第28回日本臨床スポーツ医学会学術集会「超音波画像診断装置を用いた外側型弾発股の新たな弾発メカニズムの症例報告」発表報告
11月17日、18日に国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された
第28回日本臨床スポーツ医学会学術集会で口述発表を行いました。
演題名は、
「超音波画像診断装置を用いた外側型弾発股の新たな弾発メカニズムの症例報告」でした。
弾発股とは、股関節の動きに伴い腱(筋が骨に付着する部分)が骨の隆起した部分で弾かれる現象です。
主な症状は股関節の前方と側方でのクリック音であり、痛みを伴う場合と伴わない場合があります。
バレエダンサーの90%にこの症状があると言われています。
過去の報告より、側方で発生するクリック音は腸脛靭帯(骨盤の横から膝に付着している靭帯)と
大転子(大腿骨の先端部に近い部分)で発生するとされていますが、
今回、他の箇所で現象が起きていることを超音波評価で描出することができました。
画像より中殿筋・小殿筋周囲の筋膜が厚く、筋が正常に収縮しない状態が生じていることで
この現象が起きているのではないかと仮説を立て、それに基づき治療を行った結果症状が改善しました。
今回の発表では、超音波検査で実際に現象が起きている部分が明確となり、
より適切な介入が症状の改善に繋がったことを報告しました。
今回、この学術集会に参加して感じたことは、
医療従事者だけではなくスポーツ現場のトレーナーやコーチなど様々な専門職が参加していたことでした。
講演は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックや最新医療に関連した内容が
多くありましたが、多職種が集まる学会という特色を活かし医療とスポーツ現場、選手の立場から
外傷予防について考えるシンポジウムもありました。
医療と現場が一体となり外傷予防に取り組む活動は継続した課題だと思いますが、
今回、少年野球の現場において医療従事者が定期健診を行っているとの報告がありました。
個人が健やかにスポーツを継続するためには、それぞれの専門職が交流できる場を
医療現場が提供していくことが外傷予防の第一歩ではないかと感じました。
医療現場だけではなく、患者様と地域の皆様が健やかに趣味やスポーツを楽しめるように
医療従事者としての役割をもう一度見つめ直し、日々の臨床に努めたい思います。