disease
有痛性分裂膝蓋骨
症状
有痛性分裂膝蓋骨(ゆうつうせいぶんれつしつがいこつ)は、膝の皿の骨(膝蓋骨)が生まれつき、二つ以上に分かれている状態(分裂膝蓋骨)のうち、痛みを伴うものです。特にスポーツを活発に行う成長期(思春期)の男の子に多く見られますが、成人になってから痛みが出ることもあります。この痛みは、運動中に膝蓋骨に大きな負担がかかることで起こります。
- 膝の痛み:膝蓋骨の周辺、特に外側の上の方に痛みを感じることが多いです。
- 運動時の痛み:走る、跳ぶ、階段を上り下りするなど、大腿四頭筋を使う動作で痛みが強くなります。
- 圧痛:分裂した骨の境目(接合部)を指で押すと強い痛みを感じます。
- 腫れ・熱感:炎症が強い時期には、膝に軽い腫れや熱っぽさを感じることがあります。
安静にしていれば痛みは治まりますが、運動を再開するとすぐに痛みが戻ってくるため、スポーツ活動に支障をきたすことが特徴です。
原因
分裂膝蓋骨自体は、およそ2〜3%の人に見られる先天的な骨の形の違いであり、これがあるからといって必ずしも痛むわけではありません。しかし、激しい運動などで膝に繰り返し負担がかかることで、骨が分かれている境目に過度なストレスが集中し、炎症や痛みを引き起こします。
- スポーツによる繰り返しの負担:サッカーやバスケットボールなど、太ももの筋肉を強く使うスポーツで、その筋肉が分裂部を繰り返し引っ張り、慢性的なストレスが生じます。
- 外傷や強い衝撃:膝を強く打ったり、転んだりといった直接的な衝撃が、無症状だった分裂部に炎症や損傷を引き起こすきっかけとなることがあります。
- 成長期における骨の未完成:特に思春期の男子は、まだ骨が完成する途中で、激しい運動による強い負荷に分裂部が耐えきれず、不安定になりやすい状態にあります。
この分裂部の組織が、繰り返しの牽引ストレスに耐えられずに慢性的な炎症を起こすことが、有痛性分裂膝蓋骨の根本的な原因です。
診断
有痛性分裂膝蓋骨の診断は、患者様の症状やスポーツ歴を詳しくお聞きする診察と、画像検査の結果を組み合わせて、痛みの原因が分裂部に由来するかを客観的に判断することで行われます。
- 問診と診察:いつから、どのような時に痛みが出るか(特に運動時)を詳しくお聞きし、膝蓋骨の分裂している部分に限定された圧痛(指で押したときの痛み)があるかを確認します。
- X線(レントゲン)検査:膝蓋骨が二つ以上に分かれている状態(分裂膝蓋骨)の有無、場所、および形を明確に確認します。痛みを伴う場合、分裂部の境目が硬くなっている所見が見られることがあります。
- MRI検査:分裂膝蓋骨があっても無症状の人も多いため、MRI検査を行い、分裂した骨片の周囲や骨の内部に炎症(骨の腫れ)が起きているかを調べます。この炎症所見が痛みの場所と一致することで、確定診断となります。
これらの検査を通じて、他の膝の病気による痛みではないことを確認し、痛みの真の原因を正確に特定することが、適切な治療を始めるための重要なステップです。
治療
有痛性分裂膝蓋骨の治療は、まず痛みの原因である慢性的な牽引ストレスを取り除き、炎症を鎮めることが基本です。多くの場合、手術をしない保存的な治療を数ヶ月間続けることで症状は改善に向かいます。
- 安静・スポーツ活動の制限:痛みが強い時期は、運動を完全に休止するか、痛みの出ない範囲に活動を抑え、分裂部に加わる物理的なストレスを徹底的に減らします。
- 薬による治療:炎症や痛みを和らげるために、飲み薬(非ステロイド性消炎鎮痛薬など)や、湿布などの貼り薬を使います。
- リハビリテーション:膝への負担を減らすため、大腿四頭筋の柔軟性を高めるストレッチや、筋力バランスを整える運動を重点的に行い、膝蓋骨の動きを調整します。
- 装具やサポーター:膝蓋骨へのストレスを軽減したり、正しい動きをサポートしたりするために、サポーターやテーピングを使用することがあります。
- 手術による治療:徹底した保存的な治療を続けても痛みが改善しない場合や、日常生活に深刻な支障が出ている場合には、分裂した骨片を取り除く手術などが検討されます。
患者さんの症状や活動レベルに合わせて、適切な治療法を組み合わせて行い、安全な状態でのスポーツ復帰を目指します。