disease

肩甲上神経絞扼性障害

症状

肩甲上神経絞扼性障害(けんこうじょうしんけいこうやくせいしょうがい)は、肩の奥深くで生じる痛みと、腕を動かす筋肉の機能低下を引き起こす疾患です。この症状は、一般的な五十肩や腱板の炎症と似ているため見過ごされやすいですが、神経が関わっている点が異なります。

  • 肩の裏側の深い痛み:痛みを感じる場所が、肩の表面ではなく、肩の後ろ側、特に肩甲骨の周りや奥深くに限定される傾向があります。患者様は、この場所が「ズキズキする」「鈍く痛む」と表現することが多いです。
  • 夜間に強くなる痛み:寝返りを打ったり、痛みがある肩を下にして横向きに寝たりした際に痛みがズキズキと増し、夜中に目が覚める原因となり、睡眠不足につながることもあります。
  • 特定の動作での悪化 腕を横から上にあげたり(外転)、背中に回したり(結帯動作)する際に、神経が引っ張られることで痛みが強くなります。
  • 筋力低下と筋萎縮 痛みが長期間続くと、肩甲上神経が支配している筋肉、特に腕を外に回す力や上げる力を担う筋肉(棘上筋・棘下筋)の働きが悪くなり、筋力が低下したり、ひどい場合には筋肉が痩せてくる(筋萎縮)ことがあります。

「肩の後ろの痛みが長引く」「肩甲骨の周りがズキズキする」といったサインが見られた場合は、単なる肩こりや関節の炎症ではなく、神経が関わる病気の可能性があるため注意が必要です。

原因

肩甲上神経絞扼性障害は、肩甲上神経がその走行経路にある特定の場所で、骨や靭帯、または他の組織によって圧迫されたり、繰り返し引っ張られたりすることで発生します。

  • 解剖学的な狭い通路(締め付けが起こる場所): 肩甲上神経は、肩甲骨のくぼみにある靭帯の下を通過する際や、肩の奥で筋肉へ向かう際に、骨と靭帯に囲まれた狭いトンネルを通るため、構造上、圧迫を受けやすい脆弱性を持っています。
  • 関節由来のガングリオン(嚢胞):関節の損傷、特に肩の腱や軟骨の損傷に伴って発生した水の袋(ガングリオン)が、神経の近くで膨らみ、外側から神経を強く押しつけ、締め付けが起こることがあります。
  • 動的な牽引ストレス:野球の投球、水泳、テニスなど、腕を頭上に繰り返し挙げる動作が多いスポーツを行うことで、肩の動きに合わせて神経が強い力で引っ張られ、微細な損傷や炎症を引き起こし、神経の圧迫症状を悪化させることがあります。

これらの原因により神経が傷つくと、痛みを感じるだけでなく、神経が支配する筋肉への指令がうまく伝わらなくなり、肩関節の機能低下につながります。

診断

正確な診断は、症状の改善と機能回復に向けた適切な治療を進めるための大切な最初のステップです。当院では、肩甲上神経絞扼性障害を一般的な肩の病気(五十肩、腱板炎など)と見分けるために、複数の方法で精密な検査を行います。

  • 問診と身体のチェック 痛みの場所や、特に夜間に痛むかどうかを詳しくお伺いするとともに、腕を外に回す力や、上げる力(筋力)が低下していないかを確認する専門的なテストを行います。これらのテストで筋力低下が確認されると、神経の圧迫の可能性が強く疑われます。
  • 画像検査の活用
    • 超音波(エコー)検査: エコーは、リアルタイムで神経が腫れていないか、あるいは神経を圧迫している原因(ガングリオンなど)がないかを非侵襲的に確認できます。また、後述する注射治療の際にも、神経や血管の位置を正確に確認するために重要な役割を果たします。
    • MRI検査: 神経を圧迫しているガングリオンや、神経が支配する筋肉(棘上筋・棘下筋)がどの程度痩せているか(筋萎縮)を評価するために非常に有用です。
  • 診断的な神経ブロック注射: 痛みの原因となっている神経を特定するための確実な診断方法の一つです。超音波ガイド下で、圧迫が疑われる肩甲上神経の周囲に局所麻酔薬を正確に注入します。これにより、患者様の痛みが著明に軽減すれば、その神経が痛みの真の原因であると特定できます。

これらの診断プロセスを通じて、患者様の痛みが単なる関節の炎症によるものなのか、それとも神経の通り道の問題なのかを明確にし、効果的な治療法を決めることができます。

治療

肩甲上神経絞扼性障害の治療は、まず痛みを取り除き、その上で神経が受けたダメージを修復し、低下した肩の機能を回復させることを目標に段階的に進めます。患者様の症状の重さや、絞扼の原因、病気の進み具合に合わせて、以下の治療法を組み合わせて行います。

  • 神経ブロック注射:超音波(エコー)で神経や血管の位置を正確に確認しながら、肩甲上神経の周りに局所麻酔薬を注入し、痛みの信号の伝達を一時的に遮断します。これにより、長引く強い痛みや夜間痛を迅速に緩和することが期待できます。炎症が強い場合には、必要に応じて炎症を抑える薬(ステロイド液)を少量添加することもあります。治療は通常、 1~2週間に1回のペースで、合計 2回から7回ほどを目安に進めます。
  • 理学療法(リハビリテーション):痛みが落ち着いた段階で、専門スタッフが肩甲骨の動かし方や姿勢のバランスをチェックし、神経の圧迫によって弱くなった筋肉を正しく使えるようにするための運動指導を行います。これは、痛みの再発を防ぎ、肩の機能を根本から回復させるために非常に重要な治療です。

これらの治療を組み合わせて、神経の締め付けによる痛みを取り除き、肩を動かす力が再びスムーズに戻るように支援します。痛みが慢性化してしまう前に、できるだけ早く治療を開始することが大切です。

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