鎖骨骨折
症状
鎖骨骨折は、胸と肩を繋ぐS字状の鎖骨が折れる怪我です。体表から触れやすい場所にあるため、外からの衝撃を受けやすく、比較的頻繁に発生します。骨折が起こると、患部に激しい痛みが生じ、多くの場合、肩から腕にかけての動きが困難になります。
主な症状には、以下のようなものがあります。
- 激しい痛みと腫れ:骨折した部位に強い痛みがあり、触ると痛みが強くなる(圧痛)ほか、患部が腫れて熱を持つことがあります。
- 動かしにくさ:腕を上げようとしたり、動かそうとしたりすると、骨折部が不安定になって痛みを伴うため、自力で腕を動かすことが難しくなります。
- 手のしびれや冷感:鎖骨のすぐ下には、腕や手につながる重要な神経や血管が通っています。骨折の転位(ズレ)が大きい場合、これらが圧迫されたり傷ついたりすることで、手や腕にしびれを感じたり、血流が悪くなり冷たく感じたりすることがあります。
- 変形や出っ張り:骨折部のズレが大きい場合、皮膚の下で骨の変形や異常な出っ張りが目で確認できることがあります。
単なる痛みだけでなく、手のしびれや冷感といった症状がある場合は、神経や血管が影響を受けている可能性があるため、後遺症を防ぐためにも早期の専門的な診断が極めて重要となります。
原因
鎖骨骨折の主な原因は、スポーツや日常生活の中での転倒、交通事故などによる外傷です。鎖骨は外力を受けやすい構造をしているため、比較的軽い衝撃でも折れることがあります。
鎖骨骨折を引き起こす代表的な発生パターンは以下の通りです。
- 転倒して手をつく:転倒した際に、地面に手をついて身を守ろうとした結果、地面からの強い衝撃が手首、肘、肩を伝って鎖骨の一点に集中し、骨折を引き起こします。これは間接的な外力による骨折として最も多く見られます。
- 肩からの直接的な打撲:ラグビーや柔道などのコンタクトスポーツや、自転車・バイクなどの交通事故によって、肩の部分を直接強く打ち付けた衝撃が原因で鎖骨が折れてしまうことがあります。
このように、鎖骨骨折のほとんどは予測できない外力によって突発的に発生しますが、受傷時の状況を正確に把握することが、骨折のパターンや治療方針を決める上で重要な情報となります。
診断
鎖骨骨折の診断は、患者様から受傷の経緯や痛みなどの症状を詳しくお聞きする問診から始まります。次に、患部の視診と触診を行い、骨折が疑われる部位の確認を行います。
診断を確定し、最適な治療方針を決めるために、主に以下の画像検査が用いられます。
- X線(レントゲン)検査:診断の基本となる検査で、骨折の有無、骨折した正確な位置、そして骨のズレ(転位)の程度を確認します。鎖骨の中央部分の骨折は比較的診断が容易ですが、骨折線がわかりにくい場合もあるため、複数の方向から撮影することがあります。
- CTスキャン:骨折部のズレが非常に大きい場合や、骨が細かく砕けている(粉砕骨折)など、複雑な形状をしている場合に用いられます。この検査により、骨折部の状態をより立体的かつ詳細に把握し、手術が必要か、また手術を行う場合の具体的な方法を決めるのに役立ちます。
骨折があることだけでなく、その骨折のパターンが将来的に肩の動きの制限や痛みを残す可能性(後遺障害のリスク)が高いかどうかを正確に見極めることが、専門医による診断の重要な役割となります。この初期の正確な判断が、患者様の早期回復と機能改善に直結します。
治療
鎖骨骨折の治療は、骨折した部位や骨片のズレの程度、患者様の年齢、日常生活やスポーツへの復帰へのご希望など、多くの要素を総合的に考慮して、一人ひとりに合った方法が選択されます。主な治療法には、手術を行わない「保存療法」と「手術療法」があります。
- 保存療法(手術をしない治療):骨のズレが少なく、比較的安定している骨折の場合に選択されます。鎖骨バンドや三角巾などの装具を用いて骨折部を安静に固定し、骨が自然にくっつくのを待ちます。骨の癒合を確実にするためには、固定期間中、医師の指示に従い、固定具が緩まないように1日2回ほど締め直すなど、患者様ご自身による適切な自己管理が非常に重要となります。
- 手術療法:骨折部のズレ(短縮)が大きい場合や、骨が皮膚を突き破るリスクがある場合、また、保存療法では骨がつかない状態(偽関節)や、ずれたまま固まることによる機能障害が起こる可能性が高い場合に検討されます。全身麻酔のもとで、専用の金属製のプレートや鋼線などを用いて骨折部を正しい位置でしっかりと固定します。
- リハビリテーション:骨折治療の過程において、保存療法・手術療法にかかわらず必須となるのがリハビリテーションです。長期間の安静や固定によって起こる肩関節の硬化(拘縮)や筋力低下を防ぐため、肩関節の動き(可動域)と筋力を回復させ、受傷前の状態へ戻すことを目指します。
鎖骨骨折の治療は、骨を固定するだけでなく、機能回復のためのリハビリまでが一連の流れとなります。当クリニックでは、患者様の完全な社会復帰に向けて、治療初期から専門スタッフが連携し、治癒と機能回復の両面をサポートします。