有痛性三角骨
症状
有痛性三角骨は、足首の後ろにある小さな骨(三角骨)が、足首を動かしたときに周りの組織とぶつかったり挟まれたりすることで、痛みが生じる病気です。バレエダンサーやサッカー選手など、つま先立ちや足首を伸ばす動作を繰り返すスポーツをしている人に多く見られます。最初はスポーツ中だけの痛みであることがほとんどですが、症状が進むと、日常生活で普通に歩いたり立ったりするだけでも痛みを感じるようになることがあります。
具体的な症状には、以下のようなものがあります。
- 足首の後ろ側の痛みや押したときの痛み:アキレス腱の少し前の、足首の後ろの深い部分に鈍い痛みを感じます。押すと特に痛む場所(圧痛点)があることがあります。
- つま先立ち(底屈)をしたときの強い痛み:バレエのポワント(つま先立ち)やジャンプの踏み込み、着地など、足首を強く伸ばしたときに、三角骨が骨と骨の間に挟まれることで激しい痛みが出ます。
- ジャンプ動作や蹴り出しの動作での痛み:ボールを蹴る、地面を蹴って跳び上がるなど、足首を強く使う動きの際に痛みが悪化します。
- 足の親指を曲げたときの痛み:三角骨のすぐ近くを通っている、足の親指を曲げるための腱(長母趾屈筋腱)にも炎症が及ぶことがあり、親指を動かすだけで痛むことがあります。
- 足首の後ろ側の膨らみや腫れ:炎症がひどくなると、足首の後ろが腫れたり、骨の出っ張りが目立ったりすることがあります。
これらの症状は、無理にスポーツを続けることで悪化しやすいため、足首の後ろに痛みを感じたら、できるだけ早く専門のクリニックにご相談ください。
原因
有痛性三角骨の原因は、足首の後ろ側にある「三角骨」という小さな過剰骨(人によっては生まれつきある余分な骨)の存在と、その骨が周囲の組織にぶつかる「衝突(インピンジメント)」にあります。
この衝突が起こる主な原因は以下の通りです。
- 繰り返しの底屈動作による衝突:バレエやサッカー、野球など、足首を繰り返し強く伸ばす動作(底屈動作)を頻繁に行うことで、三角骨が脛の骨(脛骨)と踵の骨(踵骨)の間に挟み込まれ、周りの組織(関節包、靭帯など)や三角骨自体に炎症を引き起こします。
- 長母趾屈筋腱の使いすぎによる炎症:足の親指を曲げる腱(長母趾屈筋腱)が、三角骨のすぐ横を通っています。足首の激しい動きにより、この腱が過度に引っ張られたり擦れたりすることで、炎症(腱鞘炎)を起こし、痛みの原因となることがあります。
- 生まれつきの骨の形や大きさ:三角骨の大きさや形には個人差があり、もともと三角骨が大きい人や、骨と骨との隙間が狭い人は、スポーツによる足首の動きの負荷によって炎症が起こりやすい傾向があります。
つまり、有痛性三角骨は、生まれつきの骨の特性と、スポーツなどで足首を使いすぎる負荷が合わさることで、足首の後ろに炎症と痛みが発生する状態と言えます。
診断
足首の後ろの痛みが有痛性三角骨によるものかを正確に判断するためには、患者様から詳しく症状をお聞きすることに加え、画像検査が欠かせません。当院では、以下の画像検査を組み合わせて、痛みの原因を特定します。
1. X線検査(レントゲン)による骨の確認
X線検査は、骨の状態を確認するための基本的な検査です。この検査の主な目的は、三角骨の有無、大きさ、形をはっきりと確認することです。また、足首の痛みにつながる可能性のある骨折や、その他の骨の大きな異常が隠れていないかをチェックするためにも行われます。
2. MRI検査による炎症の詳しい評価
X線検査で三角骨の存在がわかっても、それが今感じている痛みの直接の原因であるとは限りません。そこで重要になるのがMRI(磁気共鳴画像)検査です。
MRI検査は、X線では見ることができない骨以外のやわらかい組織(腱や関節包など)の状態を詳しく写し出すことができます。特に、以下の点を確認することで、痛みの原因を特定し、治療方法を決めるのに役立ちます。
- 活動性の炎症の確認:三角骨の周りや内部に、実際に炎症(骨浮腫)が起きているかどうかを詳細に確認します。この「活動性の炎症」が確認できれば、三角骨が痛みの原因であると判断できます。
- 周囲の組織の評価:足の親指を曲げる腱(長母趾屈筋腱)に腱鞘炎が起きていないか、関節包(関節を包む袋)に炎症がないかなど、骨の衝突によって引き起こされた周囲の組織の損傷や炎症の程度を評価します。
当院では、これらの検査結果と患者様の症状を照らし合わせ、「痛みの根本原因」を正確に特定し、患者様に合わせた最適な治療方法をご提案します。
治療
有痛性三角骨の治療は、まず体に負担の少ない保存療法からスタートするのが基本です。痛みを引き起こしている動作をできるだけ避け、炎症をしっかりと抑えることで、多くの場合、症状は改善し、スポーツ活動への復帰が可能になります。
具体的な治療方法を、段階を追ってご紹介します。
- 安静と動作の制限:痛みが強い時期には、つま先立ちや強い蹴り出しなど、痛みを誘発する動作を一時的に避けることが何よりも重要です。必要に応じて、テーピングやサポーターで足首の動きを軽く制限し、三角骨への負担を減らします。
- 薬による治療とリハビリテーション:痛みや炎症を和らげる飲み薬や湿布などの外用薬を使います。リハビリテーションでは、足首にかかる負担を軽くするために、特にふくらはぎの筋肉を柔らかくするストレッチを行います。また、痛みのない範囲で足首周りの筋肉を鍛える運動を行い、関節を安定させ、再発を防ぎます。
- 注射治療(エコーガイド下注射、ハイドロリリース):保存療法だけでは痛みが治まらない場合や、炎症が強い場所がはっきりしている場合には、注射による治療が大変有効です。当院では、超音波(エコー)機器を使って針先をリアルタイムに確認しながら、炎症のある部位へ正確に薬液を注入します。
- ステロイド注射:非常に強い抗炎症作用を持つステロイドを、エコーで確認しながら炎症部位に正確に注射し、痛みの素早く緩和を目指します。
- ハイドロリリース:三角骨の周りで、炎症を起こした腱(特に親指を曲げる腱)などが周りの組織とくっついてしまった状態(癒着)に対して行います。エコーで確認しながら生理食塩水や麻酔薬を注入し、その水圧で組織を物理的に剥がし、腱や神経の滑りを良くすることで、痛みを劇的に改善させます。
- 手術による治療:数ヶ月以上にわたって保存療法や注射治療を続けても症状が改善せず、仕事やスポーツへの復帰が難しい場合に検討されます。一般的には、小さなカメラ(関節鏡)を使って、痛みの原因となっている三角骨を体への負担が少ない方法で取り除く手術(鏡視下三角骨切除術)が行われます。
まずは保存療法と、エコーを使った精密な注射治療で痛みをしっかりと抑え、患者様の早期回復とスポーツ復帰をサポートします。