすようになります。

  • 手首を動かしたときの痛み:手の甲側、ちょうど手首の真ん中付近に痛みを感じます。特に、重いものを持ったり、手首を反らせる動作(手のひらを下に向けて机を叩くような動作)をしたときに、強い痛みが現れるのが特徴です。
  • 手首の腫れや熱感:病状が進行し、壊死した月状骨の周りで炎症が起きている時期には、手首の関節全体や、患部に局所的な腫れや熱感を感じることがあります。
  • 手首の動きの制限:月状骨が壊死して潰れることで、手首全体の骨の並び(配列)が崩れてしまい、手首を反らせる動き(背屈)や、曲げる動き(掌屈)の範囲が徐々に狭くなります。
  • 握力の低下と不安定感:手首の骨の配列異常が進むと、関節の安定性が失われるため、物をしっかりと握る力が弱くなったり、重いものを持ち続けられなくなったりするなど、手全体の機能的な低下につながります。

これらの症状が長期間にわたって続く場合、特に手首の痛みやなかなか治まらない場合は、キーンベック病の可能性を疑い、専門的な診断を受けることが早期回復のための鍵となります。

原因

キーンベック病がなぜ発症するのかという直接的な原因は、まだ完全には特定されていません。しかし、手首にある月状骨に血液を送る血管の構造が非常に細かく、栄養が届きにくいという特徴があるため、何らかの理由で血流が途絶えてしまうことが、骨が壊死する根本的なメカニズムであると考えられています。この血流障害を誘発したり、病気の進行を早めたりする要因として、複数の機械的および構造的な要因が関わっていることが分かっています。

  • 月状骨への血流低下:月状骨に栄養を供給している血液の流れが途絶えることで、骨の細胞が死んでしまい、骨が壊死に至ります。これがこの病気の基本的な病態であり、血流の弱さが根本にあるため、一度壊死が始まると回復が難しいとされています。
  • 前腕の骨の構造的な不一致:前腕にある2本の骨、内側の橈骨(とうこつ)と外側の尺骨(しゃっこつ)の長さが、生まれつき異なっている(尺骨が橈骨よりも長い)方がいます。この構造的な違いがあると、手首を動かした際に月状骨に不均衡な、過剰な圧力がかかりやすくなり、血流障害を招く一因となると考えられています。
  • 手首への繰り返しの負荷:テニスなどの特定のスポーツ活動や、仕事で常に重いものを持つなど、手首に繰り返し強い衝撃や圧力がかかる動作が多い場合、月状骨へのストレスが蓄積します。この慢性的な機械的ストレスが、構造的に弱い月状骨への負担を増大させ、病気の発症を誘発したり進行を早めたりするきっかけとなり得ます。

キーンベック病は、月状骨の血流の弱さという体質的な背景に、骨の構造的な問題や、外部からの繰り返し加わる力が加わることで発症すると言われています。

診断

キーンベック病の診断は、患者様のお話(問診)と診察、そして病気の進行度を正確に把握するための専門的な画像検査を組み合わせて行われます。この病気は進行するにつれて治療方法が大きく変化するため、早期に正確な診断を受けることが重要です。

まず、医師は患者様から、いつから、どのような状況で痛みが出始めたのか、痛みの強さや、日常生活で困っている動作などについて詳しくお伺いします。その後、実際に手首の動きの範囲や、腫れがないか、握力が低下していないかなどを確認する診察を行います。この診察によって、腱鞘炎や手根管症候群といった、他の手首の病気ではないことを確かめていきます。

診断を確定させるためには、画像検査が不可欠です。

  • X線検査(レントゲン):初期に必ず行う検査で、手首の骨の配列や形状を評価します。病気が進行している場合は、月状骨が白っぽく硬くなっている変化や、骨が潰れている状態を確認することができます。
  • MRI検査:キーンベック病の確定診断を行うために最も重要となる検査です。特に、X線検査ではまだ異常が見られない病気の極めて初期段階(I期)であっても、MRI検査を行うことで、月状骨内の血流が低下している状態や、壊死が始まっている範囲を高い精度で詳細に捉えることができます。

当院では、これらの検査を迅速に実施し、患者様に現在の病状を画像とともに視覚的に分かりやすくお伝えすることで、病気の進行度に応じた最適な治療方針を速やかに決定します。

治療

キーンベック病の治療は、診断によって確定された病気の進行度(ステージ)に基づいて選択されます。治療の主な目的は、月状骨にかかる不必要な機械的な圧力を減らし、可能であれば骨の血流を改善させることにあります。初期段階(I期、II期)であれば、手術をしない「保存的治療」が中心となりますが、月状骨の変形や潰れが進行した段階(III期以降)では、手首の痛みを取り、機能の維持・回復を目指すための「外科的治療(手術)」が必要となることが多くなります。

  • 保存的治療(安静・固定):病気の比較的早期の段階で選択されます。手首に負担をかけないよう、ギプスや装具などを使って患部をしっかりと固定し、安静を保つことで症状の改善を目指します。月状骨への負担を減らすことが、病気の進行を抑える上で重要です。
  • 橈骨骨切り術:月状骨への過剰な圧迫を物理的に減らすことを目的とした手術です。前腕の橈骨という骨を一部短く切って、骨折と同様にプレートで固定することで、月状骨にかかる負荷を分散させます。これにより、痛みの軽減と病気の進行の抑制を図ります。
  • 腱球移植術:壊死や変形が非常に強く進んでしまった月状骨を摘出する際に検討される手術です。月状骨を取り除いた後、患者様ご自身の腱の一部(手掌腱など)を利用して「腱球」という組織を作り、摘出したスペースに挿入します。これは、手首の安定性を保ち、周囲の骨が変形するのを防ぐために行われます。
  • その他の外科的治療:病状や患者様の年齢、活動性に応じて、月状骨の血流を改善させるために骨髄血を移植する方法、または人工物を用いて月状骨を置き換える方法など、手首の機能を最大限に維持するための多様な治療方法が検討されます。

当院では、患者様一人ひとりの病状とライフスタイルを尊重し、手首の痛みを取り除き、快適な日常生活を取り戻すための最適な治療方法を一緒に考え、ご提供します。

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