足関節捻挫
症状
足関節捻挫は、足首の関節を支えている靭帯が、許容範囲を超えて引き伸ばされたり、一部または全部が断裂したりする怪我です。特に、足首を内側にひねってしまう「内反捻挫」が原因となるケースが多く、足首の外側にある靭帯(前距腓靭帯など)が損傷します。軽い捻挫だと思って放置すると、靭帯が緩んだまま治り、再発を繰り返す「捻挫の癖」につながるため、正確な診断と適切な初期対応が極めて重要です。
具体的な症状は、損傷の程度によって異なります。
- 痛みと腫れ:怪我をした直後から、特に外くるぶしの周辺に強い痛みが生じ、患部が腫れて熱を持ちます。損傷が重い場合は、血管が破れて皮下出血(内出血)が起こり、皮膚が青紫色に変色することもあります。
- 局所的な圧痛:損傷した靭帯の上を指で押すと、他の部分と比べてはるかに強い痛み(圧痛)を感じます。この圧痛の位置が、どの靭帯が傷ついているかを特定する手がかりになります。
- 歩行の困難さ:軽度な損傷であれば自分で立って歩けることが多いですが、中程度の損傷では足をひきずってしまい、靭帯が完全に断裂している重度の場合は、痛みのため体重をかけることができず、自分で歩くことが非常に困難になります。
- 関節のぐらつき(不安定感):靭帯が完全に切れてしまった場合、関節が本来あるべき位置からずれるような、ぐらつく感覚が生じることがあります。これは、関節の安定性が失われていることを示しており、再発の原因となります。
痛みが引いても靭帯は完全に治っていない場合があり、中途半端な状態で活動を再開すると、足首が緩んだ状態(慢性足関節不安定症)になってしまいます。この不安定性を放置すると、将来的に足首の関節が変形してしまう(変形性足関節症)リスクが高まるため、初期の段階でしっかりと治しきることが大切です。
原因
足関節捻挫は、足首が関節の動きの限界を超えて強くひねられることで、周囲の靭帯に過度な力が加わる外傷が主な原因です。ほとんどのケースが、足の裏が内側に向く「内反」という動きによって、外側の靭帯が強く引き伸ばされ、損傷を負うことで起こります。
具体的な発生要因は以下の通りです。
- スポーツ中の外傷:急な方向転換やジャンプの着地など、運動中に足首に強いひねりや衝撃が加わることで、靭帯に大きな負担がかかります。
- 日常生活での不意な事故:段差を踏み外したり、でこぼこの道を歩いたりした際など、スポーツ以外でも日常のささいな動きが原因で発生することがあります。
- 過去の不完全な治癒による不安定性:以前の捻挫で靭帯が伸びたまま治りきらなかったり、足首を支える筋肉(腓骨筋群)が弱かったりすると、足首が不安定になり再発しやすくなります。
- バランス感覚の低下:靭帯が損傷すると、足首の傾きを脳に伝えるセンサーの働きが鈍くなり、バランスを崩した時に素早く立て直せず、捻挫を繰り返す原因となります。
捻挫を繰り返すのは、単に「癖」になっているわけではなく、靭帯の緩みやバランスを保つための感覚機能の低下といった、明確な身体的原因が存在しています。そのため、再発を防ぐには、これらの原因を解消するための適切な治療とリハビリが不可欠です。
診断
足関節捻挫の診断では、「単なる捻挫」で済ませるのではなく、靭帯がどの程度損傷しているかという重症度(グレードI〜III)の判定や、骨折、さらには骨挫傷や軟骨損傷といった他の怪我を伴っていないかを正確に見極めることが非常に重要です。初期の診断が不十分だと、重度の靭帯損傷が見過ごされ、足首の慢性的な不安定性や、将来的な変形性関節症の原因となってしまうからです。
当院グループでは、問診や触診に加え、以下のような画像検査を迅速に組み合わせて行い、最も適した治療法を選ぶための詳細な情報を得ます。
- X線検査(レントゲン):捻挫と症状が似ている骨折や、靭帯が骨の一部を剥がしてしまう剥離骨折の有無を確認するために実施します。靭帯の損傷が重度と疑われる場合は、足首にストレスをかけて撮影し、関節の不自然な緩みがないかを評価することもあります。
- 超音波(エコー)検査:体表に近い靭帯の損傷状態をリアルタイムで観察でき、靭帯の断裂の程度や内出血、周囲の炎症を正確に把握するのに役立ちます。この検査は患者様への負担が少ないため、その場で具体的な損傷の状況を評価できます。
- MRI検査:腫れや痛みが非常に強く、重度の靭帯断裂や、レントゲンでは判断が難しい軟骨や骨自体(骨挫傷)に損傷が及んでいる可能性がある場合に、より詳しい情報を得るために行われます。
これらの検査を組み合わせることで、見逃されがちな重度な損傷を逃さず、患者様の症状や損傷レベルに合わせた最適な治療法を導き出すことができます。
治療
足関節捻挫の治療は、受傷直後の炎症や痛みを抑えることと、損傷した靭帯をしっかりと治癒させ、足首の安定した機能を取り戻すためのリハビリテーションが大きな柱となります。単に痛みが引くのを待つだけでなく、靭帯の緩みを解消し、再発や長期的な関節の変形を防ぐことを目指します。
具体的な治療方法としては、損傷の程度に応じて、以下のような方法が用いられます。
- RICE処置:怪我の直後に行う応急処置の基本で、安静・冷却・圧迫・挙上を行い、痛みや腫れ、炎症を最小限に抑えます。
- 固定療法:靭帯が伸びたまま治るのを防ぐため、損傷の程度に応じ、テーピング、サポーター、あるいはギプスや装具で足首を適切な位置に保ちます。
- リハビリテーション:痛みや腫れが引いた後に、足首の動きを回復させたり、再発を防ぐための筋肉(腓骨筋群など)を強化したりする訓練を行います。また、バランス能力を向上させるための訓練も段階的に実施します。
- PRP(多血小板血漿)治療:患者様ご自身の血液から抽出した成長因子を多く含む成分を患部に注入し、損傷した靭帯などの組織の自然な治癒力を高める治療です。
治療は、痛みや腫れが引いた後も、足首の機能が完全に回復するまで続けることが最も重要です。当院グループでは、初期の適切な対応に加え、徹底したリハビリテーション、そして必要に応じたPRP治療といった先進治療を通じて、患者様が安心して質の高い状態で元の生活やスポーツ活動に戻れるよう、トータルでサポートいたします。