反復性膝蓋骨脱臼
症状
反復性膝蓋骨脱臼は、膝のお皿(膝蓋骨)が一時的に正しい位置から外側にズレることで、痛みや強い不安感が生じる状態です。完全に外れる脱臼ではありませんが、繰り返すことで日常生活やスポーツに支障をきたします。
主な症状は以下の通りです。
- 膝の痛み:膝を曲げ伸ばしする時や、階段の上り下り、スポーツなどで膝に体重がかかる時に、お皿の周りや奥に痛みを感じます。
- 膝の不安定感・外れそうな感覚:「膝がガクッとなる」「お皿が外にズレていく」といった強い不安感や恐怖感を覚えます。これはこの疾患特有の症状です。
- 膝の引っかかり:膝を動かした際に、何かが突っかかるような違和感や、スムーズに動かせない感覚があります。
- 腫れ・熱感:不安定な状態が続いたり、ズレが起こることで膝の関節に炎症が起き、腫れたり熱を持ったりすることがあります。
これらの症状は、特にスポーツをする若い女性や成長期のお子さんに多く見られます。不安を抱えながら生活するのではなく、専門的な検査と適切な対応を始めることが大切です。
原因
反復性膝蓋骨脱臼は、生まれつきの骨の形や、膝を支える筋肉・靭帯のバランスの乱れなど、いくつかの要因が組み合わさって起こります。
具体的な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 膝のお皿の受け皿(溝)の浅さ:大腿骨にある、膝のお皿が収まる溝(滑車溝)が浅いと、お皿が外側に外れやすくなります。
- 膝のお皿自体の形の異常:膝蓋骨の裏側の形がいびつで、溝にうまくはまり込めない場合に不安定になります。
- 靭帯のゆるみや損傷:膝のお皿を内側に安定させる大切な靭帯(内側膝蓋大腿靭帯など)が、怪我などで傷ついたりゆるんだりすることで、外側にズレるのを防げなくなります。
- 骨のズレやねじれ:脛骨の付着部が外側にズレていたり、足全体の骨のねじれ(X脚傾向など)があると、お皿が外側に引っ張られる力が強くなります。
- 太ももの筋肉のバランスの乱れ:膝のお皿を正しい位置に保つ役割を持つ太ももの内側の筋肉(内側広筋斜頭)の働きが弱いと、外側の強い筋肉に負けてお皿が外側にズレやすくなります。
これらの原因は人によって異なります。症状の根本的な原因を正確に把握することが、症状を良くするための第一歩となります。
診断
膝蓋骨亜脱臼症候群の診断では、患者様からの詳しいお話を聞くことから始まり、触診、そして不安定性の程度や骨格の問題を正確に知るための画像検査を行います。
診断を確定し、不安定性の程度や骨格上の問題を正確に把握するために、以下の検査を行います。
- 徒手検査(アプリヘンジョンテストなど):膝のお皿を動かしながら、ズレる感覚や、患者様が感じる「外れそうだ」という恐怖感(不安感)があるかを確認します。この恐怖感は診断において非常に重要です 。
- X線(レントゲン)検査:膝蓋骨の形や、下肢全体の骨の並び(アライメント)に異常がないかを確認します。様々な角度から撮影し、不安定性を評価します。
- CT検査:骨の形態を立体的に詳しく把握し、特に膝蓋骨の不安定性や膝の回旋異常示す「TT-TG距離」という重要な数値を正確に測定します 。この数値は、手術が必要かどうかを判断する大切な目安となります。
- MRI検査:骨だけでなく、靭帯や軟骨などの柔らかい組織の状態を詳しく調べます。特に、膝のお皿を安定させている靭帯(MPFL)がどの程度損傷しているかを確認します。
これらの検査結果から、膝蓋骨不安定症の原因となっている骨格の異常や靭帯の損傷の程度を総合的に判断し、一人ひとりに合った対応を考えていきます。
治療
反復性膝蓋骨脱臼の治療は、症状の程度や原因によって、手術をしない保存的治療から、根本的な原因を改善するための手術まで、幅広く選択されます。特に初めて症状が出た場合や、不安定性が軽度な場合は、まずは保存的治療が中心となります。
主な治療方法は以下の通りです。
- 安静と動作の修正:痛みを悪化させる動作やスポーツを一時的に控え、膝に負担をかけないような日常生活の動作を身につけます。
- 薬による治療:痛みが強い場合や炎症がある場合は、飲み薬や貼り薬(湿布)などを使用し、痛みと炎症を和らげます 。
- 装具やテーピングによるサポート:膝のお皿の動きを支え、外側へのズレを防ぐためのサポーターや装具、テーピングなどを使って膝の安定性を高めます 。
- リハビリテーション:膝のお皿を安定させるための太ももの内側の筋肉(内側広筋斜頭)の筋力強化や 、下肢全体のバランスを整える運動を指導します。特に、股関節の筋肉を鍛えることが、不安定性を抑えるために重要となります 。
- 手術による治療:保存療法で改善しない場合や、脱臼を繰り返し骨の異常が重度である場合は、靭帯を再建する手術(MPFL再建術)や、骨のズレや形を修正する手術(脛骨粗面転移術 、滑車溝形成術 など)を検討します。
当グループでは、患者様のお皿のズレの原因と程度を正確に把握し、上記の中から最適な治療法をご提案し、早期の回復と不安のない生活への復帰をサポートします。