清水勇樹医師「成長期の骨のスポーツ障害」
【成長期の骨のスポーツ障害】
日時:平成28年2月1日(月)13:30~
場所:AR-Ex尾山台整形外科リハビリ室
講師:清水 勇樹 医師
内容:成長期の骨のスポーツ傷害
骨端線部分が炎症を発生 ⇒ 骨端炎
骨端線で亀裂骨折が発生 ⇒ 骨端線離開
骨自体が成人よりも弱い ⇒ 疲労骨折
⇒ 離断性骨軟骨炎
≪骨端炎≫
・オスグッド病
成長期の選手の訴えで膝痛といえば最も多くみられるのがオスグッド病です。
理由① 下肢の長さの成長の70%が大腿骨遠位と脛骨近位の骨端線で伸びる。それに伴い膝周囲の組織の緊張がおきる。
理由② 大腿四頭筋は、体の中で最大の筋肉で、筋の張力大きく負担になる。
理由③ 骨端線が閉鎖して脛骨体部に癒合するのは18歳と骨端線の中で最も遅い。また、発生は年齢よりも成長速度のピークに一致する。
・腸骨骨端炎
スポーツ整形外来では、成長期の腰痛患者の場合、脊骨の疲労骨折である腰椎分離症、若年型ヘルニアをチェックし、同時に骨盤の表面を念入りに押して診察します。
他の病院で腰痛の症状で安静にしても改善がみられない例、整骨院で筋性の疼痛として診断・治療をうけているが、症状の改善が見られないという症例で最も多く挙げられるのが、腰椎分離症ですが、次に腸骨骨端炎が多く挙げられます。
もちろん治療は安静であり、少なくとも4~6週間の完全安静が必要になります。
成長が著しい時期である中学生ではスポーツ復帰が2ヶ月、高校生6週程度かかります。
・坐骨骨端炎
臀部に痛みがある場合、多くの場合①坐骨神経痛、②ハムストリング症候群、③うしろももの筋肉の肉離れ、などが考えられますが、成長期では坐骨骨端炎も考慮にいれておきたい疾患の一つです。
炎症の原因はハムストリングや内転筋という大腿後面の大きなパワーのある筋肉による骨端線へのストレスにより発生します。
治療は徹底した安静ですが、最低3ヶ月かかります。早期に発見していくことが重要です。
≪疲労骨折≫
・脛骨疲労骨折(ランニングタイプorジャンパータイプ)
疲労骨折に対しては、安静以外の治療法はないと思われがちですが、手術をしないといけない骨折もあります。
スポーツ整形外科では、大腿骨頸部疲労骨折、脛骨跳躍型疲労骨折、足ジョーンズ骨折の3つは、安静にして一度治癒しても再発が多いために、スポーツをつづける選手なら手術をします。
≪離断性骨軟骨炎≫
・上腕骨離断性骨軟骨炎(内側型、外側型、正常型)
・足関節距骨離断性骨軟骨炎
・大腿骨離断性骨軟骨炎
※成長期に代表される傷害とスポーツ中止する期間の大まかな目安
<3ヶ月程度>
腰椎分離症、疲労骨折全般
<4~5ヶ月>
野球肘(内側型)
<6ヶ月程度>
特殊な疲労骨折(跳躍、ジョーンズ)
離断性骨軟骨炎
特殊な骨端症(フライバーグ、踵骨シーバー病)
野球肘(外側型)
●成長期の骨端症と向き合う●
・子供と向き合うのではなく、子供と親が同じ視線で傷害と向き合うこと
・担当ドクターの方針に親自身が納得いかなければ、他のドクターの意見を聞くこと。
・決して短期間で治ると言ってくれるドクターがいいドクターでない事を肝に銘じる。
・手術しなくていいと言ってくれるドクターがいいドクターでもない事も肝に銘じる。
・レベルの高い選手ならば、傷害についての知識も増やして、いろんな意見の中で自分がどの意見ですすむか自分で責任をもって決めること。
最後に清水 勇樹 医師から…
後遺症が残らないように、選手を誘導していくことが、ジュニアおよびユース年代で最も重要な使命と考えています。本人の理解とご両親の協力がないとよい結果がえられません。
(文責:神長 涼)